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ソフトボールにおけるイップスの多面的リスク評価尺度作成の試み (An attempt to develop a multiple risk assessment scale for the yips in softball)

Authors:

Abstract

Many softball players suffer so-called yips in pitching and throwing. However, the factors underlying this problem have remained unknown. We attempted to develop a questionnaire to assess the risk of yips based on its causes, situations, and symptoms. A mixed method study was conducted for the above purposes. In Study 1, female university softball players (N = 97) suffering yips responded to an open-ended questionnaire on the causes, situations, and symptoms of yips. These 3 aspects were analyzed qualitatively using the KJ method. We obtained 4 categories with 14 items about causes, 6 categories with 24 items about situations, and 9 categories with 36 items about symptoms. In Study 2, a questionnaire survey using 74 items developed in Study 1 was conducted with male and female softball players (N = 345). Exploratory factor analyses of the 3 aspects revealed that causes consisted of 3 factors (injury, misses, and fear) with 11 items, situations consisted of 3 factors (important situations, usual situations, and particular person/time/distances) with 18 items, and symptoms consisted of 4 factors (spasm, lack of imagery and movements, predicted anxiety, and envy for others) with 27 items. The high internal consistency, high predictive validity and acceptable construct validity of the 3 factors indicated that we succeeded in making a preliminary classification of causes, situations, and symptoms related to softball yips. A multifactorial assessment scale for assessing the risk of yips was developed based on the results of this research. Further research is need to increase the reliability and validity of this scale.
929
ソフトボールにおけるイップスのリスク評価尺度
稲田 愛子 1)
  田中 美吏 1)
  柄木田 健太 2),3)
ソフトボールにおけるイップスの多面的リスク評価尺度作成の試み
1 武庫川女子大学健康・スポーツ科学部
663-8558 兵庫県西宮市池開町 6-46
2 大阪体育大学大学院スポーツ科学研究科
590-0496 大阪府泉南郡熊取町朝代台 1-1
3 武庫川女子大学男女共同参画推進課
663-8558 兵庫県西宮市池開町 6-46
連絡先 稲田愛子
1.
Department of Health and Sports Sciences, Mukogawa
Women’s University
6-46 Ikebirakicho, Nishinomiya, Hyogo 663-8558
2.
Graduate School of Sport and Exercise Sciences, Osaka
University of Health and Sports Sciences
1-1 Asashirodai, Kumatoricho, Sennangun, Osaka 590-0496
3.
Gender Equality Promotion, Mukogawa Women’s University
6-46 Ikebirakicho, Nishinomiya, Hyogo 663-8558
Corresponding author a_inada@mukogawa-u.ac.jp
Abstract: Many softball players suer so-called yips in pitching and throwing. However, the factors underlying
this problem have remained unknown. We attempted to develop a questionnaire to assess the risk of yips based on
its causes, situations, and symptoms. A mixed method study was conducted for the above purposes. In Study 1,
female university softball players (N = 97) suering yips responded to an open-ended questionnaire on the causes,
situations, and symptoms of yips. These 3 aspects were analyzed qualitatively using the KJ method. We obtained 4
categories with 14 items about causes, 6 categories with 24 items about situations, and 9 categories with 36 items
about symptoms. In Study 2, a questionnaire survey using 74 items developed in Study 1 was conducted with male
and female softball players (N = 345). Exploratory factor analyses of the 3 aspects revealed that causes consisted
of 3 factors (injury, misses, and fear) with 11 items, situations consisted of 3 factors (important situations, usual
situations, and particular person/time/distances) with 18 items, and symptoms consisted of 4 factors (spasm, lack
of imagery and movements, predicted anxiety, and envy for others) with 27 items. The high internal consistency,
high predictive validity and acceptable construct validity of the 3 factors indicated that we succeeded in making a
preliminary classication of causes, situations, and symptoms related to softball yips. A multifactorial assessment
scale for assessing the risk of yips was developed based on the results of this research. Further research is need to
increase the reliability and validity of this scale.
Key words : pitching and throwing, mixed methods research, cause, situation, symptom
キーワード:投・送球,混合研究法,きっかけ,状況,症状
INADA Aiko1, TANAKA Yoshifumi1 and KARAKIDA Kenta2,3: An attempt to develop a multiple risk assessment
scale for the yips in softball. Japan J. Phys. Educ. Hlth. Sport Sci.
Ⅰ 序 論
イップスとは,「精緻スキルの遂行における心
理・神経・筋・動作障がい」と定義されており
Bawden and Maynard, 2001; Clarke et al., 2015),
多くのスポーツ選手が抱える悩みである.ソフ
トボール,野球,ゴルフを対象に,イップスの
主観的経験を有する選手の割合が調べられてお
り,大学生女子ソフトボール選手で 7%(稲田・
田中,2019,大学生・高校生野球選手で 4%(内
田,2008,プロゴルファーや高いスキルレベル
を有するアマチュアゴルファーで 28%McDaniel
et al., 1989)や 54%Smith et al., 2000)などの報
告がある.
その他にも国内外で複数の研究が行われてお
研究資料
体育学研究 65929-9452020
930 稲田ほか
り,それらの研究を体系的にまとめた総説論文
も公表されている(Clarke et al., 2015; 栗林ほか,
2019; Lobinger et al., 2014). Clarke et al.2015
は心理学,生理学,神経学,運動学的視点からス
ポーツにおけるイップスの理解を試み,イップス
の症状を神経学的要因によって発現するタイプ
I(ジストニア),心理的要因により症状が現れる
タイプ II(チョーキング),そしてタイプ III
の両方を経験するタイプ III 3つのタイプで説
明できることを提案している.また,Lobinger et
al.2014)はイップスの影響を受ける動作やスポ
ーツについて概説し,栗林ほか(2019)もイップ
スの症状についてまとめ,それを基にイップスの
アセスメント方法を提案している.
ソフトボール,野球などのベースボール型競技
では,正確にボールを投げられなくなる症状が長
期的に続くことがあり,投・送球イップスと呼ば
れる.投・送球イップス以外にも,心因性動作失
調(鈴木,2012,心因性投球動作失調(岩田・
長谷川,1981西野ほか,2006投球失調(中込,
1987,投・送球障がい(賀川・深江,2013)な
どの呼称がある.イップスは競技離脱に繋がる可
能性もあり,練習や試合といった競技場面での対
応が求められる.しかしながら現在のところ,競
技場面での有効な対応指針を示すまでには至って
いない(土屋,2018.その原因としてイップス
の原因や症状が多様であり,それに伴う対処方法
の確立の困難さが指摘されている(向,2017).
したがって,イップスへの有効な予防法や対
処法を確立することが急務と言えるが,本研究で
はその前段階として,イップスを発生させるリス
クを多面的に評価する客観的評価の必要性に着目
した.ソフトボールや野球では,選手自身の自
己評価や指導者やチームメイトなどの他者観察に
よる他者評価で主観的にイップスの有無の判断が
行われている現状にある.このような方法ではイ
ップスの早期発見が難しいことや,イップスでは
ないにも関わらず自己や他者によってイップスの
誤判断をしてしまうなどの問題を有している.そ
こで,イップスを発生させるリスクを多面的に評
価する尺度を作成し,利用することによって客観
的にイップスの評価を行うことが可能となり,こ
れらの問題の緩和に繋がると考えた.
野球選手を対象とした研究では,イップスの症
状の度合いを評価する尺度の作成が試みられてい
る(賀川・深江,2013;内田,2008.これらの
評価尺度では,投・送球場面に対する「暴投のイ
メージの想起」や「自然体の欠如」,投・送球結
果や他者評価に対する「予期不安」や「劣等感」
など,主に心理的症状についての測度が多いとい
う特徴がある.しかしながらイップスは心理的症
状とともに身体的症状も併発する.野球におけ
るイップスの身体的症状として,自身が持つ投・
送球イメージと実際の動作が一致せず自然な投
動作が欠如することや(會田2017;岩田・長
谷川,1981西野ほか,2006送球の際に「ス
ローイングがうまくできない,ボールを持つと手
首が硬直してふりかぶれない」「バッターが立っ
ていると,投げるときにうまく力が入らない」な
どのように,硬直や震えといった症状も現れるこ
とが報告されている(岩田・長谷川1981;向,
2017).
また,野球においてイップスが発症するきっか
けについても多くの研究があり,暴投やミス,指
導者からのプレッシャー,暴投をするとキャッ
チボール相手が激しく怒ることなどが報告され
ている(松田ほか2018;向,2016;西野ほか,
2006.試合などのように投・送球に対して高い
正確性を求められる状況や,近距離での送球のよ
うに力加減を求められる状況で現れることも報告
されている(會田,2017;石 原・内 田 , 2017中込,
19872006;西野ほか,2006;内田,2008). こ
れらより投・送球イップスについて,心理的症状
だけでなくイップスの原因となるきっかけや状
況,さらには身体的症状も加えた多面的な評価を
行うことで,イップスを発生させるリスクに対す
る客観的評価の妥当性を高められると考えた.
以上より本研究では,「イップスが発症したき
っかけ」「イップスが現れる状況」「イップスの
症状」の 3側面の構成概念を明らかにし,ソフト
ボール選手のイップスを発生させるリスクを詳細
に把握するための多面的評価尺度を作成すること
931
ソフトボールにおけるイップスのリスク評価尺度
を目的とした.本研究では,ベースボール型競技
の中のソフトボールに限定した評価尺度の作成を
試みた.上述の通り,野球を対象にイップスの
評価尺度の作成は行われているが(賀川・深江,
2013;内田,2008,ソフトボールは野球よりも
塁間や競技場の距離が 3分の 2程度と短く,野球
よりも捕球から送球までの時間切迫が高まる場
面や,近距離で投・送球する頻度が多い.また,
使用する道具も異なり,ボールの直径は野球より
も大きいため,女子選手やジュニア世代では示指
中指・薬指の 3本を用いてボールに指をかける選
手が多い.さらに,ソフトボールの投球は腕を 1
回転させてから投げるウィンドミル投法で下投げ
をすることや,投手がボールを離すまで離塁をし
てはいけない,投手の牽制がないといった野球と
は異なるルールが適用される.環境,用具,ルー
ルなどのこれらの種目特性の違いから,ソフトボ
ールに特化したイップスを発生させるリスクを多
面的に評価する尺度の作成を試みた.
この研究目的に対して,本研究では質的研究と
量的研究を組み合わせた混合研究法を採用した.
混合研究法とは,1つの研究・調査の中で質的ア
プローチと量的アプローチの両方を用いてデータ
収集と分析を行い,結果を統合して推論を導く調
査研究デザインである(クレスウェル・プラノ
クラーク,2010;樋口,2011.混合研究法の研
究デザインには,「トライアンギュレーションデ
ザイン(triangulation design「埋め込みデザイン
embedded design「説明的デザインexplanatory
design「探究的デザイン(exploratory design)」
という 4つの主なタイプがある.本研究では 4
の研究デザインのうち,調査票を開発し検証する
主旨をもつ探究的デザインを用いた.さらに,そ
の中でも質的研究を基に量的調査票を開発し実
施する必要がある場合に用いる調査票開発モデ
ルを採用した(クレスウェル・プラノクラーク,
2010).
混合研究法の探究的デザイン調査票開発モデル
を参考に,本研究の調査 1では「イップスが発症
したきっかけ」「イップスが現れる状況」「イッ
プスの症状」について質的調査を行うことで調査
票の項目を作成した.これらの 3側面について自
由記述による質的データを収集し,質的データの
分析によって 3側面のそれぞれについてカテゴリ
ーを想定し,量的調査を行うための質問項目を選
定した.調査 2では,調査 1で選定された質問項
目を用いて 3側面それぞれの構成概念を明らかに
する量的調査を行った.そして,信頼性や構成概
念妥当性,予測的妥当性を検討することで,「イ
ップスが発症したきっかけ」「イップスが現れる
状況」「イップスの症状」の 3側面から成るイッ
プスを発生させるリスクを定量化するための評価
尺度を作成する.
Ⅱ 調査 1
1. 方法
1.1 データ収集
関西の大学女子ソフトボール 1部リーグに所属
する 10 大学(325 名)を対象にアンケート調査
を行った.選手にアンケート用紙を配布し,はじ
めに調査者が口頭で調査の趣旨とアンケート用紙
の記入の方法などを説明した.なお,イップスを
自覚する選手にとっては,イップスが発現する際
の状況や心理状態を質問されることは心理的に負
担になる可能性があった.それらを最小化するた
め,回答は任意であることを事前に説明した.回
答は無記名での記述であり,質問への回答をもっ
て調査協力への同意とみなした.調査者の立ち会
いの下で回答を得られなかった大学に対しては,
各大学の監督に本研究の趣旨と方法を口頭で説明
し,調査協力への同意を得た.その後,主将にも
同様の説明を行い,主将を中心に各チーム内で回
答する時間を設けさせて実施した.そして,回答
後に郵送による回収を行った.なお,以下の調査
1については著者らの所属機関における人を対象
とする研究等倫理審査の承認(承認番号 17-62
を得たうえで実施した.
1.2 分析対象者
325 名の調査対象者のうち 287 名の有効回答を
得た(有効回答率 88.3%平均年齢 19.9±1.2 歳 ).
932 稲田ほか
残りの 38 名に関しては全質問項目で未回答であ
ったため分析対象外とした.さらに,「自分は投球
送球イップスであると思いますか ?」という質問
に対し,「イップスである」「イップス傾向であ
る」「イップスではない」の 3択で回答させた.
その中から,自己の投・送球について「イップス
である」と自覚する 19 名及び「イップス傾向で
ある」と自覚する 78 名を合わせた計 97 名の回答
を分析対象とし,「イップスではない」と回答し
190 名は分析対象外とした.
1.3 調査項目
「イップスが発症したきっかけ」「イップスが
現れる状況」「イップスの症状」のそれぞれに対
して自由記述で回答を求めた.なお,このアンケ
ートではこれら以外の調査項目も設けており,そ
れらの結果は他論文内(稲田・田中,2019)にて
報告されている.
1.4 分析方法
「イップスが発症したきっかけ」「イップスが
現れる状況」「イップスの症状」について得られ
た自由記述に対して,KJ 法を用いて整理および
集約を行った.まず,得られた自由記述を改変す
ることなく意味単位ごとにカードに転写し,ラベ
ル化した.次に,意味の似ているラベルをグルー
ピングしサブカテゴリーを作成した.その後,特
性の近いサブカテゴリー同士をグルーピングしカ
テゴリーを作成した.グルーピングおよびサブカ
テゴリー・カテゴリーの作成や命名は,本研究実
施者 3名で,研究目的に鑑みて議論を行い,同意
にいたるまで吟味や検討を行った.
さらに本調査において抽出された質問項目と,
野球選手のイップスについて量的調査を行ってい
る前述した研究内の質問項目の照合を実施し,調
1から抽出された質問項目以外にも,ソフトボ
ール選手のイップスに関する上記の 3側面の構成
概念を検討するにあたって必要と考えられた質問
項目を追加した.
2. 結果
以下の結果記述では全回答を報告すると冗長的
な記述になるため,調査 2に必要な項目に絞った
記載とする.また,表 1-1 および表 1-2 の項目内
KJ 法で得られた回答の度数を記載する.
2.1 イップスが発症したきっかけ
以降では,自由記述から得られたラベルを[ ]
KJ 法から作成されたカテゴリーを『 』で示す.
イップスが発症したきっかけの自由記述は 53
の回答が得られた.それらの回答の整理を行った
結果,『恐怖心』『ミス』『怪我をさせた』『怪
我をした』『その他』の 5つのカテゴリーに集約
された.これら 5つのカテゴリーから[雨の日に
屋上でボール回しをして]などイップスのきっか
けと関連が低いと判断した『その他』のカテゴリ
ーを想定因子から削除した.以上の手続きにより,
『恐怖心』『ミス』『怪我をした』『怪我をさせた』
4因子を想定した 14 項目を作成した.
2.2 イップスが現れる状況
イップスが現れる状況の自由記述では 100 個の
回答が得られた.それらの回答の整理を行った結
果,『種々の心理状況』『近距離』『その他特定
の距離』『時間的余裕』『特定の状況』『試合や
ピンチ』『相手』『全ての状況』の 8つのカテゴ
リーに集約された.これら 8つのカテゴリーから,
『その他特定の距離』および『特定の状況』のカ
テゴリーの内容は距離や状況が著しく限定的であ
り,投・送球全般のイップスを検討する調査にお
ける因子や項目として相応しくないと判断し,こ
れらのカテゴリーを想定因子から削除した.最終
的に,『種々の心理状況』『近距離』『時間的余裕』
『相手』『試合やピンチ』『全ての状況』の 6
子を想定した 24 項目を作成した.『相手』および
『試合やピンチ』のカテゴリーでは,賀川・深江
2013,内田(2008)で用いられている質問項目
を追加した.
2.3 イップスの症状
イップスの症状に関する自由記述は 87 個の回
933
ソフトボールにおけるイップスのリスク評価尺度
表 1-1 ソフトボール選手のイップスの評価尺度における想定因子と質問項目
因子 項目
イップスが
発症した
きっかけ
恐怖心
暴投をすると怒られると思うと怖くて思うように投げられないことがあった (8)
先輩が怖くて思うように投げられないことがあった (6)
監督・コーチが怖くて思うように投げられないことがあった (2)
ボールを投げるのが怖くなったことがある (1)
ミス
大事な場面で暴投をしたことがある (6)
試合になると思うように投げられないことが続いたことがある (4)
暴投をするとペナルティーがあった (2)
投・送球ミスが続いたことがある (2)
怪我をした
怪我をしてから思うように投げられないことが続く (3)
怪我をしてから思うように投げられなくなった (3)
怪我をしてから投げ方がわからなくなった (1)
怪我をしてから投げる感覚が変わった (1)
怪我をさせた 暴投をして相手に怪我をさせた (3)
友人にボールを当ててから思うように投げられない (1)
イップスが
現れる状況
種々の
心理状況
ランナーがいると焦り思うように投げられない (4)
プレッシャーがかかると思うように投げられない (3)
投・送球するのが怖くなると思うように投げられない (2)
考えすぎて思うように投げられない (2)
近距離
投・送球距離が近いと思うように投げられない (24)
塁間が思うように投げられない (3)
返球が思うように投げられない (2)
軽く投げる距離で思うように投げられない (1)
時間的余裕
捕球してから送球するまでに余裕があると思うように投げられない (2)
考える時間があると思うように投げられない (2)
すぐに投げないと思うように投げられない (1)
投げるまでに時間があると投・送球ミスをする (1)
相手
投・送球相手によって思うように投げられない (8)
誰かに見られていると思うように投げられない (1)
先輩が見ていると思うように投げられない
投げる相手が先輩のとき思うように投げられない ††
試合や
ピンチ
試合になると投・送球ミスが起こる (3)
ピンチになると思うように投げられない (3)
試合や練習で,ここぞという場面で思うように投げられない ††
公式戦など重要な試合のとき,思うように投げられない ††
全ての状況
誰が相手でも投げられない (2)
普段から思うように投げられない (1)
全ての状況で思うように投げられない (1)
投・送球の仕方がわからない (1)
答が得られた.それらの回答の整理を行った結果,
『力の制御不全』『動作の制御不全』『震え』『感
覚異常』『悪いイメージ』『動作変化なし』の 6
つのカテゴリーに集約された.さらに,『動作の
制御不全』および『悪いイメージ』『感覚異常』
では賀川・深江2013,内田(2008)で用いら
れている症状に関連する質問項目を追加した.ま
た,今回の自由記述からは回答が得られなかった
ものの,先行研究で報告されている『緊張不安』
『羨望』『心理面』に関する項目を 4項目ずつ追
加した.以上の手続きより,『動作の制御不全』『力
の制御不全』『悪いイメージ』『感覚異常』『震
え』『動作変化なし』『緊張不安』『羨望』『心
理面』の 9因子を想定した 36 項目を作成した.
以上より,「イップスが発症したきっかけ」14
項目,「イップスが現れる状況」24 項目,「イッ
プスの症状」36 項目を選定し,合計 74 項目のソ
フトボール選手のイップスに関する質問紙を作成
934 稲田ほか
した(表 1-1 および表 1-2).
Ⅲ 調査 2
1. 方法
1.1 データ収集
調査 1と同様にアンケート用紙を配布する前に
各チームの監督に本研究の趣旨と方法を口頭で説
明し,選手に対する調査協力への同意を得た.そ
の後,主将にも同様の説明を行い,主将を中心に
各チーム内で回答する時間を設けさせて実施し
た.回答は任意であること,無記名での調査であ
ること,回答内容や個人情報は厳正に管理および
保管されることをアンケート用紙の冒頭に記載
し,質問に回答することをもって調査協力への同
意とみなした.なお,以下の調査 2については著
者らの所属機関における人を対象とする研究等倫
理審査の承認(承認番号 18-46)を得たうえで実
施した.
表 1-2 ソフトボール選手のイップスの評価尺度における想定因子と質問項目
イップスの
症状
動作の
制御不全
ボールを持ちすぎて手から離れなくなる (4)
ボールを離すタイミングがわからなくなる (3)
軽く投げられない *
投・送球動作時に,手が止まる感じがする
力の制御不全
手や腕に力が入りすぎる (13)
無意識に手や腕に力が入る (13)
手や腕に力が入らない (7)
握力がなくなるように感じる (1)
悪い
イメージ
投・送球時にミスをした時のことを思い出す (1)
投・送球の悪いイメージが浮かぶ (1)
ボールを持つと暴投をイメージする
投げる相手の背後にフェンスがないと,暴投のイメージが浮かぶ
感覚異常
体がフワーっとした感じになる (1)
自分の手ではない感覚になる (1)
ボールを持つ手の感覚が薄れる (1)
投げる相手の後ろがやけに広く見える
震え
ボールを持つと手が震える (5)
投・送球時に手が震えて思うように投げられない (5)
震えて上手く力のコントロールができなくなる (5)
手が震えて暴投になる (5)
動作変化
なし
投・送球動作に変化はないが,思うように投げられない (2)
投・送球動作はできるが,思うように投げられない (2)
投・送球フォームは崩れていない (2)
ボールのリリースの仕方はいつもと同じである (2)
緊張・不安
暴投した時の周りの評価が気になる
暴投すると,途中交代するのではないかと思う
投げることを考えると心理的に緊張する
暴投すると,仲間をがっかりさせるのではないかと不安に思う
羨望
なぜ周りの選手は思うように投げられるのかと思う
投・送球において,周りの選手がうらやましい
周りの選手のように,思うように投げられたらと思う
投・送球において思い通りに投げられる選手を見るとうらやましく思う ††
心理面
投・送球をする場面から逃げ出したくなる
暴投すると,ゆううつな気持ちになる
投・送球について自信が持てない
投げることが怖い
は内田 2008 を参考にした項目.†† は賀川・深江(2013)を参考にした項目.
括弧内の数字は自由記述で得られた回答の度数.
935
ソフトボールにおけるイップスのリスク評価尺度
1.2 調査対象者
本調査では,性別,年代,競技レベルを問わず
にソフトボール選手のイップスの評価尺度を作成
することを狙いとしたため,性別や競技レベルは
考慮せずに高校生,大学生,実業団を含む社会人
のソフトボールチームに所属する男女 523 名にア
ンケートを配布した.365 部の回答が得られ(回
収率 69.8%欠損があったデータを除く 345 名( 有
効回答率 66.0%平均年齢 20.0 ±5.2 歳,男性 111
名,女性 233 名,性別の解答欄に記入漏れ 1名)
を分析対象とした.年代の記入漏れがあった 12
名を除く分析対象者の内訳は,高校生 151 名( 16.2
±0.9 歳),大学生 90 名(19.7 ±1.2 歳),社会人
92 名(26.5 ±8.5 歳)であった.表 2には,調査
対象者の属性として現在の主なポジション,チー
ム内での立場,以下の基準にて判別されたイップ
スの有無の人数を高校生,大学生,社会人別に示
した.ポジションについては複数回答可とした.
1.3 イップスの判別
本調査では,賀川深江(2013)や 内田(2008
における判別に倣い,「これまでのソフトボール
人生においてある日突然自分の思い通りに投げら
れなくなり,(投げるたびにではないが)相手が
完全に捕球できないような暴投(上下・左右とい
った方向)が続いたことがあるか」という質問に
対し「はい」「いいえ」の 2択で尋ねた.そして,
本調査では先の質問に無回答であったが以下の質
問項目は選択回答している 7名を除き,「はい」
と回答した 103 名をイップス群,「いいえ」と回
答した 235 名を非イップス群と分類した.また,
「はい」と回答した者にはその時のことを回想さ
せ,「いいえ」と回答した者にはこれまでのソフ
トボール経歴全般について回想させ,以下の質問
項目への回答を求めた.
1.4 調査内容
調査 1で作成した「イップスが発症したきっか
け」14 項目,「イップスが現れる状況」24 項目,「イ
ップスの症状」36 項目の合計 74 項目を尋ねた.
各質問項目に対してどの程度経験したことがある
かについて,1(まったくない)から 5(いつもある)
までの 5件法で回答を求めた.
1.5 統計解析
はじめに「イップスが発症したきっかけ」「イ
ップスが現れる状況」「イップスの症状」の全項
目について,それぞれの得点の平均値を基準に上
位群下位群に分割して実施する G-P 分析(Good-
Poor Analysis)による項目分析を行った.項目分
析後,「イップスが発症したきっかけ」「イップ
スが現れる状況」「イップスの症状」について探
索的因子分析を行った.はじめに 3側面それぞれ
因子数を決定せずに因子分析を行い,その後最尤
法プロマックス回転による分析を行った.そこ
で,固有値が 1.0 以上であること,各因子におい
て因子負荷量が .40 以上の項目が 3項目以上抽出
されていること,他の因子に .40 以上の因子負荷
量がないこと,解釈可能性などから因子数や各因
子を構成する質問項目を決定し,各因子名を著者
ら全員で同意が得られるまで協議し命名した.ま
た,上記の因子分析によって得られた各因子につ
いて,信頼性を検討するために内的整合性を示す
Cronbach α係数を求め,基準値を .70 以上とし
ポジション チーム内での立場 イップスの有無
投手 内野手 外野手 レギュラー
準レギュラー(ベンチ入り)
非レギュラー その他 有 無 その他
高校生(151 名)
男:69 名,女:82 2894727562113391075
大学生(90 名)
男:18 名,女:72 245037373516226640
社会人(92 名)
男:20 名,女:71 22483643394636542
表2 調査 2の対象者の属性
936 稲田ほか
た(徳永,2002).
その後,探索的因子分析によって得られた「イ
ップスが発症したきっかけ」「イップスが現れる
状況」「イップスの症状」のデータの適合度を共
分散構造分析による確認的因子分析を実施し,3
側面のそれぞれを構成する因子の構成概念妥当性
を調べた.確認的因子分析では,モデル検証の
指標として GFIGoodness of Fit Index: 適合度指
標 ), AGFIAdjusted GFI: 修正適合度指標)CFI
Comparative Fit Index: 比較適合度指標)RMSEA
Root Mean Square Error of Approximation: 平均二
乗誤差平方根)を利用した.GFIAGFICFI は,
データ件数の影響を受けない指標で値が 1に近い
ほどデータへの当てはまりが良いと判断し(豊田,
2007受容の判定は .90 以上とされている(西岡
村山,2014.また,RMSEA .05 以下であれば
当てはまりがよく .10 以上であれば当てはまりが
良くないと判断される(山本・小野寺2000).
したがって,本調査では GFIAGFICFI につい
ては .90 以上を基準値とした.そしてRMSEA
.05 以下を基準値とした.
最後に,「イップスが発症したきっかけ」「イ
ップスが現れる状況」「イップスの症状」のそれ
ぞれ 3側面について,上記の探索的因子分析によ
って得られた各因子への回答値(各因子を構成す
5件法の質問項目への回答の合計得点の平均)
を従属変数とした多変量分散分析(MANOVA
を実施し,イップス群と非イップス群の回答値の
差を調べた.そして多重比較も行うことで,3
面を構成する各因子についてもイップス群と非イ
ップス群の回答値の差を調べた.これらの分析に
より,イップスの発症に対して本調査で得られた
各因子の予測的妥当性を検討した.これらの分
析には SPSS ver.21 及び SPSS Amos ver.25 を用い,
有意水準は 5% 未満とした.
2. 結果
2.1 項目分析
G-P 分析を行った結果,「イップスが発症した
きっかけ」14 項目,「イップスが現れる状況」24
項目,「イップスの症状」36 項目のすべてにおい
て上位群の得点が下位群よりも有意に高かったこ
とが認められたため(ps<.01,全ての項目を分
析に使用した.
2.2 探索的因子分析
「イップスが発症したきっかけ」では,3因子
構造を持つ 11 項目が抽出された.そして,各因
子を構成している質問項目の内容から因子の解
釈,命名を行った.以降では,因子分析によって
得られた因子を『 』因子を構成する項目を[ ]
で示す.第 1因子は[怪我をしてから思うように
投げられなくなった]や[怪我をしてから投げる
感覚が変わった]など自身の怪我によるきっかけ
を示す項目で構成されたことから『怪我』と命
名した.第 2因子は[大事な場面で暴投をした]
や[投・送球ミスが続いたことがある]といった
投・送球時のミスによるきっかけを示す項目で構
成されたことから『ミス』と命名した.第 3因子
は[監督・コーチが怖くて思うように投げられな
い]や[先輩が怖くて思うように投げられない]
といった投・送球時に恐怖心を抱いた経験による
きっかけを示す項目で構成されたことから『恐怖
心』と命名した.これらの 3因子での累積寄与率
53.69% であった(表 3).
「イップスが現れる状況」では,3因子構造を
持つ 18 項目が抽出された.第 1因子では,[試合
や練習試合で,ここぞという場面で思うように投
げられない]や[ピンチになると思うように投げ
られない]といったイップスがプレッシャー状況
で現れることを示す項目で構成されたことから
『重要度が高い場面』と命名した.第 2因子では,
[普段から思うように投げられない]や[塁間が
思うように投げられない]といった様々な外的要
因の影響を受ける状況を示す項目で構成されてい
たことから『普段の場面』と命名した.第 3因子
では,[投・送球相手によって思うように投げら
れない]や[投・送球するのが怖くなると思うよ
うに投げられない]といった投・送球時の様々な
内的要因が影響する状況を示す項目で構成された
ことから『特定の相手・間・距離の場面』と命名
した.これらの 3因子での累積寄与率は 61.95%
937
ソフトボールにおけるイップスのリスク評価尺度
表3 「イップスが発症したきっかけ」に関する 3因子とそれらを構成する質問項目と因子負荷量
 F1 F2 F3
1因子 怪我(α=.94    
怪我をしてから思うように投げられなくなった .951 -.022 -.049
怪我をしてから投げる感覚が変わった .917 .070 -.109
怪我をしてから投げ方がわからない .886 -.045 .082
怪我をしてから思うように投げられないことが続く .825 -.036 .093
2因子 ミス α=.79   
大事な場面で暴投をした -.078 .803 -.112
投・送球ミスが続いたことがある .029 .736 .064
試合になると思うように投げられない .034 .699 .052
3因子 恐怖心 α=.72    
監督・コーチが怖くて思うように投げられない -.102 -.107 .886
先輩が怖くて思うように投げられない .042 .098 .518
暴投をすると怒られると思うと怖くて思うように投げられないことがあった .040 .292 .485
友人にボールを当ててから思うように投げられない .152 -.026 .423
因子間相関                           1因子 2因子 3因子
                          第 1因子 - .344 .458
2因子 - - .628
 第 3因子 ---
表4 「イップスが現れる状況」に関する 3因子とそれらを構成する質問項目と因子負荷量
F1 F2 F3
1因子 重要度が高い場面 (α=.90)
試合や練習試合で,ここぞという場面で思うように投げられない .868 .089 -.096
ピンチになると思うように投げられない .811 .054 -.004
試合になると投・送球ミスが起こる .795 -.045 .035
ランナーがいると焦り思うように投げられない .702 -.017 .058
プレッシャーがかかると思うように投げられない .620 -.017 .233
2因子 普段の場面 (α=.91)
普段から思うように投げられない .030 .867 -.053
塁間が思うように投げられない -.023 .850 -.032
全ての状況で思うように投げられない .159 .721 .027
投・送球の仕方がわからない -.180 .637 .364
返球が思うように投げられない .281 .585 .005
誰が相手でも思うように投げられない .014 .525 .244
3因子 特定の相手・間・距離の場面 (α=.90)
投・送球相手によって思うように投げられない -.024 .030 .766
投・送球するのが怖くなると思うように投げられない .102 .061 .728
投げる相手が先輩のとき思うように投げられない -.092 .108 .664
考える時間があると思うように投げられない .202 -.067 .633
考えすぎて思うように投げられない .214 .070 .603
投げるまでに時間があると投・送球ミスをする .232 .040 .514
軽く投げる距離で思うように投げられない -.001 .333 .445
因子間相関 1因子 2因子 3因子
                       第 1因子 -.687 .737
2因子 - - .768
3因子 ---
938 稲田ほか
であった(表 4).
「イップスの症状」では,4因子構造を持つ 27
項目が抽出された.第 1因子では,[ボールを持
つと手が震える]や[投・送球時に手が震えて思
うように投げられない]といった投・送球時の身
体症状を示す項目で構成されたことから『震え』
と命名した.第 2因子では,[手や腕に力が入り
すぎる]や[投・送球動作に変化はないが,思う
ように投げられない]といった動作を上手く遂行
できていない感覚を示す項目で構成されたことか
ら『イメージや動作の不全』と命名した.第 3
子では,[暴投すると,仲間をがっかりさせるの
ではないかと不安に思う]や[暴投すると,途中
交代になるのではないかと思う]といった予期不
安を示す項目で構成されたことから『予期不安』
と命名した.第 4因子では,[投・送球において,
周りの選手がうらやましい]や[周りの選手のよ
うに,思うように投げられたらと思う]といった
表5 「イップスの症状」に関する 4因子とそれらを構成する質問項目と因子負荷量
 F1 F2 F3 F4
1因子 震え(α =.93)     
ボールを持つと手が震える .965 -.101 -.024 -.019
投・送球時に手が震えて思うように投げられない .917 -.113 -.104 .097
震えて上手く力のコントロールができなくなる .867 -.014 -.003 -.074
ボールを持つ手の感覚が薄れる .795 .072 -.101 .086
手や腕に力が入らない .751 -.045 .037 .127
体がフワーっとした感じになる .706 .102 .057 -.133
自分の手ではない感覚になる .684 .225 .008 -.073
投げる相手の後ろがやけに広く見える .634 -.024 .138 .012
握力がなくなるように感じる .567 .001 .107 -.072
2因子 イメージや動作の不全(α=.95    
手や腕に力が入りすぎる -.079 .855 .098 -.138
投・送球動作に変化はないが,思うように投げられない -.059 .765 -.135 .188
ボールを離すタイミングがわからなくなる .098 .749 -.109 .098
投・送球動作はできるが,思うように投げられない .019 .713 -.089 .225
無意識に手や腕に力が入る .093 .691 .140 -.116
投・送球の悪いイメージが浮かぶ .060 .613 .239 .026
投げることを考えると心理的に緊張する .083 .610 .224 .015
投げることが怖い .330 .494 .049 .032
ボールを持ちすぎて手から離れなくなる .289 .449 -.013 .119
ボールを持つと暴投をイメージする .305 .414 .102 .041
3因子 予期不安(α=.88    
暴投すると,仲間をがっかりさせるのではないかと不安に思う .086 -.102 .809 .134
暴投すると,途中交代になるのではないかと思う .027 -.067 .799 .042
暴投したときの周りの評価が気になる -.036 .099 .704 .048
暴投すると,ゆううつな気持ちになる -.033 .169 .619 .024
4因子 羨望(α=.93    
投・送球において,周りの選手がうらやましい .030 -.096 .108 .922
周りの選手のように,思うように投げられたらと思う -.008 .134 -.042 .833
投・送球において思い通りに投げられる選手を見ると羨ましく思う -.098 .001 .249 .687
なぜ周りの選手は思うように投げられるのかと思う .008 .276 .139 .546
因子間相関                         1因子 2因子 3因子 4因子
                        1因子 -.752 .566 .538
2因子 - - .742 .736
3因子 ---.716
4因子 ----
939
ソフトボールにおけるイップスのリスク評価尺度
周囲の選手に対する羨望を示す項目で構成されて
いたことから『羨望』と命名した.これらの 4
子での累積寄与率は 61.22% であった(表 5).
2.3 信頼性
「イップスが発症したきっかけ」についての各
構成因子の Cronbach α係数は,『怪我』α=.94),
『ミス』α=.79『恐怖心』α=.72)であった
「イップスが現れる状況」については,『重要度が
高い場面』α=.90『普段の場面』α=.91),『 特
定の相手・間・距離の場面』α=.90)であった.
「イップスの症状」については,『震え』α=.93),
『イメージや動作の不全』α=.95『予期不安』
α=.88),『 羨 望 』( α=.93)であった.上記の全て
の因子において .70 以上の値を示し,尺度の内的
整合性が確保されていた.
2.4 構成概念妥当性
「イップスが発症したきっかけ」の確認的因
子分析の結果,モデルの適合度は GFI=.945
AGFI=.911CFI=.964RMSEA=.073 であった
GFIAGFICFI はいずれも適合度指標の基準値
を満たしていたが,RMSEA については基準値を
満たさなかった.
「イップスが現れる状況」のモデルの適合度は
GFI=.882AGFI=.847CFI=.937RMSEA=.079
であった.CFI は基準値を満たしていたが,GFI
AGFIRMSEA については基準値を満たさなかっ
た.
「イップスの症状」のモデルの適合度は
GFI=.833AGFI=.801CFI=.925RMSEA=.074
であった.CFI は基準値を満たしていたが,GFI
AGFIRMSEA については基準値を満たさなかっ
た.
2.5 イップスの発症の予測的妥当性
「イップスが発症したきっかけ」の 3因子に
対する MANOVA の結果,イップス群と非イッ
プス群の間に有意差が認められた(Wilk’s ラム
=.693p<.001f=.666.多重比較を行った
ところ,全ての因子においてイップス群は非イ
ップス群よりも有意に高かった(『怪我』F
1
326=34.89p<.001f=.328『ミス』F
1326
=118.13p<.001f=.602『恐怖心』
F
1326
=69.50p<.001f=.462)( 表 6).
「イップスが現れる状況」の 3因子に対する
MANOVA の結果,イップス群と非イップス群の
間に有意差が認められたWilk’s ラムダ =.671
p<.001f=.686.多重比較の結果,イップス群
は非イップス群に比べて全因子の得点が有意
に高かった『重要度が高い場面』F
1332
=73.56p<.001f=.470『普段の場面』
F
1
表 6 「イップスが発症したきっかけ」「イップスが現れる状況」「イップスの症状」の各因子におけるイップス群
と非イップス群の得点の平均と標準偏差
イップス群 非イップス群
Mean SD Mean SD F
イップスが発症
したきっかけ
怪我 9.29 5.14 6.46 3.38 34.89 ***
ミス 10.03 2.35 7.10 2.21 118.13 ***
恐怖心 8.29 3.11 5.86 2.07 69.50 ***
イップスが現れる
状況
重要度が高い場面 14.01 4.73 9.88 3.65 73.56 ***
普段の場面 13.67 5.38 8.61 3.22 113.70 ***
特定の相手・間・距離の場面 17.57 6.11 10.70 3.87 115.8 ***
イップスの症状
震え 17.13 8.0 11.60 3.57 36.72 ***
イメージや動作の不全 27.8 10.11 15.37 5.68 91.25 ***
予期不安 12.16 4.70 8.57 3.70 26.13 ***
羨望 13.48 5.13 8.05 4.29 41.16 ***
***p < .001
940 稲田ほか
332=113.70p<.001f=.539『特定の相手・間・
距離の場面』F
1332=115.79p<.001f=.684
(表 6).
「イップスの症状」4因子に対する MANOVA
の結果,イップス群と非イップス群の間に有意差
が見られ(Wilk’s ラムダ =.624p<.001f=.516),
多重比較によれば,イップス群は非イップス群よ
りも全因子の得点が有意に高かった『震え』 F
2
328=36.72p<.001f=.473『イメージや動作の
不全』F
2328=91.25p<.001f=.745『予期
不安』F
2328=26.13p<.001f=.398『羨望』
F
2328=41.16p<.001f=.502)( 表 6.した
がって「イップスが発症したきっかけ」3因子,
「イップスが現れる状況」の 3因子,「イップスの
症状」の 4因子はイップスの発症に対する予測的
妥当性を有することが示された.
Ⅳ 考 察
本研究では,ソフトボール選手における「イ
ップスが発症したきっかけ」「イップスが現れ
る状況」「イップスの症状」の構成概念を明ら
かにすることで,ソフトボール選手のイップス
を発生させるリスクを詳細に把握するためにイッ
プスの多面的リスク評価尺度を作成することを
目的とした.混合研究法による質的および量的
2つの調査を通じて逐次的にデータを収集し,
内的整合性,構成概念妥当性,予測的妥当性を検
討し,因子構造に対する信頼性と妥当性を確認し
た.そして,「イップスが発症したきっかけ」11
項目,「イップスが現れる状況」18 項目「イッ
プスの症状」27 項目で構成されるソフトボール
のイップスの多面的リスク評価尺度を作成した.
「イップスが発症したきっかけ」に関する下位
尺度は,『怪我』『ミス』『恐怖心』の 3因子で
構成され,ソフトボールでのイップスの発症は
これらに起因することが示された.『怪我』につ
いては,高校生野球部員では肩あるいは肘とい
った上肢に障害歴を有する選手は 72%(藤井ほ
か,2003)や 57%(鳥塚ほか,2001)存在する
ことが報告されているものの,怪我によるきっ
かけでイップスを患っているという報告は野球
競技を対象とした西野ほか(2006)以外には見
当たらない.[怪我をしてから思うように投げら
れなくなった][怪我をしてから投げる感覚が
変わった]などの項目のように,怪我に起因す
る動作の制御不全や身体感覚の変化がイップス
発症の原因となることが示唆された.
『ミス』については,野球においても暴投の経
験がイップスの発症に関連することが述べられ
ており(向,2016,ソフトボール選手も同様に
投・送球ミスの経験によってイップスを発症さ
せていると言える.また,送球ミスをすると野
次られる経験(向2016)や暴投をするとキャ
ッチボール相手が激しく怒るといった経験(松
田ほか,2018)がイップスの発症理由として報
告されており,選手自身のミスの経験だけでな
く,ミスを起こした選手に対して過剰な叱責や
不必要な野次がイップスに繋がる可能性が推察
される.『恐怖心』についても,投・送球に対
して恐怖心を抱く経験だけでなく,指導者,先
輩に対して恐怖心を抱くという項目も抽出され
た.恐怖は,「凍結不動」「逃避回避」「攻撃」
「服従譲歩」の 4種の反応を引き起こす(大平,
2010.投・送球結果や対人に対して恐怖心を抱
くことによって,投・送球場面を避けようとす
ることや(「逃避・回避」,身体が硬直する反応
「凍結・不動」)がイップスの発症に繋がると考
えられる.
そして,「イップスが発症したきっかけ」の 3
因子 11 項目を基に,ソフトボールにおけるイッ
プスの予防に対していくつかの提案を行うこと
ができる.先ず,怪我からの復帰時には動作や
身体感覚に対する違和感を考慮しながら慎重に
復帰を進めることが挙げられる.次に,投・送
球ミスに対して投・送球を受ける相手,指導者,
チームメイトなどが過剰な叱責,野次,怒りを
減らすことや,キャッチボールの相手を固定し
ないなど,投・送球ミスが多い選手が抱く恐怖
心を軽減させる周囲の支援も必要と考えられる.
「イップスが現れる状況」に関する下位尺度
は,『重要度が高い場面』『普段の場面』『特定
941
ソフトボールにおけるイップスのリスク評価尺度
の相手・間・距離の場面』の 3因子で構成され
た.スポーツの競技場面で選手が感じるプレッ
シャーには,他者評価や観衆,罰,報酬,時間
切迫などがあり(村井,2010先行研究でもプ
レッシャーによるイップスの発症が多く報告さ
れている(石原・内田,2017;西野ほか,2006
Smith et al., 2003;内田,2008.ソフトボールは
捕球から送球までを短時間で行うことが求めら
れるため,それに伴う時間切迫,さらには,試
合の重要性,得点やランナーの有無などの投
送球に対してより正確性を求められる状況がイ
ップスの発症に関連すると考えられる.
『普段の場面』では,塁間という特定の状況が
含まれた一方,[普段から思うように投げられな
い]や[誰が相手でも思うように投げられない]
などのように全ての状況を表す項目も多く含ま
れていた.『特定の相手・間・距離の場面』につ
いては,イップスに陥りやすい選手の特徴とし
て予期不安が挙げられているが(岩田・長谷川,
1981;中込,1987,本研究では[投・送球する
のが怖くなると思うように投げられない]のよ
うな不安が誘発される状況以外にも,[考える時
間があると思うように投げられない]や[投げ
るまでに時間があると投・送球ミスをする]な
どのように,投・送球時に意識的に動作を制御
しやすくする状況も関連することが示された.
「イップスの症状」に関する下位尺度は,『震
え』『イメージや動作の不全』『予期不安』『羨
望』の 4因子で構成された.本研究ではイップ
スの心理的症状だけでなく身体的症状にも着目
し,両症状の抽出を行った.心理的症状につい
て先行研究では,野球,クリケット,ゴルフ選
手における不安,恐怖,苛立ち,自信喪失,混乱,
動作の意識的制御,羨望などが報告されている
Bawden and Maynard, 2001; 賀川・深江,2013
Philippen and Lobinger, 2012; Sacdev, 1992; Stinear
et al., 2006;内田,2008.本研究において抽出
された『予期不安』と『羨望』はこれらの中に
含まれる症状であり,イップスを発症すること
で投・送球への不安を抱くだけでなく,これら
のネガティブな思考や感情を想起しやすくなる
と考えられる.
身体的症状では『震え』や『イメージや動作
の不全』の下位尺度が抽出された.イップスの
身体的症状には,つっぱり・こわばり感(jerk),
筋痙攣・突然の筋収縮(spasm,振戦(tremor),
硬直freezingなどがありClarke et al., 2015; 権・
望月,2017,筋活動や動作の制御不全が生じて
いると考えられる.イップスと筋活動の関連に
ついて,ゴルフのパッティングイップスを有す
る選手では前腕や上腕の筋活動が大きいことや
Smith et al., 2000; Stinear et al., 2006,前腕屈筋
と前腕伸筋の共収縮が起きることが報告されて
いる(Adler et al., 2011.ソフトボールの投・送
球時においても,大きい筋活動や共収縮が起き,
[手や腕に力が入りすぎる]や[無意識に手や腕
に力が入る]のような症状に繋がると考えられ
る.
動作に関しては,[ボールを離すタイミングが
わからなくなる][ボールを持ちすぎて手から
離れなくなる]のようにリリースのタイミング
の制御不全に関する項目が抽出された.イップ
スを有するクリケット投手も同様にボールのリ
リースタイミングが分からなくなることを述べ
ておりBawden and Maynard, 2001,投・送球
イップスにはリリースのタイミングの制御不全
が関連する可能性が提案できる.その他にも
[投・送球の悪いイメージが浮かぶ][ボールを
持つと暴投をイメージする]のように失敗イメ
ージを想起することや,[投・送球動作に変化は
ないが,思うように投げられない][投・送球
動作はできるが,思うように投げられない]の
ように動作に原因を帰属できないことを示す項
目も含まれた.
「イップスが発症したきっかけ」を構成する 3
因子 11 項目,「イップスが現れる状況」を構成
する 3因子 18 項目,「イップスの症状」を構成
する 4因子 27 項目の累積寄与率はそれぞれにお
いて 50% 以上を示した.因子内項目の内的整合
性を確認したところ,高い信頼性も認められた.
3側面のそれぞれに対して構成概念妥当性を調べ
たところ,CFI のみ適合度指標の基準値を満たし
942 稲田ほか
ていた.予測的妥当性に関しては,3側面の全て
の因子においてイップス群は非イップス群より
も高得点を示した.これらの結果から,本研究
では「イップスが発症したきっかけ」「イップ
スが現れる状況」「イップスの症状」の 3側面
から成るイップスを発生させるリスクを定量化
するソフトボールにおけるイップスの多面的リ
スクの因子構造が確認された.
今後は,本研究により得られた尺度の妥当性
のさらなる検討,および尺度の実用性を図るた
めの研究を進めていくことが望まれる.ソフト
ボールでは,選手や他者の主観的評価でイップ
スの有無の判断が行われている現状にあるが,本
評価尺度を利用することで,3側面の客観的数値
も含めてイップスの発生リスクの評価が可能にな
る.例えば,選手自身や他者の主観的評価ではイ
ップスを有すると判断できない選手が本評価尺度
3側面のいずれかもしくはいくつかの値におい
て高値を示した場合には,イップスの発症のリス
クが高いことを意味し,早期の予防を行うことに
繋がる.また,自己や他者の判断によってイッ
プスと認識していながらも,本評価尺度の 3
面の値において低値を示した場合には,投球・送
球ミスの原因についてイップス以外の要因も考慮
することが提案できる.
次に,投・送球イップスを発生させるリスク
を正確に評価するための尺度として,構成概念
妥当性のさらなる改善も今後の研究課題と言え
る.調査 2で抽出された「イップスが発症した
きっかけ」「イップスが現れる状況」「イップ
スの症状」の因子構造について, 適合度指標の
CFI に関しては基準を満たす値を示した.しか
しながら,「イップスが発症したきっかけ」の
RMSEA「イップスが現れる状況」と「イップ
スの症状」の GFIAGFI,及び RMSEA に関し
ては基準未満の値を示した.本研究では,同一
調査対象者内で探索的因子分析と確認的因子分
析を行ったが,今後の研究では別のサンプルを
対象に,本研究で作成された質問項目のみを用
いた調査を行い,確認的因子分析の実施により
構成概念妥当性をさらに高める必要がある.
さらに,本評価尺度の得点と投・送球の正確
性の関係を調べる実験によって,本評価尺度の
得点の高さによって投・送球の不正確さを説明
できるかについて検討を行うことも求められ
る.その際に,投球腕の筋電の記録やモーション
キャプチャによる動作解析を行うことで,本評
価尺度の得点と筋活動や動作の関係も調べられ
る.このような研究を行うことで,イップスの
発症機序を上述したような力やリリースタイミ
ングの制御不全の観点から妥当性の検討と併せ
て検証する必要がある.
また,ソフトボールや野球,クリケットなど
のベースボール型競技全般に対応したイップス
のリスク評価尺度へ発展させることも挙げられ
る.本研究で抽出されたソフトボールにおける
イップスの症状について,野球におけるイップ
スの症状(賀川・深江,2013;内田,2008)と
比較すると,『予期不安』や『羨望』の因子が共
通していた.さらに本研究では心理的症状に加
え,動作の制御不全などの身体的症状も抽出さ
れたが,投・送球におけるリリースのタイミン
グの制御不全に関しては上述の通りクリケット
の投球においても同様であることが示されてい
る(Bawden and Manynard, 2001.このように複
数の研究で報告されている項目を中心に質問紙
を作成し,種々のベースボール型競技に取り組
む選手を対象とした調査を実施することが求め
られる.
Ⅴ まとめ
本研究では,ソフトボールにおける「イップ
スが発症したきっかけ」「イップスが現れる状
況」「イップスの症状」の構成概念を明らかにし,
それを基にソフトボールのイップスを発生させ
るリスクを詳細に把握するための多面的な評価
尺度を作成することを目的とした.混合研究法
の探究的デザイン調査票開発モデルを参考に,調
1では 3側面について質的調査を行うことで調
査票の項目を作成した.調査 2では,調査 1で選
定された質問項目を用いて 3側面それぞれの構成
943
ソフトボールにおけるイップスのリスク評価尺度
概念を明らかにする量的調査を行った.そして,
信頼性や構成概念妥当性,予測的妥当性を検討し
た結果,「イップスが発症したきっかけ」は『怪
我』『ミス』『恐怖心』の 3因子 11 項目,「イ
ップスが現れる状況」『重要度が高い場面』『普
段の場面』『特定の相手・間・距離の場面』の 3
因子 18 項目,「イップスの症状」は『震え』『イ
メージや動作の不全』『予期不安』『羨望』の 4
因子 27 項目で構成され,これらの 3側面の経験
の頻度および程度からイップスのリスクを多面
的に評価する尺度が作成された.また,今後は
さらなる妥当性の検討が必要となる.
文 献
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Published online 2020/10/1
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智隆弘・中川滋人・林田賢治・竹内英二・正富隆・中
( )
945
ソフトボールにおけるイップスのリスク評価尺度
27
付録 1 本研究で作成したイップスの多面的リスク評価尺度
以下の 56 の質問項目に対して,「これまでのソフトボール生活を思い浮かべて,どのくらい経験したことがあるか」について,(1)
まったくない,(2) めったにない,(3) たまにある,(4) たびたびある,(5) いつもあるの 5件法で回答する.111 「イップスが発
症したきっかけ」に関する項目であり,それを構成する 3因子として『怪我』は 15710 4項目,『ミス』は 2483項目
『恐怖心』は 36911 4項目への回答の和によって得点求める.1229 が「イップスが現れる状況」に関する項目であり,
それを構成する 3因子として『重要度が高い場面』は 1216182226 5項目,『普段の場面』は 131520242729
6項目,『特定の相手・間・距離の場面』は 14171921232528 7項目への回答の和によって得点を求める.3056
「イップスの症状」に関する項目であり,それを構成する 5因子として『震え』は 303538414547505256 9項目,
『イメージや動作の不全』は 31343740424446495355 10 項目,『予期不安』 32364351 4項目,『羨
望』 33394854 4項目への回答の和によって得点求める
1. 怪我をしてから思うように投げられなくなった
2. 大事な場面で暴投をした
3. 監督・コーチが怖くて思うように投げられない
4. 投・送球ミスが続いたことがある
5. 怪我をしてから投げる感覚が変わった
6. 先輩が怖くて思うように投げられない
7. 怪我をしてから投げ方がわからない
8. 試合になると思うように投げられない
9. 暴投をすると怒られると思うと怖くて思うように投げられ
ないことがあった
10. 怪我をしてから思うように投げられないことが続く
11. 友人にボールを当ててから思うように投げられない
12. 試合や練習試合でここぞという場面で思うように投げ
られない
13. 普段から思うように投げられない
14. 投・送球相手によって思うように投げられない
15. 塁間が思うように投げられない
16. ピンチになると思うように投げられない
17. 投・送球するのが怖くなると思うように投げられない
18. 試合になると投・送球ミスが起こる
19. 投げる相手が先輩のとき思うように投げられない
20. 全ての状況で思うように投げられない
21. 考える時間があると思うように投げられない
22. ランナーがいると焦り思うように投げられない
23. 考えすぎて思うように投げられない
24. 投・送球の仕方がわからない
25. 投げるまでに時間があると投・送球ミスをする
26. プレッシャーがかかると思うように投げられない
27. 返球が思うように投げられない
28. 軽く投げる距離で思うように投げられない
29. 誰が相手でも思うように投げられない
30. ボールを持つと手が震える
31. 手や腕に力が入りすぎる
32. 暴投すると,仲間をがっかりさせるのではないかと不安
に思う
33. 投・送球において,周りの選手がうらやましい
34. 投・送球動作に変化はないが思うように投げられな
い.
35. 投・送球時に手が震えて思うように投げられない
36. 暴投すると,途中交代になるのではないかと思う
37. ボールを離すタイミングがわからなくなる
38. 震えて上手く力のコントロールができなくなる
39. 周りの選手のように,思うように投げられたらと思う
40. 投・送球動作はできるが思うように投げられない
41. ボールを持つ手の感覚が薄れる
42. 無意識に手や腕に力が入る
43. 暴投したときの周りの評価が気になる
44. 投・送球の悪いイメージが浮かぶ
45. 手や腕に力が入らない
46. 投げることを考えると心理的に緊張する
47. 体がフワーっとした感じになる
48. 投・送球におて思い通りに投げられる選手を見ると
羨ましく思う
49. 投げることが怖い
50. 自分の手ではない感覚になる
51. 暴投すると,ゆううつな気持ちになる
52. 投げる相手の後ろがやけに広く見える
53. ボールを持ちすぎて手から離れなくなる
54. なぜ周りの選手は思うように投げられるのかと思う
55. ボールを持つと暴投をイメージする
56. 握力がなくなるように感じる
付録 1 本研究で作成したイップスの多面的リスク評価尺度
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Article
Full-text available
The yips are a psycho-neuromuscular movement disorder, which affects sports in which fine motor precision skills are required for success. This review aims to examine key components of the yips within sport literature using a systematic approach. Twenty-five published studies were used in the systematic review, the majority of which focused on the yips in golf (n = 18); case studies were the most popular methodological approach (n = 12). Four components of the yips were identified: psychological, physiological, neurological and performance. This review describes evidence associated with each component according to research design, sample characteristics and main findings. Key findings associated with each component are evaluated and gaps within the existent literature are highlighted. It is concluded that future research incorporates a multi-discipline theory-driven approach on a wider range of sports using a more precise definition of yips types in order to enhance our understanding of the predictors and mechanisms of the yips which, in turn, will allow practitioners to develop effective interventions for athletes.
Article
Full-text available
Paradoxical performance can be described simply as a sudden decrease in a top athlete’s performance despite the athlete’s having striven for superior performance, such as the lost-skill syndrome in trampolining or “the yips” in golf. There is a growing amount of research on these phenomena, which resemble movement disorders. What appears to be missing, however, is a clear phenomenology of the affected movement characteristics leading to a classification of the underlying cause. This understanding may enable specific diagnostic methods and appropriate interventions. We first review the different phenomena, providing an overview of their characteristics and their occurrence in sports and describing the affected sports and movements. We then analyze explanations for the yips, the most prominent phenomenon, and review the methodological approaches for diagnosing and treating it. Finally, we present and elaborate an action theoretical approach for diagnosing paradoxical performance and applying appropriate interventions.
Article
The present study aimed to explore the psychological growth achieved by athletes during coping with the yips. We interviewed six university baseball players (mean age=21.0 years, SD=1.15 years) who experienced the yips using the episode interview method and then gathered narrative data related to the experience of the yips or the psychological growth accompanying the same. As a result of analysis of the data, it was roughly divided into two types of narratives: “narratives of negative psychological changes accompanying the experience of the yips” and “narratives of psychological growth accompanying the experience of the yips.” Further analysis of the latter yielded the following five category groups on psychological growth: “positive changes in consciousness of competition,” “changes in self-recognition,” “mental margin,” “changes in the views of a way of others,” and “deepening of understanding of competition.” These results suggest that the experience of the yips leads to negative as well as positive psychological changes in the athlete.
Article
Background: In this study, we attempted to determine the connection between throwing injuries, especially to the shoulder or elbow, and the amount of pitching practice, in high-school pitchers. Methods: We distributed questionnaires to 67 high-school baseball pitchers and had them answer questions on the following: their sports career, past sport-related injuries, the amount of baseball practice per day and per week, the number of throws per day, and the number of non-throwing day per week. Using an unpaired T-test, we looked for statistical relationships between throwing injuries and the above factors. Results: Of the 67 cases that answered our questionnaire, 53 (79.1%) answered that they had suffered sports-related injuries in their careers. Of these, 48 (71.6%) had suffered throwing injuries to the shoulder or elbow. Our examination showed that 34 pitchers (50.7%) currently had derangement of the shoulder or elbow, and the questionnaires showed that these pitchers had spent much more time practicing throwing in elementary school and junior high school than those without these problems. Conclusion: Excessive throwing practice in elementary school and junior high school may lead to derangement of the shoulder or elbow.
Article
The yips in golf is the interruption of a smooth putting movement by an involuntary jerk or freezing of the arm. Psychological factors seem to worsen the phenomenon. However, published data on how the yips in golf is cognitively and emotionally experienced are very limited. Moreover, the focus of attention in yips-affected golfers has not been investigated. Thus, we interviewed 17 yips-affected golfers to record the thoughts and feelings that are experienced in a situation in which the yips occurs. In addition, we asked them about their focus of attention right before putting. Content analysis revealed a negative cognitive and emotional pattern for all golfers. Furthermore, 11 participants reported focusing either internally or on possible mistakes. The results contribute to an understanding of the yips in golf and provide a starting point for further investigations into possible interventions for the yips.
Article
Background: The ‘yips’ is a psychoneuromuscular impediment affecting execution of the putting stroke in golf. Yips symptoms of jerks, tremors and freezing often occur during tournament golf and may cause performance problems. Yips-affected golfers add approximately 4.7 strokes to their scores for 18 holes of golf, and have more forearm electromyogram activity and higher competitive anxiety than nonaffected golfers in both high and low anxiety putting conditions. The aetiology of the yips is not clear. Objective: To determine whether the yips is a neurological problem exacerbated by anxiety, or whether the behaviour is initiated by anxiety and results in a permanent neuromuscular impediment. Methods: In phase I, golf professionals assisted investigators in developing a yips questionnaire that was sent to tournament players (
Article
The definition of the ‘yips’ has evolved over time. It is defined as a motor phenomenon of involuntary movements affecting golfers. In this paper, we have extended the definition to encompass a continuum from the neurologic disorder of dystonia to the psychologic disorder of choking. In many golfers, the pathophysiology of the ‘yips’ is believed to be an acquired deterioration in the function of motor pathways (e.g. those involving the basal ganglia) which are exacerbated when a threshold of high stress and physiologic arousal is exceeded. In other golfers, the ‘yips’ seems to result from severe performance anxiety. Physically, the ‘yips’ is manifested by symptoms of jerks, tremors or freezing in the hands and forearms. These symptoms can result in: (i) a poor quality of golf performance (adds 4.9 strokes per 18 holes); (ii) prompt use of alcohol and β-blockers; and (iii) contribute to attrition in golf. Golfers with the ‘yips’ average 75 rounds per year, although many ‘yips’-affected golfers decrease their playing time or quit to avoid exposure to this embarrassing problem. While more investigation is needed to determine the cause of the ‘yips’, this review article summarises and organises the available research. A small study included in this paper describes the ‘yips’ phenomenon from the subjective experience of ‘yips’-affected golfers. The subjective experience (n = 72) provides preliminary support for the hypothesis suggesting that the ‘yips’ is on a continuum. Based on the subjective definitions of 72 ‘yips’-affected golfers, the ‘yips’ was differentiated into type I (dystonia) and type II (choking). A theoretical model provides a guide for future research on golfers with either type I or type II ‘yips’.
Article
This study compared golfers with and without the yips using joint movement and surface electromyographic detectors. Fifty golfers (25 with and 25 without complaints of the yips) were studied while putting. All putts were videotaped. Surface electromyography assessed arm cocontraction. A CyberGlove II (Immersion Technologies, Palo Alto, CA) assessed right-arm angular movements. Primary analysis was done by subjective complaint of the yips, whereas secondary analysis was done by video evidence of an involuntary movement. When grouped by subjective complaints, there were no differences in any movement parameter. When grouped by video evidence of an involuntary movement, yips cases had more (P < 0.001) angular movement in wrist pronation/supination and a trend (P = 0.08) for wrist flexor/extensor cocontraction (yips: 7 of 17, 41.2%; no yips: 6 of 33, 18.2%). Golfers with video evidence of an involuntary movement while putting have excessive rotation of the right wrist in a pronation/supination motion and, as previously reported, a trend for wrist flexor/extensor cocontraction.
Article
The clinical characteristics of 20 golfers suffering from golfers' cramp or the "yips" are described. The typical description is that of a middle-aged golfer who has played competitive golf since his teens and develops the problem during a tournament in the form of a jerk, spasm, or freezing of movement while putting or chipping, with the rest of the game being relatively unaffected. The problem generally takes a chronic fluctuating course, and a number of 'trick' strategies are partially or fully successful. In this study, the subjects were compared with a matched group of 20 unaffected golfers on a number of indices of psychopathology; no significant differences emerged. The more severely affected golfers also did not differ significantly from the mildly affected ones, except on the subjective report of anxiety. These data support the argument that golfers' cramp is not an anxiety disorder or a neurosis. The important role of anxiety and arousal in its manifestation is, nevertheless, recognized and its pathophysiology speculated upon.