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Pulex No. 100, 2021
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末筆となったが,糸島半島の水田調査や本種の情報提供で協力していただいた村尾竜起博士,
上森教慈氏,辰巳嘉人氏にお礼申し上げる.本報告の一部は JSPS 科研費 JP19H00942,JP19K06824
の助成を受けて行われた.
[引用文献]
福岡県環境部自然環境課(編)(2014)福 岡 県 の 希 少 野 生 生 物 福岡県レッドデータブック 2014.
280 pp. 福岡県環境部自然環境課.福岡.
Hirashima, Y. (1961) Monographic study of the subfamily Nomiinae of Japan (Hymenoptera, Apoidea).
Acta Hymenopterologica, 1: 241–303.
三田敏治・叶 和喜(2015)福岡県で再び確認されたエサキコンボウハナバチ.Pulex, (94): 670.
村尾竜起(2017)大分県の草原地帯からエサキコンボウハナバチを初記録.大分自然博物誌-ブ
ンゴエンシス-,2: 98.
村尾竜起・岩田眞木郎(2009)エサキコンボウハナバチの新分布地および若干の生態的知見.中
国昆虫,(23): 61–64.
多田内修・村尾竜起(編)(2014)日本産ハナバチ図鑑.479 pp. 文一総合出版.東京.
上森教慈・西谷光平(2020)福岡県におけるエサキコンボウハナバチの追加記録.KORASANA,
(95): 18.
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(Hym.: Chrysididae)
ヤマトナナフシヤドリバチを篩い採集によって多数採集
西谷光平(九大・農・昆虫)・久末 遊(九大院・生資環・昆虫)
ヤマトナナフシヤドリバチ Cladobethylus japonicus Kimsey, 1986 は青銅色の金属光沢をもつセ
イボウ科の一種である(寺山ら,2016).本 種 は 日 本 固 有 種 で あ り ,本 州 の 新 潟( 春 日 ,2019),
神奈川(脇,2002),八丈島(南部,2007),京都(Kimsey, 1986),奈良(井藤ら,2021),
九州の福岡(久末・三田,2019),熊本(久末・三田,2019)から確認されているが,いずれの
報告でも得られている個体は 1頭か 2頭で非常に少なく,報告されている個体を合計しても 9頭
である.筆者らは土壌篩いによって採集された本種を多数確認しているため,本種の効率的な採
集法としてここに報告する.なお,報告に用いた標本は久末が保管している.
[採集データ]
1♀(図 1),福岡県糸島市井原山,8.IX.2019,西谷採集;3♀,同採集地,11.IX.2021,西 谷 採 集;
1♀,福 岡 県 糸 島 市 瑞 梅 寺 ,12.VIII.2020,西 谷 採 集; 1♀(図 2),同 採集地,2.X.2021,久 末 採 集 .
瑞梅寺では,図 3のような環境で落葉と土をザル(図 4上:長さ 298×幅235×高さ 50 mm, メ
ッシュ内径 3 mm)に 乗 せ ,下 に ザ ル が 収 ま る 白 い バ ッ ト( 図 4下:長 さ 324×幅234×高さ 52 mm)
を置き 5~20 回ほど左右に篩って得られた.井原山では,斜面から露出した木の根に引っかかっ
た落葉と土壌を採取し,ザルで同様に篩うことで採集された.過去報告された個体では久末・三
田( 2019)に よ っ て 報 告 さ れ た 福 岡 県 糸 島 市 の 個 体 も 土 壌 篩 い に よ っ て 得 ら れ て お り ,こ れ ま で
確認できた個体の半数近くを土壌や落葉の篩いによって得ていることになる.土壌や落葉層から
の採集は,同環境の寄主を利用する寄生蜂類の採集に有効であることが報告されており (Silva
& Feitosa, 2017),本種も他のナナフシヤドリバチ類同様ナナフシ卵への寄生が考えられること
から篩い採集がサンプリングに有効であると考えられる.
末筆ながら,貴重な文献をご恵与いただいた春日拓実氏(新潟県),発表を勧めていただいた
三田敏治博士(九州大学)に厚く御礼申し上げる.
Pulex No. 100, 2021
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[引用文献]
久末 遊・三田敏治(2019)四国及び九州から見つかったナナフシヤドリバチ亜科 2種の記録.
つねきばち,(33): 36.
井藤竜大・松本吏樹郎・三田敏治・寺山 守・伊藤誠人(2021)奈良県矢 田丘陵 のセイボウ上科
ハチ類.大阪市立自然史博物館研究報告,(75): 41–52.
春日拓実(2019)上越市でナナフシバチ亜科 2種を採集.越佐昆虫同好会報,(120): 1.
Kimsey, L.S. (1986) New species and genera of Asian Amiseginae. Psyche, 93: 153–165.
南部敏明(2006)ヤマトナナフシバチ八丈島に産す.埼玉動物研通信,(56): 25.
Silva, T.S.R. & Feitosa, R.M. (2017) Hunting for wasps in-between: the use of the Winkler extractor to
sample leaf litter Hymenoptera. Neotropocal Entomology, 46: 711–718.
寺山 守・須田博久・田埜 正・室田忠男(2016)セイボウ科.寺山守・須田博久(編)日本産
有剣ハチ類図鑑: 388–414.東海大学出版部.東京.
脇 一郎(2002)生田緑地でのハチ目の採集記録.川崎青少年科学館紀要,(13): 93–101.
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(Hym.: Formicidae)
ヒメアギトアリの沖縄島における採集記録
久末 遊(九大院・生資環・昆虫)・徳重典英(琉球大・教育学部)
ヒメアギトアリ Anochetus shohki Terayama, 1996 はハリアリ亜科ヒメアギトアリ属に属する約
4 mm のアリである(寺山ら,2014).本種は日本の固有種とされ,琉球列島から散発的に報告
されている(Terayama, 1996; Komatsu, 2009;久末ら,2019).上記文献によると,本種の分布は
宮古諸島(宮古島),八重山諸島(石垣島,西表島,与那国島)となっている.しかしながら,
図1–4.1,ヤマトナナフシヤドリバチ (標本);2,生時のヤマトナナフシヤドリバチ;3,採集環境;
4,採集に使用したザル(上)およびバット(下).