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国際医療福祉大学 医療福祉学部 医療福祉・マネジメント学科
海老原 諭 | ebiharas@iuhw.ac.jp
平成27年改正「医療法」の会計公告規制適用対象となりうる
栃木県内医療法人の実態調査
―平成27年度決算情報をもとに―
研究の背景 会計規制が適用される医療法人の規模
平成27年9月,「医療法の一部を改正する法律」 (平成27年9月28日法律第
74号)が成立した。一定規模を超える医療法人は,平成29年4月2日以降
に開始する事業年度より,公認会計士による監査を受け,計算書類の公告
を行わなければならなくなる。
このたびの 「医療法」 改正のねらいは,医療法人経営の健全化を図ること
にある。しかし,改正法の適用対象が狭く限定されてしまえば,新たな規
定は有名無実なものになりかねない。
目的
栃木県内の医療法人のうち,改正 「医療法」 上
の公認会計士監査および計算書類公告規制の
適用対象となるものがどの程度存在するかを
調査する。
この調査結果は,厚生労働省の定めた規模基
準の妥当性を検討するための基礎資料とする。
調査資料
栃木県内の医療法人が県に届出た
平成27年度に係る事業報告書等
栃木県庁県民プラザにて閲覧
平成28年8 月5 日
調査日
対 象
入手方法
1事業報告書等届出数 (社会医療法人を除く)
事業報告書届出あり
278 医療法人 (36.3 % )
事業報告書届出なし
488 医療法人 (63.7 %)
2改正 「医療法」 における会計規制の適用対象
負債総額
医
療
法
人
数
(
法
人
)
負債総額 (円)
109
108
107
106
2
0
5
10
15
20
25
30
35
40
事業収益総額 (円)
1010
109
108
107
事業収益総額
法人名称
負債総額
収益総額
本来業務収益 本来業務損益 税引前損益
(百万円) (百万円) (百万円)(百万円) (百万円)
医療法人社団友志会
3,392
9,995
9,169
[ 1]
1,128
[ 1]
1,293
[ 1]
医療法人全仁会
6,291
8,053
7,727
[ 3]
△
161
[277]
33
[ 53]
社会医療法人中山会
9,755
8,715
8,230
[ 2]
529
[ 2]
523
[ 2]
社会医療法人博愛会
3,891
5,388
5,104
[ 4]
227
[ 8]
△
33
[266]
社会医療法人恵生会
2,430
3,149
2,921
[ 9]
34
[ 52]
25
[ 68]
3会計規制適用対象医療法人の財務状況
考察
1. 事業報告書等を届け出ている医療法人が
そもそも少ない。また,届け出られてい
る事業報告書等の記述も不適切なものが
散見された。会計に関して栃木県の指導
が行き届いていないことが推察される。
2. 社会医療法人を除く医療法人のうち,改
正 「医療法」 における会計規制の適用対象
は2法人のみであった。基準として設定
された規模が大きすぎて,ほとんどの医
療法人が適用対象外となっている。
3. 改正 「医療法」 では医療法人の分割に係る
規定も新設されている。規模基準を唯一
の判断基準とする改正 「医療法」 では,会
計規制の適用を免れるための分割も可能
である。
4. 以上のことから,規模基準は改正 「医療
法」 の趣旨を反故にしてしまっていると結
論づけられる。
①負債の部に計上した額の合計額が50億円以上,または,
②事業収益の部に計上した額の合計額が70億円以上
1. ①負債の部に計上した額の合計額が20億円以上,もしくは,
1. ②事業収益の部に計上した額の合計額が10億円以上
2. 社会医療法人債発行している社会医療法人
社会医療法人
医療法人
厚生労働省医政局発平成28年4 月20日付通知 (医政発0420第7号)
「医療法人の計算に関する事項について」
黄地の数字は,会計規制が適用される規模基
準を超える金額を表す。
緑地の数字は,すべての事業報告書等提出医
療法人における上位10位を表す。
[ ]内は,すべての事業報告書等提出
医療法人に対する順位を表す。
「医療法」 改正の背景には,不適切な形で医業収益を蓄財した徳洲会
問題がある。
この意味では,規模基準を使用するのであれば,医業収益よりも,
その使途を表す費用額の規模によって評価する方が,法改正の趣旨
により適合すると思われる。
しかし,この場合であっても,規模基準の引き下げは必要である。
医
療
法
人
数
(
法
人
)
P-S-20
適用
対象
適用
対象