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研究論文
大学発ベンチャー育成とベンチャーキャピタル
∼求められるベンチャーキャピタリストの投資先育成能力∼
桐畑 哲也
閉塞状況が続く我が国経済において、いわゆる大学発ベンチャーの創出を通した
産業再生が喫緊の課題となっている。この大学発ベンチャー創出に当たって欠かせ
ない視点は、パートナー及び支援環境からなる起業家支援システムの充実である。
パートナーとしては、ベンチャーキャピタル(Venture Capital:以下VCと略す)、エ
ンジェル(個人投資家)、会計士、弁護士等、また、支援環境としては、政府や自治
体等による起業家育成のための様々な法制度やインキュベーション施設等をあげる
事ができる。
起業家支援システムのうち、大学発ベンチャー育成に重要な役割を担うと考えら
れるのが、リスクマネーの供給にとどまらず、経営基盤の脆弱な大学発ベンチャー
の経営支援の役割をも担う育成型VCである。米国では、第二次世界大戦直後に初
の組織的VCが設立されたが、その設立目的は、大学や研究機関の技術シーズを事業
化する、現在でいうところの大学発ベンチャーの育成であった。この育成型VCは、
個々のベンチャーキャピタリストの高い投資先育成能力を背景に、新たなテクノロ
ジーをベースとした数多くの大学発ベンチャーを創出し、米国経済へ好影響をもた
らしたとされる。1970年代から起業家支援法制が整備され、VCの実績が豊富な米
国には学ぶ点が多い。
近年、我が国において、大学発ベンチャーの育成に積極的な育成型VCが増加して
いる。しかし、我が国VCの投資先育成能力は発展途上といえる。我が国における
大学発ベンチャー育成及び新産業創出にあたっては、従来の我が国VCにおける組
織主導の投資スタイルとは異なり、個々のベンチャーキャピタリストの投資先育成
活動をベースとする必要がある。その意味で、個々のベンチャーキャピタリストの
投資先育成能力の向上は欠かせない重要な要素である。また、起業家育成環境の整
備を担う政府や自治体においては、育成型VCの充実や個々のベンチャーキャピタ
リストの投資先育成能力向上に向けた支援施策を進めるべきであろう。
はじめに
1. 産業再生と大学発ベンチャー創出
1.1 新産業を創造する大学発ベンチャー
1.2 起業家支援システム
2. 大学発ベンチャー創出とベンチャーキャピタル
2.1 大学発ベンチャー創出における育成型ベンチャーキャピタルの重要性
2.2 リスク分散を超えるベンチャーキャピタルの投資先育成能力
3. 我が国ベンチャーキャピタルの投資先育成能力
3.1 大学発ベンチャーへの資金供給の活発化
3.2 発展途上の投資先育成能力
おわりに
58 研究論文 Research Paper
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要 約
目 次
Research Paper
Fostering University-launched Ventures and Venture Capitals
−Required Value-adding Capabilities of Venture Capitalists−
Tetsuya Kirihata
For the Japanese economy, which has long been stuck in a rut, it is an
immediate mission to revitalize the industry through creation of university-
launched ventures. What is essential to the creation of univer sity-launched
ventures appears to be an enhanced entrepreneurial supporting system
considering of partners and supporting environment. Such partners will include
venture capitals (hereafter abbreviated "VC"), "Angels" (independent investors),
accountants and law yers. Supporting envir onment s will be represented by various
legal system and incubation facilities established by central and government s in
order t o foster entr epreneur s.
Of those entrepreneurial supporting systems, what is considered to play a
majority role in the fostering university-launched ventures seems to be the "value-
adding-type"VC, which will not only provide risk money, but also play t he role of
providing value-adding activities to university-launched ventures, which have
weak managerial bases. In the United States, the first systematic VC was
established immediately after the World War Ⅱ. The purpose of the est ablishment
was to convert technological seeds of universities and research institutes into
businesses, or to foster university-launched ventures as it is called today. T his
value-adding-type of VC is said to have brought positive impacts to the US
economy by creating a larg e number of university-launched ventures based on
new technologies while being backed by high value-adding capabilities of
individual venture capitalists.
As for VCs in Japan, the number of VCs providing value-adding act ivit ies to
university-launched ventures is recently increasing. However, it can be said that
the value-adding capabilities of individual venture capitalists is st ill in a dev eloping
stage.
It will be an essential factor to improve value-adding capabilities of individual
venture capitalists in fostering university-launched ventures. The government
and the local government s who are responsible for prepar ing the environments of
fostering entrepreneurs should take steps to promote value-adding-type VCs and
to upgrade the ability of the venture capitalists.
Introduction
1. Industrial Revitalization and Creation of University-launched Ventures
1.1 University-launched Ventures that Create New Indust ries
1.2 Entrepreneurial Supporting Systems
2. Creation of University-launched Ventures and Venture Capitals
2.1
Importance of the VC Providing Value-adding Activities to University-launched Ventures
2.2 Value-adding Capabilities of Venture Capitals not Limited to Risk Diversification
3. Value-adding Capabilities of Venture Capitals in Japan
3.1 Revitalization of Fund Supplies to University-launched Ventures
3.2 Value-adding Capabilities still in a Development Stag e
Conclusion
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大学発ベンチャー育成とベンチャーキャピタル
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Summary
Contents
はじ めに
新たなテクノロジーを産業化する役割を担う大学発ベンチャーの創出を通した経済活性化、
産業再生が期待されている。大学発ベンチャーとは、大学等の最先端の研究シーズを活用し
て大学等の関係者が起業するベンチャー企業のことで、従来のベンチャー企業に比べて、特
許等をベースとした有望な技術を有すること等から、新産業創出に繋がると期待されている。
政府は、2001年から3年間で、大学発ベンチャーを1000社創出することを目標に掲げた。世
界最高水準の大学の実現等によるイノベーション基盤の確立、リスクマネー供給の円滑化等、
大学発ベンチャーを創出するための環境整備を目指すとしている。
本論文は、大学発ベンチャーを含めた起業家を取り巻く支援システムについて、日米の比
較を行った上で、リスクマネーの供給にとどまらず、経営基盤の脆弱な大学発ベンチャーに
対する経営支援の役割が期待されるベンチャーキャピタル(Venture Capital:以下VCと略
す)について分析する。その上で、我が国のVCの投資先育成能力について考察する。
1. 産業再生と大学発ベンチャー創出
1.1 新産業を創造する大学発ベンチャー
(1)大学発ベンチャーとは
我が国で初めて、全国規模の大学発ベンチャーの実態調査を行った筑波大学先端学際領域
研究センターの『大学等発ベンチャーの現状と課題に関する研究調査』によると、大学発ベ
ンチャーには、以下の4つのタイプがあるとされる。
1.大学の教員や技術系職員、学生等がベンチャー企業の設立者となり、その設立に深く関与
したりした起業(人材移転型)
2.大学等で達成された研究成果、または習得した技術に基づいた起業(特許以外による技術
移転(または研究成果活用)型)
3.大学等または大学等の教員が、所有する特許を基に起業(特許による技術移転)
4.大学等やTLO(技術移転機関)がベンチャー企業の設立に際して出資又は出資の斡旋を
した場合(出資型)
本論文においては、大学発ベンチャーを「大学等の最先端の研究シーズ(特許等を取得し
ているケースが典型的)を活用して、大学等関係者が起業すること、且つ、創業準備段階か
ら成長初期段階に至るまでの成長初期のベンチャー企業」と理解して論を進める。
(2)米国における大学発ベンチャー育成と新産業創出
新産業創出を目指した大学発ベンチャー育成の取り組みについての手本は米国にある。米
国では、大学が地域経済のネットワークの核となり、ベンチャー企業を創出する役割を果た
している。図1は、2000年時点で、大学発ベンチャーの累計数を日米独で比較したものであ
る。米国は、2256と、ドイツの635、日本の128を大きく上回っている。全米の大学の技術
シーズをもとに多くの大学発ベンチャーが生まれ、その中には表1のように、今日世界的な
大企業にまで成長した企業も多い。
60 研究論文 Research Paper
これら新技術をベースとした急成長ベンチャーの創出に伴う新産業創出が、米国経済に大
きな効果をもたらした。例えば、1981年から1990年にかけての、米国のパソコン関連事業の
時価は、ほぼゼロから約1000億ドルまで増大した。また、雇用面でも1980年代、いわゆる重
厚長大産業がリストラの最中にあり、4400万人の雇用が減少した一方で、同時に始まったパ
ソコン産業をはじめとする新産業の創造で、7300万人の新しい雇用が創出された(内海・北
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大学発ベンチャー育成とベンチャーキャピタル
表1 米国における代表的大学発ベンチャーの例
概 要設立年企業名
スタンフォード大学のヒューレット・パッカー
ドが同大学のターマン教授の支援を受けて設立
し、科学計測機器を開発。
1939ヒューレット・パッカード
MIT研究員のケン・オルセン等が設立し、ミニ・
コンピューターを開発。
1957デジタル・イクイップメント
カリフォルニア大学教授ボイヤー等により設立
され、遺伝子組換え技術による医薬品を開発。
1976ジェネンティック
MIT教授シャープとハーバード大学教授ギル
バードにより設立され、遺伝子組換え技術によ
る医薬品を開発。
1980バイオジェン
スタンフォード大学の卒業生がUNIXベースの
ワークステーションを開発。指導教官がコンサ
ルタント。
1982サン・マイクロ・システムズ
スタンフォード大学教授クラークが教え子等6
人と設立し、グラフィック・ワークステーショ
ンを開発。
1984シリコン・グラフィックス
スタンフォード大学の研究員レーマーとボザッ
ク夫婦により設立され、ルーターを開発。
1985シスコ・システムズ
カルフォルニア大学サンディエゴ教授ジェイコ
ブスにより設立され、通信機器を開発(軍事関
係企業からスピンアウト)。
1985クアルコム
マーク・アンダーセン等のイリノイ大学の学生
が開発したインターネットブラウザーの「モザ
イク」ベースに、ジム・クラークの出資により
設立。
1994ネットスケープ
カルフォルニア大学バークレー校助教授ブ
リューワ、コンピュータ科学の博士課程学生
ゴーシェにより設立され、インターネットの
サーチエンジン開発。
1996インクトゥミ
出所:経済産業省編『2002年版通商白書』(2002)
図1 大学発ベンチャー数の日米独比較
出所:経済産業省産業構造審議会新成長政策部会編『中間取りまとめ参考資料集』(2001)
村[2000])。米国の経済活性化、産業再生、雇用拡大を支えたのが、大学発ベンチャー等新
技術をベースとするベンチャー企業であった。
1.2 起業家支援システム
(1)起業家支援システムの日米比較
大学発ベンチャーの最大の強みは、特許等に裏打ちされたシーズと、第一線の研究者、さ
らにそれらを総合した研究開発力である。その一方、弱みは、強みと裏腹に経営のわかる人
材、市場のわかる人材がいないことであろう。近畿経済産業局編[2002]は、我が国の大学
発ベンチャーの現状について、「起業にあたって必要となる様々な経営資源・人材をコーディ
ネイトしてくれる人材や機関、ベンチャーキャピタルも不足している。ヒト・モノ・カネの
うち、大学発ベンチャーについては、資金と経営人材が不足な状況がうかがえる」と指摘し
た上で、大学発ベンチャーの成功要因の最大のポイントとして、パートナーの存在をあげて
いる。
ここでは、まず大学発ベンチャーに限定せず、広く起業家を取り巻く支援システムについ
て、日米の相違を考察する。清成[1996]は、「企業家の支援システムが完結的に形成されて
いるのは、アメリカだけである。こうしたシステムを列挙すると次のとおりである。(1)企
業家予備軍の教育・育成、(2)創業の助成、(3)専門的人材の形成、(4)リスクキャピタ
ルの供給、(5)株式の店頭公開、こうした仕組みが有機的に関連しあっているのである」と
述べ、起業家を育成するためのシステムの重要性を指摘している。
清成[1996]も指摘するように、特に90年代の米国の起業家支援システムは、有機的な連
携が見られた。本論文では、この米国の起業家支援システムを、大胆に「起業家」、「支援環
境」と「パートナー」という三つの要素に分けて考察する。本論文におけるパートナーとは、
「株式やストックオプション等の成功報酬契約をもとに、ビジネスとして起業家を支援する
組織や個人」、また、支援環境とは「上記のパートナーを除き、起業家の活動に影響を与える
あらゆる要因」と一応定義しておく。この定義に従うと、パートナーとしては、ビジネスと
して起業家を支援する会計士、弁護士、VC、エンジェル(個人投資家)、大学・研究機関の
研究者等、また、支援環境としては、政府や自治体等による起業家支援のための様々な法制
度や税制、ビジネス慣行や金融システム、さらには、インキュベーション施設、大学・研究
機関等をあげることができる。パートナーは、図2のように、起業家への支援とその対価と
しての成功報酬という相互依存関係にあり、株式公開等の共通の目標に向けて、起業家と利
害を共有している。VCやエンジェル、会計士等の米国の主要パートナーは、起業家と共通の
利害を有することもあり、彼らの専門分野以外にも起業家のニーズに応じて、例えば独自の
ネットワークを使って、技術、経営、財務のそれぞれに精通した人材を紹介する、あるいは
業界情報を提供する等の精力的な支援を行なっている。
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図3は、米国における急成長ベンチャー企業創出の好循環を、起業家、パートナー、支援
環境の3つの要素で、分かり易く概念図として示したものである。まず、起業家は、当然、
自ら設立したベンチャーを株式公開まで成長させることを目指す。米国では、特に90年代、
数多くの急成長ベンチャーが誕生し、多くの起業家が膨大な創業者利益を獲得した。この起
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大学発ベンチャー育成とベンチャーキャピタル
図2 米国における起業家を取巻くパートナー及び支援環境の概念図
図3 米国における"起業家サイクル"と"パートナーサイクル"の好循環の概念図
業成功者の存在が、社会全体における創業意欲を高め、新たな起業家の輩出を促す。本論文
では、起業活動の活発化→新規株式公開の続出→創業者利益→起業意欲の高まり→起業活動
の活発化と続く一連のサイクルを、"起業家サイクル"と呼ぶことにする。
一方、起業家を支援するパートナーにも、同様にサイクルが見られる。パートナーは、起
業家の株式公開によって、株式やストックオプションの権利等の手段で成功報酬を得る。こ
れがパートナーの増加、支援能力の向上を促し、社会全体としてさらに多くの起業家を支援、
育成することにつながる。本論文では、起業活動の活発化→新規株式公開の続出→支援活動
による報酬→パートナーの増加、支援能力の向上→起業活動の活発化と続く一連の流れを、
"パートナーサイクル" と呼ぶことにする。パートナーサイクルの具体例としては、例えば、
90年代の米国のVCは、ベンチャー企業への投資によって得た膨大な利益によって、投資ファ
ンドが拡大、その結果新たなベンチャー企業への投資が拡大するという形で、VCの "パート
ナーサイクル"の好循環が見られた。VCによるリスクキャピタルの充実は、起業家の資金調
達を容易にすることで、"起業家サイクル"の好循環に貢献したと考えられる。
また、「支援環境」と「起業家」「パートナー」の相互作用としては、例えば、政府及び自
治体が、ベンチャー育成施策により起業活動の活発化を促す、あるいはパートナーの活動へ
の支援により、"起業家サイクル" と "パートナーサイクル" の好循環を促し、経済活性化や税
収増加等に結びつける、また大学、研究機関が、起業家に技術供与することで研究資金を獲
得する等の例を挙げることができる。米国におけるベンチャー企業創出の好循環は、図3の
ように、支援環境が、直接あるいは間接に "起業家サイクル" と "パートナーサイクル" に正の
影響を与えると共に、"起業家サイクル" と "パートナーサイクル" という2つのサイクルが自
律的且つ有機的に機能した結果と考えることができる。以下では、起業家支援システムを構
成する支援環境と主要なパートナーについて、日米比較をもとに概観する。
(2)起業家の支援環境
起業家の支援環境のうち、日米の起業家支援関連法制の整備状況を比較したものが、 図4
である。施行年をみると、これまでの日米の施策の相違がわかる。米国では70年代から80年
代の間に、主要な起業家支援法制が整備されているのに対し、我が国はほとんどが90年代に
入ってからである。
米国において、技術移転機関(TLO)整備や産学連携の推進による技術移転を促すきっか
けをつくり、大学発ベンチャー創出に貢献した政策として、1980年のバイドール法をあげる
ことができる。従来、連邦政府の資金援助の下で生まれた研究成果の所有権は、連邦政府に
帰属したが、バイドール法により、研究成果の特許権が大学に認められた。これに伴い、全
米の主要な大学で技術移転機関が設置され、大学の研究者からの研究成果の報告を受け、そ
れらを評価し、特許取得の決定や特許権実施許諾のための具体的な手続きを行う仕組みが整
えられた。バイドール法が制定された直後においては、大学が生み出す研究成果と民間企業
が求めるニーズの間にはギャップが存在し、それを埋めるノウハウがない等の事情があった。
しかしその後、VC等のパートナーの増加や、政府の創業支援策等の支援環境も次第に整い始
めた。これらとの連携によって、大学の技術移転のための法的取扱いやビジネスの視点から
の評価、大学の技術を用いた創業ノウハウが形成されていった。
一方、我が国の起業家支援法制は、90年代以降急速に整備されているが、米国と比較して、
64 研究論文 Research Paper
ようやく形が整った段階である。実質的に運用されるまでには、まだ時間を要し、運用上改
善の余地が大きい。
(3)パートナー
次に、起業家を取り巻くパートナーの日米の相違について概観する。図5は、我が国のベ
ンチャーの経営者が不足していると感じている支援者に関する調査である。中小企業の創造
的事業活動の促進に関する臨時措置法の認定企業であるベンチャー企業の経営者を調査対象
としている。エンジェル等の個人投資家、VCが、他を引き離して高い割合を示し、弁護士、
大学の研究者、監査法人、公認会計士と続いている。
VCについては、次章以降で詳しく検討するが、ここでは弁護士・法律事務所、エンジェル
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大学発ベンチャー育成とベンチャーキャピタル
図4 起業家支援法政における日米の整備状況比較
図5 我が国のベンチャー企業経営者が不足していると感じている支援者 複数回答のため合計は100を超える
出所:中小企業庁編『平成12年版中小企業白書』(2000)のデータをもとに作成
(個人投資家)について概観する。
〈弁護士・法律事務所〉
米国では、法律事務所の一部が、ビジネスとして創業、起業を支援している。会社設立、
資金調達、販売、提携、知的財産権、ストックオプション計画、雇用等で、弁護士サービス
が提供されている。また、VC、エンジェル等の資金提供者の紹介や、管理職の採用支援等の
サービスを提供している弁護士事務所も存在する。起業家は、創業時から法務サービスを受
けるケースも多く、優れた法律事務所に認められ提携できれば、その事実がその後の経営に
有利に働く。弁護士側から見れば、莫大な成功報酬を期待できる。
一方、我が国の弁護士は、2000年まで、自らの専門分野や実績を広告することが禁じられ
ており、起業家にとって、ビジネスを専門とする弁護士を見つけることが困難であった。ま
た、そもそも創業等ビジネスの分野に強い弁護士が少なかったことや、法曹界全体として、
ビジネスに関与することや莫大な利潤を求めること等に関して否定的に対応してきた面もあ
り、我が国の法律事務所・弁護士は、起業家の有効なパートナーとして機能してこなかった。
〈エンジェル〉
多くの起業家は、事業開始当初に必要な資金を第三者から公に広く集めることは難しい。
従って、まず一般には、自己資金や友人・家族・知人等のコネクションを使って資金援助を
得る方法をとらざるをえない。米国では、こうした私的関係による調達以外に、エンジェル
と呼ばれる個人投資家が多数存在し、創業間もないベンチャー企業に対するリスクマネーの
供給に、重要な役割を担っている。中小企業総合事業団編[2002]は、「アメリカでは、「ビ
ジネスエンジェル」は、72万人おり、1年間の投資件数は、48万9千件、投資総額はベン
チャーキャピタル投資総額の約8倍に当たる327億ドルと推計されており、最大のリスクマ
ネーの資金源となっている」と指摘している。特に、起業活動の活発な米国カリフォルニア
州のシリコンバレーでは、私的な狭い範囲の交友関係だけでなく、大学出身者、地域、同業
者といった共通の関心をつなげたサークルが無数にあり、起業家はこうしたネットワークの
中から、エンジェルを見つけるという。米国におけるエンジェルは、投資する企業の業界に
も詳しく、創業間もないベンチャーの支援に熱心であるケースが多い。
一方、我が国においても、近年、ベンチャー企業を支援するエンジェルの全国組織が結成
された他、税制面での支援策として「エンジェル税制」が段階的に整備される等、起業家の
パートナーとしてのエンジェルの重要性が認知され始めている。この内、エンジェル税制と
は、一定の要件を満たすベンチャー企業の株式を取得した個人投資家が、株式の譲渡等によ
り利益が生じた場合、利益の一部を圧縮、または、損失が生じた場合には繰越できる等の課
税の特例制度のことである。しかし、我が国において、エンジェル税制の対象となったエン
ジェルの数は、2002年2月までの累計で207人(中小企業庁編[2002])にとどまる等、我が
国のエンジェルの現状は、質量共に米国のレベルにない。
このように、日米の起業家支援システムを概観すると、米国は、図2や図3のように、起
業家、パートナー、支援環境が、相互依存しながら有機的に機能し、森林等のいわゆる生態
系的な特徴を有していることがわかる。一方、我が国における起業家支援システムは、米国
のように生態系的な機能を発揮するに至ってはいない。支援環境においては、法制度整備が
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米国に比べて10年以上遅れたことに加え、主要なパートナーを比較しても、我が国には、株
式やストックオプション等の成功報酬契約をもとに、ビジネスとして起業家を支援する組織
や個人は、まだまだ少ない。ベンチャー企業創出を通した我が国全体、あるいは地域レベル
の経済及び産業再生の実現、つまり "起業家サイクル" の好循環を実現するためには、近年急
速に整備されつつある支援環境を効果的に運用すると共に、"パートナーサイクル" の活性化
という視点は有効であろう。
2. 大学発ベンチャー創出とベンチャーキャピタル
1章では、大学発ベンチャーの特徴及び起業家支援システムについて、日米の相違を中心
に概観した。2章では、大学発ベンチャーの重要なパートナーの1つと考えられるVCにつ
いて考察する。
2.1 大学発ベンチャー創出における育成型ベンチャーキャピタルの重要性
大学発ベンチャーの弱みは、既に述べたようにビジネス経験の豊富な人材、市場、経営が
わかる人材がいないことである。米国では、多くのVCが、ベンチャー企業への単なるリスク
マネーの供給者にとどまらず、利害を共有するパートナーとしての立場から、投資先のベン
チャー企業に対して様々な経営支援を行う。例えば、業界大手のセコイヤキャピタル
(Sequoia Capital)やクライナー・パーキンズ・コーフィールド・アンド・バイアーズ(Kleiner
Perkins Caufield & Byers:以下KPCBと略す)等は、大学の研究等をベースとした有望な技
術シーズを有する起業家に対し、資金供給だけにとどまらず、自らのネットワークを活用し
て専門家を紹介する等、積極的な経営支援等を行い、これら企業の中から、ネットスケープ
コミュニケーションズ(Netscape Communications)等の有力な大学発ベンチャーが輩出さ
れた。
大学発ベンチャー等先端技術を有するベンチャー企業への投資に際して、VCの投資先育
成能力の重要性を指摘した先駆的研究として、Bygrave and Timmons[1986]をあげること
ができる。Bygrave and Timmons[1986]は、1967年間から1982年にかけての米国における
VC投資についての研究を行い、「技術的に革新的な企業に対する投資が成功するためには、
リスクマネーの供給以上のものを必要とする。(中略)VCの役割は、成長初期から経営に関
与し、新進のテクノロジー及び起業家を育成、監視して、高度に革新的な技術の出現を加速
することである」と指摘する。
米国において、大学発ベンチャー等成長初期の企業に対して投資を行い、経営に積極的に
関与する育成型VCは、クラシックベンチャーキャピタル(Classic Venture Capital)とも呼
ばれ、その起源は1946年に設立された初の組織的なVCであるアメリカンリサーチアンド
ディベロップメント(American Research and Development:以下、ARDと略す)にある。
ARDは、保険会社や委託基金等の機関投資家に累積した投資資金の一部を活用して、第二次
世界大戦中にマサチューセッツ工科大学 (Massachusetts Institute of T echnology )で開 発
された技術成果を企業化する目的で、米国のマサチューセッツ州に設立された(Bygrave
and T immons[1992])。まさに、今日で言うところの大学発ベンチャーの育成を目的として、
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大学発ベンチャー育成とベンチャーキャピタル
VCが誕生したと言ってよかろう。資金の受動的な供給者ではなく、起業家に対して積極的
にかかわっていくコーチであり、チアリーダーであったと称されるように、ARDは当初は赤
字とキャッシュフロー不足に陥りながらも、投資先企業の支援を長期間にわたって行った
(Bygrave and Timmons[1992])とされる。
(1)投資プロセス
次に、育成型VCの投資プロセスを概観する。まず、投資する原資を集めるために、投資家
から資金を募集し、ファンドを創設する。次にベンチャーから投資依頼を受け付け、投資案
件を検討し投資先を決定する。最後に、株式公開時の株式売却や企業自体の売却等により投
下資本を回収し、業務活動を完結する。そして、再び投資を行うという一連の業務を繰り返
す。そのプロセスは、図6のように、多くの段階が存在する。特に、育成型VCは、投資先の
企業価値創出に積極的なことが最大の特徴である。以下では、VCの投資プロセスを、投資前
と投資後に分けて考察する。
(2)VCの投資前活動
VCの投資前の活動としては、投資案件のふるいわけ、投資案件の評価、検討、審査、契約
の締結等のステップがある。米国では、起業家が事業計画を文書化して、VCに提案すること
が常識となっている。したがって、VCは、自身で営業活動を行う必要性はあまりなく、大抵
は送られてくる事業計画書を見て、これはと思う対象先に連絡をとり、投資案件として仕立
てていけばよい。米国のVCには、毎日10件ぐらいの申し込みがあり、ようやく1000件に3件
68 研究論文 Research Paper
図6 育成型VCの投資プロセス
出所:William D. Bygrave, Jeffry A. T immons, Venture Capital at the Crossroads(1992)
ほどが、実際契約に達する(濱田[1998])とされる。
VCは、事業計画に基づいて、投資候補企業の現在価値(Net Present Value:以下NPVと
略す)を推定する。これには、いくつかの定式があるが、一般的に使用されているのは、
Coventional Methodと呼ばれる式(西澤[1998])である。
!
ただし、R=売上高、g=売上高成長率、a=売上高利益率、n=株式売却までの期間、P=
株式売却時の類似企業の株価収益率(PER)、r=割引率
この式の左辺NPVが現在価値、右辺の分子が将来価値である。割引率(r)は、ベンチャー
企業から見れば資本コストになるし、VCにとっては、期待利益率を意味する。これは、ベン
チャー企業の成長段階等に応じて一定数値が想定され、それをもとに個別投資先のリスクに
応じて適用される。表2は、投資先企業の成長段階に応じて、VCがリスクに見合ったリター
ンと認識する一般的な期待利益率を示したものである。株式公開直前のブリッジでさえ、年
率25%であり、大学発ベンチャーが該当するシード、スタートアップでは、年率60% か ら
80%という高い期待利益率が求められる。大学発ベンチャー等成長初期のベンチャーの審査
においては、企業の成長性が最大のポイントとなる。成長の源泉となる技術や事業コンセプ
トには、VCを説得できる、つまり、年率にして60%から80%という高い期待利益率が見込め
る高いレベルが求められることになる。
(3)投資後活動−モニタリングと経営支援−
投資後の活動は、投資先企業へのモニタリングや経営支援等からなる。育成型VCは、投資
後活動を重視し、投資先企業の経営に深く関与して投資先企業の企業価値創出を目指す。
モニタリングとは、起業家が企業価値を破壊する機会主義的行動に走る可能性を抑え、結
果として、投資先企業の価値向上に寄与することを目的としたものである。例えば、個人的
な利益を有する起業家は、たとえ株主に対して負の現在価値案件に関する情報を持っていた
としても、事業の継続を望む。また、起業家は、株主のコスト負担で自分の評価を高める戦
略を追求しがちである(Gompers[1995])。投資家であるVCは、起業家個人の利益と株主へ
の資金的なリターンについて完全な相互依存関係になっていないことを懸念する。したがっ
て、投資後、起業家の策定した事業計画をもとに、モニターすることになる。特に、VCと起
R(1+g)
n aP
NPV(n)=――――――
(1+r)
n
69
大学発ベンチャー育成とベンチャーキャピタル
表2 ベンチャーキャピタルの投資リスクに見合った期待利益率
期待利益率(年率)成長段階
80%シード
60スタートアップ
50ファーストステージ
40セカンドステージ
30サードステージ
25ブリッジ
出所:William E. Wetzel, Jr., "Venture Capital", William D. Bygrave ed, The Portale MBA
In Entrepreneurship 2nd edition(1997)
業家との間の情報の非対称性が重要な意味を持ち、モニタリングが有益である成長初期の企
業やハイテク分野の企業への投資では、VCは、モニタリングに注力する(Gompers[1995])
とされる。
投資先企業への経営支援は、上昇ポテンシャルの最大化、すなわち、投資先の企業価値を
高めることを目指した活動である。例えば、経営戦略、マーケティング、成長戦略等を考慮
した事業機会の発掘と評価、投資の条件交渉と実行、追加資金の調達、経営陣の強化、資材
調達先の選定、さらに他の主要株主作りや資金調達等の諸活動をあげることができる。
経営支援には、様々な類型があろうが、VCの投資後の経営支援のあり方についての先駆的
研究であるMacMillan et al[1988]は、米国のVCのベンチャー企業への関与パターンについ
て、「開発およびオペレーション」「管理選択」「人事管理」「金融参加」の4つの類型をあげ
ると共に、VCは、財政面で投資先に最も関与している一方、日々のオペレーションへの関与
が最も低かったと指摘している。また、東出・Birley[1999]は、英国のVCに対する調査か
ら、「戦略的関与」「一時的ヘルプ」「ネットワーキング」「人間関係」の4つの類型を指摘し
ている。「戦略的関与」とは、企業戦略、マーケティングといった戦略とマーケットを繋ぐ問
題に関する関与、また、マネージメント、ファイナンスといった相対的に管理的色彩の強い
要素と戦略をつなぐ関与で構成される。また、「一時的ヘルプ」とは、一時的な企業危機、資
本金、借入金のアレンジ、人材調達が主な構成要素となっている。さらに、「ネットワーキン
グ」とは、人脈の拡大、競争情報提供等、「人間関係」とは、勇気・モティベーション付、起
業家の個人的な問題に関する関与で構成されている。MacMillan et al[1988]と 東 出 、B i r l e y
[1999]の類型を比較すると、VCの経営支援のうち、人材調達機能を担う「一時的ヘルプ」、
人脈の拡大、競争情報提供等の「ネットワーキング」等、外部との調整やネットワークを活
用したベンチャー支援が、相対的に重視されつつあると推察される。育成型VCは、投資家と
してあるいはパートナーとして、これら総合的な経営支援を提供することにより、投資先企
業の価値向上を目指すのである。
2.2 リスク分散を超えるベンチャーキャピタルの投資先育成能力
(1)育成型VCとマーチャントVC
米国では、育成型VC以外に、マーチャントベンチャーキャピタル(Merchant Venture
Capital、以下マーチャントVCと略する)と呼ばれるタイプのVCが存在する。1980年代以降、
VC業界が規模を拡大するにつれ、リードインベスターとなり投資先ベンチャー企業を積極
的に支援するという育成型VCの投資手法を採らず、資金提供者としての役割のみに徹する
マーチャントVCが増加した。
Bygrave and Timmons[1992]の指摘をもとに、育成型VCについて、マーチャントVCと
の相違をもとに表にしたものが、表3である。育成型VCは、有望な技術を有する大学発ベン
チャー等成長初期のベンチャー企業を目利きし、投資先数を絞り込む集中投資戦略を採り、
且つ投資後のモニタリングや経営支援を重視する。一方、マーチャントVCは分散投資戦略
を採り、多くの場合リードインベスターとはならず、投資先への経営支援にもあまり積極的
ではない。
ポートフォリオ理論によれば、株式の投資利益率の変動は、個々の企業に作用する独自の
70 研究論文 Research Paper
要因に基づく部分と、全ての企業に共通に作用する要因に基づく部分とに分解される。前者
を個別リスク、後者を市場リスクというが、可能な限り多数の銘柄を組み合わせてリスク分
散を行うと、後者は残るものの、前者は大幅に削減させることができる。ポートフォリオ理
論においては、他のすべてが同じ条件だとすれば、十分に分散されていないポートフォリオ
のリスクは、十分に分散されたポートフォリオよりも高い。VCのポートフォリオが、例えば
特定の成長段階や産業により集中されればされる程、リスク分散が図れない。しかし、育成
型VCは、成長初期のベンチャーに集中投資し、育成活動に積極的であるがゆえに、ベン
チャーキャピタリスト1人当たりで見た場合、当然、投資先数は限られることになる。した
がって、育成型VCの集中投資という投資スタイルは、ポートフォリオ理論に基づくリスク分
散を超え、VCの有望ベンチャーを見分ける評価能力、及び投資後の育成能力が必然的に要求
されることになる。
(2)投資先育成能力と経営関与レベル
英国、米国、フランス、オランダ、ベルギーの5カ国229社 の V C を 対 象 と し て 、 V C が 投 資
に当たって要求する期待利益率とVCの投資後活動との相関についての実証研究を行った
Manigart et al[2002]は、米国のVCが、他の4カ国と比較して、投資に当たって要求する
期待利益率が最も高いとの研究結果を示している。これについて、Manigart et al[2002]は、
「より深い知識及びベンチャーを支援する能力が存在する時、高いリターンを要求すること
が可能となる」と述べ、高い期待利益率の背景には、米国のVCの高い投資先育成能力がある
と指摘している。
米国のVC投資において、VCは、一般にファンドのジェネラルパートナーとなり、ファン
ド総額の2%から3%を年間手数料として、また、成功報酬として15%から25%を受け取る
仕組みとなっている(Bygrave and Timmons[1994])。このような報酬体系において、VC
はモニタリングや経営支援等の投資後活動が追加的に投入するコスト以上に、受け取る成功
報酬が増加する、つまり、投資先企業の企業価値が拡大すると予想される場合においてのみ、
投資先企業への関与が可能となる。例えば、モニタリングのコストは、報告書を作成するに
当たっての費用も含んでいる。VCは、現場を見に行ったり、報告書を読んだりする他、その
他の業務にも時間を割かなければならないため、それらはすべてコストとなる(Gompers
[1995])。投入コスト以上に、投資先の企業価値向上が図れるとの確信がなければ、それ以上
の経営関与を行わない。したがって、VCの投資先への経営関与レベルは、VCの投資先育成
能力に依存することになる。
71
大学発ベンチャー育成とベンチャーキャピタル
表3 育成型VCとマーチャントVCの比較
マーチャントVC育成型VC(クラシックVC)成長段階
成長後期、MBO、割安の公開株成長初期のベンチャー投資対象
分散投資
リードインベスターを回避
集中投資、リードインベスター投資戦略
モニタリング程度企業価値を高めることに注力投資後の経営関与
出所:William D. Bygrave, Jeffry A. Timmons, Venture Capital at the Crossroads(1992)
をもとに作成
VCの投資先への経営支援レベルについて、MacMillan et al[1988]は、(1)限られた経
営関与しかしないレッセフェール的関与、(2)適度に関与する穏健的関与、(3)経営活動
の大半に起業家以上の経営関与を行なう密着した追跡者的関与の三つのタイプを指摘してい
る。Pfirrmann et al[1997]は、ベンチャー企業とVCとの関係を分析した米国とドイツの事
例研究をもとに、両国のVCともに、MacMillan et al[1988]の分類における(1)限られた
経営関与しかしないレッセフェール的関与ではないとした上で、ドイツのVCの多くは(2)
適度に関与する穏健的関与であるのに対して、米国の場合は、(3)経営活動の大半に起業家
以上の経営関与を行なう密着した追跡者的関与の特徴があると指摘している。米国のVCは、
高い投資先育成能力を背景に、投資後活動に大きなエネルギーを注ぎ込んでいる。
例えば、米国のVC業界大手のKPCBは、個々のベンチャーキャピタリストが、特定の産業
分野での実務経験を通して、製品、技術の深い知識の蓄積があり、自らの経験と知識を有す
る領域においてベンチャー企業を目利きし、投資後も一貫して、モニタリング及び経営支援
を行う。KPCBは、また、ザイバツ(Zaibatsu)と呼ばれる過去の投資先の経営者を中心と
するネットワークを形成した。このザイバツのメンバーが、インターネットやバイオテクノ
ロジー等、これまでの実務経験をもとに、投資先企業を支援育成するシステムを導入した。
また、このネットワークを活用して、例えば起業家が技術の専門家である場合には、その人
物を社長ではなく、最高技術責任者(Chief Technology Officer:CTO)とし、経営のトッ
プあるいは、マーケティングの専門家を外部からスカウトする等の大胆な人材供給の機能も
担っている。このザイバツには、ネットスケープコミュニケーションズの創業者のマーク・
アンドリーセン(Marc Andreessen)、サンマイクロシステムズ(Sun Microsystems)のス
コット・マクニーリ(Scott McNealy)等が参加した。
KPCBの投資スタイルは、有望な市場、産業を見つけ、その市場に集中的に投資を行い、
投資後、ザイバツのシステム等を活用して支援を行い、投資先の企業価値を高めることに重
点を置いている。米国では、KPCBのように、経験豊富で成功実績の高い上位のVCに資金が
集まり、良い投資案件が提案され投資実績が高くなるという好循環が、特に90年代後半に生
じた。
3. 我が国ベンチャーキャピタルの投資先育成能力
我が国VCは、近年、大学発ベンチャー向けファンドを相次いで設立する等、積極的な取組
みを行っている。我が国VCは、米国の育成型VCと同様に、大学発ベンチャー育成に一定の
役割を担うことが可能であろうか。我が国VCの投資動向、育成活動等について考察する。
3.1 大学発ベンチャーへの資金供給の活発化
まず、我が国VCの最近の投資動向を概観しよう。財団法人ベンチャーエンタープライズ
センターの調査によると、我が国VCの投資残高は、2001年の調査で初めて1兆円を超えた。
90年の投資残高5269億円から、その後多少の増減は見られるが、2001年には、1兆154億円、
2002年には、9985億円と、VCによるベンチャー企業への資金供給は確実に増加している。
72 研究論文 Research Paper
特に、1999年以降、成長初期のベンチャー企業への投資が増加している。東京証券取引所
のマザーズ等ベンチャー企業を対象とした新興市場の整備が進み、従来20年ともいわれた創
業から上場までの期間が、数年で上場が見込める状況になったことがその背景にある。1999
年以降、我が国VCは、急速に成長初期のベンチャー企業への投資にシフトしている(図8参
照)。97年には25%程度であった設立後5年未満の企業への投資が、2000年には50%を超え、
2001年、2002年と2年続けて減少しているものの50%以上を維持している。VCの投資絶対
額が、増加していることをあわせて考えると、成長初期のベンチャー企業への資金供給は、
絶対額でも増加している。
73
大学発ベンチャー育成とベンチャーキャピタル
図7 我が国VCの投資残高の推移
出所:財団法人ベンチャーエンタープライズセンター、『ベンチャーキャピタル投資状況調査』(2003)
図8 新規投資先企業の設立後年数別投資動向
出所:財団法人ベンチャーエンタープライズセンター、『ベンチャーキャピタル投資動向調査』(2003)
大学発ベンチャーに限ってみても、資金供給は増加している。表4は、主な大学発ベン
チャーファンドを年代順に列挙したものである。我が国で始めての大学発ベンチャーファン
ドは、1997年に大手VCと北海道大学等によって設立されたが、2002年以降、大学発ベン
チャーファンドの設立が相次いでいる。資金供給という観点から見た場合、我が国VCは、大
学発ベンチャー育成に一定の役割を果たしつつあるといえよう。
3.2 発展途上の投資先育成能力
次に、我が国VCの投資先育成能力を考察する。近畿経済産業局編[2002]が指摘するよう
に、我が国の大学発ベンチャー育成の観点から見た場合、起業家を取り巻く支援システムの
うち、特にパートナーの存在は成功要因の最大のポイントである。我が国VCは、大学発ベン
チャーのパートナーになりうる投資先育成能力を有しているのであろうか。
VC投資先育成能力についての代表的な実証研究を見てみると、日米で対照的な結果が見
られる。つまり、米国のVCは、投資後活動を通じて、投資先企業の価値を高めている一方、
我が国のVCは、投資先企業の価値を十分高めているとはいえないとの結果が報告されてい
る。Brav and Gompers[1997]は、米国における1976年から1994年にかけての新規公開企業
の長期的な株価業績の低さについて、VC投資との関連性を調査し、「新規公開企業の株価業
績の低さは、VCが投資していない小規模な企業によってもたらされており、VC投資先の新
規公開企業は、VCが投資していない企業を上回る業績を示している」と指摘している。一方、
忽那[1999]は、1996年の我が国の新規店頭公開企業109社を対象に、新規公開企業の株価成
長率とVC投資との関連性を分析し、「VCが投資し、しかもトップのVCおよびVC全体として
74 研究論文 Research Paper
表4 主な大学発ベンチャーファンド
名 称設立時期
北大アンビシャスファンド
1997年 筑波ファンド
早稲田/大和TLOパイロットファンド
1998年 ウェルインベストメント㈱
よこはま大学アントレプレナー育成ファンド
1999年 しょうなん産学連携ファンド
ITフォーム投資事業組合
2000年 ライフサイエンス投資事業組合
バイオテック・ヘルスケア投資事業組合2001年
ジャフコ産学共創ファンド
2002年
トランスサイエンス壱号投資事業有限責任組合
ホワイトスノー第二号投資事業有限責任組合
投資事業有限責任組合アステック・テクノロジー・インキュベーショ
ン・ファンド
京都イノベーション育成投資事業有限責任組合
日興地域密着型産学官連帯投資事業有限責任組合
エヌアイエフ産学連携ファンド1号投資事業有限責任組合2003年∼
の関与が大きい企業において、むしろ公開後の株価パフォーマンスが悪いという特徴がみら
れる」と指摘している。また、Y. Hamao et al[2000]は、1989年 か ら1995年までの我が国
の新規店頭公開企業を対象に、VCのタイプと長期株価業績との関連を分析し、「海外及び独
立系のVCを除いては、VCの投資先企業の長期株価業績が、VCが投資していない企業に比べ
て良好であるとはいえない」と指摘している。
我が国VCの投資先育成ノウハウが発展途上である背景には、大きく2つの理由があるで
あろう。第1に、90年代初めまでの多くのVCが、株式公開が早い時期に見込める、すでに企
業としては成熟した中小企業に資金を提供し、その企業の株式公開を指導し、資金を回収し
て収益を上げるという事業が本流であったことがあげられる。そもそも成熟した中小企業は、
すでに経営的に軌道に乗っているところが多く、投資後の支援活動はあまり必要ではなかっ
た。したがって、そのためのベンチャーキャピタリストの育成も遅れたと考えられる。
第2に、組織主導の業務運営が行われてきたことが、ベンチャーキャピタリスト育成の障
害になってきた。我が国の従来の多くのVCは、投資業務プロセスを一人のベンチャーキャ
ピタリストに任せるのではなく、銀行等の金融機関と同様に、投資業務の中身を細かく分解
し、それぞれの機能を専門に担当する部署を設ける組織運営が行なわれてきた。一方、米国
の育成型VCにおいては、個人主導の組織運営が行われている。投資後活動を行う上で、投資
先企業をよく知っている有能なベンチャーキャピタリスト1人が、すべての責任を負って任
に当たる方が効率的であるとの考えからである。
我が国VCが過去に行った投資先支援策を見ると、我が国VCの投資後活動の実態がわかる。
表5のように、資金調達、資本政策等金融関連については、80%以上の高い割合のVCで実施
されているが、法務、技術等は、20%以下にとどまっている。これは、我が国VCの多くが、
大手金融機関の子会社として出発したこともあり、金融関連のモニタリングのノウハウに関
しては、比較的高い割合のVCが実績を持っているものの、その他の投資先育成ノウハウにつ
いては、発展途上であることの一端を示している。
ただ、我が国においても、90年代後半以降、米国の育成型VCにならって、投資後の育成活
動を重視するVCが増加している。90年代以前に設立された大手VCにおいても、投資後の育
成活動を殆ど行なわないハンズオフ(Hands-off)投資から、投資後の育成活動を重視するハ
ンズオン(Hands-on)投資へ経営方針を転換するところも出始めている。また、事業会社系
のVCや投資先分野を特化する新興VCには、育成型を志向するVCが多い。例えば、京都に本
社を置く独立系新興VCは、投資先育成を経営理念に掲げており、投資先に対して密着した支
援を実施するため、投資先を本社及び事務所から2時間程度で通える範囲内に絞っていると
いう。これは、ベンチャー企業は、地理的に近い監査人を望み、距離の近さは、取締役会メ
ンバーに就任するかどうかの重要な決定要素であるため、VCは、地理的に近い企業をモニタ
リングすることによって、コストを最小限にすることを目指すべきであるとする実証研究
75
大学発ベンチャー育成とベンチャーキャピタル
表5 VCが過去に行った投資先支援策
その他法務技術
会社
設立
IPO提携人材
事業
計画
専門家販売
資本
政策
資金
調達
分野
6%8%10%14%29%41%43%47%61%76%80%88%構成比
出所:財団法人ベンチャーエンタープライズセンター、『ベンチャーキャピタル投資動向調査』(2001)
(Lerner[1995])に沿った投資スタイルである。また、個々のベンチャーキャピタリスト
の投資先育成能力向上を促すインセンティブとして、成果を上げた社員には、キャピタルゲ
インの2%、また、投資先企業のコンサルティング業務等を行った際のインカムゲインの
10%が、ボーナスとして支払われる賃金体系を導入した。同VCは、2003年5月には、関西を
中心とした大学発ベンチャー・産学連携に特化したファンドを設立している。
一方、同じく東京に本社を置く独立系新興VCは、我が国が国際的に競争力を持つとされる
ナノテクノロジーに投資領域を絞った上で、投資先育成のため、ナノテク関連の事業に精通
した経験豊富な経営陣を集めている。大学や研究機関等の最先端のシーズを発掘し、これら
専門の経営陣が支援、指導することで、投資先の育成を目指している。これらの我が国の独
立系新興VCは、米国の育成型VCに極めて近く、今後の活躍が期待される。
おわりに
本論文は、我が国の大学発ベンチャー育成にとって、個々のベンチャーキャピタリストの
投資先育成能力の向上が、欠かせない重要な要素であることを指摘した。ただ、VCによる大
学発ベンチャー育成の成否は、VC側のみにとどまる問題ではない。VCと投資先との共同作
業である。例えば、英国VCの投資先育成活動に関する実証研究では、VCと投資先経営チー
ムとの間の意見対立は、企業業績に正の影響を与える一方、個人的な感情の対立は、企業業
績に負の影響がある(Higashide and Birley[2002])との研究も見られ、VCと起業家との協
業のあり方は難しい。VCと起業家の双方が、最も有効で効率的な連携を模索する必要があ
ろう。
大学発ベンチャー等成長初期のベンチャー企業に対する投資は、従来の我が国VCの投資
スタイルとは異なり、個々のベンチャーキャピタリストの投資先育成能力をベースとすると
いう発想の転換が必要である。すなわち、成長初期企業への投資は、投資ビジネスというよ
りは、経営支援ビジネスであり、新事業育成ビジネスであるとの明確な認識が必要となる。
例えば、米国の育成型VCは、VC自身がビジネスシーズを事業化できる優れた人材を外部か
らスカウトし、いわば人為的に投資できるレベルの経営チームを作り上げてから投資してい
る。我が国の育成型を志向するVCにおいても、大学発ベンチャーへの人材供給の役割は、経
営支援のうちでも非常に重要な要素となる。特に、組織主導の業務プロセスを経て、投資を
する我が国の多くの金融系VCにおいては、継続的な経営支援を必要とする大学発ベン
チャーへの投資に当たって、個々のベンチャーキャピタリストが、一つの投資先のすべてを
掌握して育成活動を行なえるような個人主導の組織体制の確立が求められる。少なくとも従
来の組織主導の投資チームとは独立した投資チームを創設すべきであろう。もし従来の投資
の延長として、大学発ベンチャーへの投資が行われたが、思った成果が上げられず結果とし
て近い将来、投資を回避するという事態になれば、我が国における大学発ベンチャー創出を
通じた有望先端技術の事業化、ひいては、新産業創出、産業再生の実現にとって打撃となる。
そのような愚を冒してはならないであろう。
その意味で、育成型を志向するVCの増加を期待したい。幅広い人脈を持ち、ベンチャー企
業への外部人材の紹介等が可能な大手企業からの人材、あるいは、経営コンサルタントや起
業経験者等の経営ノウハウをもつ人材によるVC業界への新規参入により、育成型VCが質量
76 研究論文 Research Paper
ともに充実することが期待できる。また、起業家育成環境の整備を担う政府や自治体におい
ては、育成型VCの充実や個々のベンチャーキャピタリストの投資先育成能力向上に向けた
支援施策を進めるべきであろう。
本論文を作成するに当たり、北海道大学経済学部の濱田康行教授には、議論の機会や多く
のご指摘を頂いた。特にここに記して謝意を表する。濱田教授からは、我が国のインキュ
ベータの育成能力の問題点やベンチャーキャピタリストの育成に必要な具体的カリキュラム
の提案等、今後の研究に向けた具体的な示唆を頂いた。これらの点については、別の機会に
論じたい。
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22)中小企業庁編、『中小企業白書』、2000年、2001年、2002年、2003年
23)中小企業総合事業団編、『ビジネスエンジェルの実態調査報告書』、2002年
24)濱田康行、『日本のベンチャーキャピタル・新版』、日本経済新聞社、1998年
25) 東 出 浩 教 、 S u e B i r l e y 、「英国ベンチャーキャピタリストの活動- 投資済案件との関わり方」、『JAPAN
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26)財団法人ベンチャーエンタープライズセンター編、『ベンチャーキャピタル投資動向調査』、1993年、
1994年、1995年、1996年、1998年、1999年、2000年、2001年、2002年、2003年
78 研究論文 Research Paper