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行政&情報システム 2014年6月号
2
本稿は、デンマークにおける電子政府進展
をその推進体制から概観するものである。デ
ンマークの電子政府は、官民組織・部門を横
縦断する連携体制を構築し、鍵となるステイ
クホルダーを巻き込んだ参加型で進められる
という特徴がある。この体制は、大小様々の
プロジェクトで採用され、この参加型が長期
的に見ると安定した電子政府の運営と進展の
原動力となっている。本稿では、電子政府の
推進体制の大枠を概観し、さらに第四次電子
政府政策の柱の一つである公共データの整備・
公開と民間活用を事例として、電子政府推進
体制がいかに構築されているかを紹介する。
背景
デンマークは、2001年の第一次電子政府政
策を皮切りに、段階的に電子政府基盤の整備
を進めてきた。第一段階では電子署名の導入
が目指された。導入のデッドラインはe-day 1
と呼ばれ、市民が自治体との電子的なコミュ
ニケーションがとれるように、公共部門のコ
ミュニケーション体制がデッドラインを目標
に整備された。2004年の第二次電子政府政策
では、電子請求書や 公用銀行口座(ネムコン
トと呼ばれ、政府との税金や社会保障に関わ
1
海外電子政府事情
電子政府構築の目的は、情報通信技術を用いて行政事務の高度化・効率化を図り、行政サービ
スの向上を実現することである。すなわち、従来の紙ベースの手続きを単に電子化し、その一時
的な発現効果に満足するに留まらず、現行制度を凌駕し、政府縦横断の視点から、目的達成の
為の最適解を見出し、実行していかなければならない。この終わり無き旅路に立ち向かうには、
柔軟な発想と変革への挑戦が必要であり、その成否は、それを推進する体制に大きく左右する。
本特集では先進諸外国の電子政府推進体制に目を向け、電子政府推進の変遷や変革の実例を
紹介し、わが国における電子政府推進力の更なる強化を検討する一助としたい。
デンマークの
電子政府推進体制
北欧研究所 代表
コペンハーゲンIT大学 インタラクションデザイングループ プロジェクトリーダ
安岡 美佳
行政&情報システム 2014年6月号 3
る金銭授受の個人の窓口となる)が導入、法
人ポータルや医療・保健ポータルが構築され
た。市民と自治体間のよりセキュアなメール
交換の達成が、2004年の電子政府目標(e-day 2)
として定められた。2007年の第三次電子政府
政策では、市民ポータル(Borger.dk)
注1、電子
署名(ネムID・ネムログイン)、電子税金申告、
公共機関からの連絡手段となる電子メールシ
ステム(デジタルポスト)が整えられた。デ
ットラインが2011年末に設定されたe-day 3の
達成目標は、法人と公共機関とのコミュニケ
ーション(ビジネス関係の申請書類・税金申
告など)を全て電子化し、共有インフラを利
用することであった。
2011−15年の方向性を規定する2011年8月発
表の電子政府政策では、紙から電子媒体へ、
電子福祉・保健、公共連携の3本柱が挙げられ
ている。今回の電子政府政策でもe-dayが定め
られているが、e-day 4(デットライン2014年
11月)では、市民と公共機関のコミュニケー
ションの80%の電子化が目標となっている。現
在、希望者は紙で受け取ることも可能な納税
申告書類・社会保障関連の公共機関からの連
絡などが、e-day 4までには電子化一本に絞ら
れることになり、2014年4月現在、この日に向
けた各種行政機関の取り組みが活発化してい
る。ちなみに、デンマークでは、2011年9月に
実施された総選挙で10年間の右派政権から中
道左派連立政権へと交代したが、電子政策に
関しては前右派政権の方針を踏襲する形が取
られ、2章で述べられるような組織編成などが
見られたものの電子政府戦略における大枠の
変化は見られていない。
デンマークの電子政府政策は、OECDから
公共部門における事務職員の削減および公共
部門の人員配置の最適化が進められたと評価
されるなど、世界的に見ても順調に進展が見
られる事例として注目されている注2。これらの
電子政府導入を順調に進めることができた理
由には、電子化との親和性が高い個人番号制
度が社会に根付いていたことや、情報システ
ムのシステム連携が順調に進んだことなどが
指摘されているが、その背後にある中央政府、
地域、自治体とその広域自治体連合、民間企
業や市民との密接な連携体制も見逃してはな
らない。電子政府は、あらゆる社会サービス
の基盤であるため、市民を始めとしたあらゆ
る組織や省庁の相互データ乗り入れや領域を
越えた協調が不可欠である。デンマークの電
子政府政策においては、各種行政機関間、民間・
市民活用の連携体制が、大小さまざまなプロ
ジェクトにおいて意識的に、戦略的に構築さ
れているのである。
本稿では、電子政府進展の鍵となっている
と著者が考える「領域を超えた参加型による
協働」という電子政府推進体制について概観
し、さらに第四次電子政府政策の柱の一つで
ある、公共データの整備・公開と民間活用を
事例として、そのような電子政府推進体制が
いかに構築されているかを紹介する。紙面の
都合上、民間企業や市民との連携に関しては
割愛した。
運営主体と連携基盤
デンマーク電子政府政策において、最も重
要なイニシアチブを取っているのが、予算を
握る財務省である。その財務省のもと、電子
政府政策の最高意思決定機関として電子化庁
(Digitaliseringsstyrelsen)が設置されている。
電子化庁は、それまでのIT&テレコム庁と経
済庁が合併し2011年に設立された組織で、約
150名の財務省職員で構成されている。電子化
庁の設立にあたり「2015年までの公共機関に
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特
集
おける書面の80%の電子化」が最重要課題に
挙げられており、2015年までに120億デンマー
ク・クローネ(1デンマーク・クローネは2014
年4月現在約18円、以下クローネ)が配賦とさ
れた。実際の各年の電子政府関連予算は、財
務省主導で毎年の国家予算に組み込まれ調整
され、予算に基づいた電子政府戦略が実施さ
れている注3-5。
2011年以前は、財務省傘下に同様の役割を
持つ「デジタルタスクフォース」が構成され
ていたが、旧組織は、「各省庁から集められた
人員によるプロジェクトベースの組織であり2
−3年で人員交代が行われていた注6」。そのため、
実務執行能力に限界があったと言われる。政
権交代を機に新設された電子化庁は、旧組織
であるデジタルタスクフォースと同様の役割
を持ちつつも、より強力なリーダシップを示
し、行政の広範囲にわたる権限が与えられた
組織と見なすことができる。
現電子政府推進体制の特徴は、電子化庁の
新設および、図1に示されるように電子化庁を
事務局に、各種行政機関が連携する省庁・組
織間連携運営委員会(STS)が構成されてい
ることであろう。デンマーク行政組織の各種
中小の運営委員会において
も同様の傾向が見られるが、
最も目標達成に影響力のあ
る組織からのメンバ(STS
では財務省官僚)が座長を
勤め、各所の連携組織が別
組織として構築されている
のだ。では、このような各
種行政機関の連携基盤は具
体的にどのように構築され、
運営されているのだろうか。
第二章では、連携基盤とし
て電子政府政策で重要な役
割を持つSTSと、より小規
模な連携基盤の例として、ITソリューション
調達分野における地方自治体連携基盤
KOMBITを、連携基盤事例として紹介する。
(1)省庁・組織間連携運営委員会(STS)
大小様々存在する電子政府推進の連携基盤
の中で最も注目されるのが、各種行政機関が
領域を超えて協働する省庁・組織間連携運営
委員会(Steering Committee for Joint Cross
Government Cooperation,以 下STS) だ。こ
のSTSは、前述のように電子化庁職員(財務
省官僚)が、座長を努めており、結果的に予
算調整や実施に大きな執行権限を持つ組織と
なっている。また、各省庁からのとりまとめ
役がSTSに参加していることにより、各省庁
での政策遂行が滞りなく行われる。
デンマークの行政区分は、中央政府、5つの
広域自治体連合、98の市と市の代表からなる
地方自治体連合で、大きく3層に役割分担が引
かれている。たとえば、医療保健分野であれば、
医療政策を策定するのが中央政府であり、先
端医療や病院を管轄するのが広域自治体、家
庭医管轄や健康支援といったより生活に密着
した社会サービスを行うのが地方自治体とな
図1 STSの構成 (財務省資料注7などより筆者訳出作成)
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で協調して問題解決に取組ませる、利用者中
心思考で公共サービスが提供されるように保
証するなどである。例年定められる目標は、
STSが半年毎に各所に進捗報告の義務を負い、
達成度評価を受けることになる。
(2)KOMBIT
次に、連携の2つ目の例として、98ある地方
自治体のITシステム導入推進を支援する連携
基盤組織連携基盤「KOMBIT」を紹介する。
KOMBITは、自治体におけるIT関連機器やサ
ービスの調達強化、およびITベンダ間の適切
な競争を推進することを目的に、2008年に地
域自治体連合の100%出資で構築された非営利
組織である。システムデザイン、プロジェク
トマネージメント、IT入札・調達に特化し、
より高品質、低予算で、共通のITソリューシ
ョンを自治体に提供するための支援を行う。
具体的には、自治体のITベンダ選択からはじ
まり、ITベンダとの交渉、その後の保守維持
などを支援する組織と位置づけられる。ITシ
ステムに関わる案件が新規に立ち上げられる
と、 KOMBITが自治体連合をサポートしなが
ら特定のITソリューション調達を推進するこ
とになる。
KOMBITは、地方自治体のITコンサルタン
トとして、地方自治体全域のITシステム導入
に関わるため、全国のITシステム周りの状況
把握が可能だ。自治体がITシステム導入をす
る際には、地方自治体全域でシームレスに情
報交換が達成されるようなシステムである必
要があり、その他行政府 のシステムとの互換
性も重要になる。KOMBITは、全国98自治体
での協働・調整の枠組みとして、全体の把握
を可能にする連携基盤としての役割を果たし
ている。
従来、自治体に導入されるITシステムの調
達・管理・保守は、KMD(自治体データ機構、
っている。しかし、このように市民へのサー
ビス窓口が明確に分かれていたとしても、情
報システムが取り扱うデータの流れは、相互
依存関係がある場合が多い。例えば、個人の
家族構成や居住情報の変更は、市が管轄する
家庭医のサポートばかりでなく、中央政府が
管轄する税金申告や個人情報管理にも影響す
ることになる。電子政府を効率的に無駄なく
運用するためには、今までと異なる情報フロ
ーや業務連携が要求され、既存の枠組みには
ない新しいシステムやプロセスが必要になっ
てくる。
2001年に第一次電子政府政策が立ち上げら
れてから数年、効率的に無駄なく情報を収集・
管理・提供するには、異なる組織レベルでの
協力体制があって初めて成功となることが明
らになり、2005年6月に各種行政機関が領域を
超えて協働する委員会が構築されることにな
った。これが、STSである。このSTSとよばれ
る運営委員会は、財務省を代表に、地方自治
体連合(地域市民サービスを所轄)、広域自治
体連合(医療サービスを所轄)、科学省、産業・
成長省、内務省、雇用省、税務省、経済省、
環境省の官僚に よ り 構 成 さ れ て い る( 図1参
照)。2005年時点5省であ った参画省は、2011
年の第四次電子政府戦略においては、9省に拡
大した。このようにSTSは、関連省庁や地域、
地方自治体の代表から構成され、政府の電子
政府政策を公共セクター全域にあまねく推進
させるための調整役(コーディネーション)
の役割を果たしている。
STSの業務は電子政府政策を順等に進める
ための共通意識の構築であり、具体的には次
年度の予算に基づき毎年、3層の行政間で枠組
みを構築することである。たとえば、市民や
ビジネスに置けるニーズを考慮にいれ行政の
枠組みを越えた電子政府ソリューションの提
供がされるように監督する、異なる行政機関
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特
集
Kommunedataの略)がほぼ独占的に請け負っ
ていた分野である。KMDは、1972年に設立さ
れた市の日常業務支援システム提供を目的と
したデータセンターであるが、2008年12月に
民営化されている。元公営であったため、民
営化された後も ITベンダとしての自治体にお
けるKMDの優位性は崩されず、KMDは実質
独占的に公共ITシステム市場を掌握し中心的
な役割を果たしてきた。このKMDという制約
が、公共機関における各種ITシステムの乱立
を回避し、システム連携を簡便にし、結果的
に電子政府の進展に大いに貢献したことも確
かだ。また、民営化の際の収益(売却金 20億
クローネ)が、市民ポータルの電子化推進資
金となるなど、デンマーク電子政府の進展に
一役買ったとも評価されている注2。しかしなが
ら、その後も地方自治体のITシステム供給は
実質KMDの独占市場であり続けたことから、
OECDの電子政府レポートでは課題として言
及され注8、この独占市場の改善が必要と指摘さ
れてきた。現在に至るまで、KMDの独占市場
を打破することに関しては、KOMBITの役割
は達成されているとは言い難い。しかしなが
ら、今後、基本データ整備進展(3章参照のこと)
に伴い、KMDを優位にしてきた公共データ管
理システムや従来型ITシステムの段階的廃止
が予定され、KMDの市場独占に終止符が打た
れると見られている。そのため、KOMBITの
体制が、今後増々重要になってくると考えら
れている。
公共データの整備、
公開と民間活用
2011年に公開された第四次電子政府政策の
柱の一つである「公共連携」では、各種行政
機関の領域を超えた縦横方向の協働がより促
進されることが目指されている。具体的な「連
携」として、安全かつ拡張性の高い相互乗り
入れが可能な共通のインフラ整備、重複する
データ群の整備などを通した各種行政機関で
の基本データ共有、今後の電子社会に向けた
法整備、電子化にむけた公共機関のより強固
なコーディネーションの4点が提示されてい
る。そのうちの一つであり、現在急ピッチで
進められている公共データの整備・公開と民
間活用を事例として、いかに電子政府の進展
において、連携基盤が立ち上げられ、活用さ
れているか見てみたい。
2012年、財務省と地域連合によって発表さ
れた基本データ(Basic Data, Grunddata)戦
略指針注9は、現在公共機関が保有する数々の公
共データの整備統合、公開、民間活用促進へ
の道筋を示すものだ。当該政府資料では、デ
ータ公開による経済効果を数字で示しデンマ
ーク政府のオープンデータ政策に大きな影響
を及ぼしたフィンランドETLA注10 によるレポ
ートや、スペインやオーストリアの公共デー
タ公開による産業へのインパクト事例を示し
つつ、基本データの適切な活用が、効率性を
向上させ、経済成長につながるという視点を
提供している 。
公共機関でのデータ活用において、特に注
目されているのがデータの再利用である。公
共機関は、社会サービスにおいて、市民、ビ
ジネス、不動産、建築、道路などの様々なデ
ータを活用しているが、公共機関全域にわた
り、高い頻度で繰り返し利用されるデータ群
が存在する。これらの利用頻度の高いデータ
群のことをデンマークでは「基本データ」と
呼んでいる。多くの基本データは、その特徴
故に、省庁、地方自治体において相互依存的
であり、様々なデータプログラムの横連携も
欠かせない。
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この基本データ戦略指針
の実施にあたり、デンマー
クでまず行われたのが基本
データを整備統合・利活用
を目的とし協働で基本デー
タ管理を行う主体となる組
織、超領域基本データ委員
会(Cross institutional
basic-data committee)の構
築である。情報連携をシー
ムレスに、重複なく、無駄
なく進めることを主導する
組織と位置づけられる。超
領域基本データ委員会は、
基本データ戦略指針が取り
まとめ られた2012年10月に
政府(財務省を始め、法務省、財務省など7省庁)
と広域地方連合で合意、その後2013年6月に地
域連合の合意が取り付けられ、図2のような形
で、財務省からの代表者を筆頭に7省庁と広域
自治体連合および地域の代表で構成されるこ
とになった。 超領域基本データ委員会の配下
には、各データ群のワーキンググループ委員
会が設置され、それぞれのワーキンググルー
プ委員会が複数の小規模プロジェクトチーム
を構成するという形になっている。
委員会は、新規データベースの策定、大規
模な基本データの変更、組織間の協働を管轄
し、基本データの利活用に関して提案すると
いう役割を持つ。また、民間の基本データ活
用に際し、民間企業と公共機関間のとりまと
めの役割も果たす。まだ運用が始まったばか
りの委員会であり不確実要素も多いが、委員
会は、基本データ提供基盤のデザインや運営
も管轄することになる見込みだ。
今後、2015年までに、公共機関の現存デー
タのうち重複データが統廃合され、段階的な
廃止や新規データ追加が進められることにな
っている。それら整備統合、公開、民間活用
の対象となっている基本データは、個人デー
タ、企業データ、不動産データ、住所データ、
地理データ、所得データなどである。たとえば、
個人データは、従来型のデンマーク人居住者
の場合1968年に始まった国内在住者の個人番
号(CPRnummer)住民登録制度を用いて個人
番号中央管理局において管理されているが、
近年、短期滞在の外国人の増加に伴い、移民局、
地方自治体など異なる行政区分での住民デー
タ登録や利用が見られるようになっている。
この影響から、データ重複が各所で見られる
ようになり、個人番号中央管理局のデータに
基づき提供される各種電子政府サービスの利
用が出来ない例も出てきている。個人データ
に関するこの課題に対しては、個人データを
扱う小ワーキンググル−プが構成され、内務
省官僚が座長となり(テーマに応じて座長が
選ばれる)領域横断事項の調整が行われてい
る。このワーキンググループでは、例えば、
現状の個人番号中央管理システムの拡張、具
体的には、基本データ提供基盤を介した個人
図2 超領域基本データ委員会構成(電子化庁資料注11より筆者訳出作成)
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特
集データ管理システムの構築が提案されている。
まとめにかえて
−協調(コーポレーション)と
参加型推進体制
デンマークは560万人の小国である。福祉国
家として医療保健、教育、高齢者介護・福祉
などの公的支出も多い。国是として「社会を
支えるだけの税収の確保」があり、少子高齢
化社会に備えた経済力の向上は大きな課題だ。
デンマークでは、今までも国家の維持と発展
という目的のもと、小さな労力で大きな効果
をもたらすことを狙った産官学民連携が積極
的に進められてきた。
本稿では、公共サービスを効率化するツー
ルとして電子政府が位置づけられているデン
マークで、その電子政府を効率的に維持し、
経済効果を高め、さらに国家の発展を促す仕
組みとして、官民組織・部門間連携体制が戦
略的に用いられていることを示した。そもそ
もITを始めとしたインフラは、境界の線引き
が難しく、多くの部門にまたがらざるをえな
いという特徴がある。ゆえに、通常の縦割り
や従来の組織編成では無駄も多く生まれ、効
率よく進めることは困難だ。もちろん、部門
や組織の枠を超えてステイクホルダーを巻き
込むことは、必ずしも簡単なプロセスではな
いだろう。しかしながら、参加型を前提とし
た推進体制を導入することで、鍵となるステ
イクホルダー間での合意形成や周知を促しや
すく、長期的に見れば安定した電子政府の運
営と進展の原動力となっているのではないだ
ろうか。
【注】(参考文献)
1. 猪狩典子,「ユーザー中心」で創るデンマークの電子政府
–市民ポータル「Borger.dk」からの考察,智場,第117号,
pp.124-134, 3月刊行,2012.
2. 安岡美佳 鈴木優美, デンマークの電子政府政策にみる税・
社会保障情報の管理と活用『海外社会保障研究』第172
号, pp.17-30, 9月刊行, 2010.
3. Finansministeriet, Finansministeriet rustet til fremtidens
udfordringer, 27. Oct. 2011. (2014年4月28日)(財務省,
財務省の今後の課題に対する取り組み,2011年10月27
日,プレスリリース)
http://www.fm.dk/Nyheder/Pressemeddelelser/2011/
10/20111027%20Finansministeriet%20rustet%20til%2
0fremtidens%20udfordringer.aspx
4. Finansministeriet, Årsrapport for Finansministeriets
department, , Marts. 2014. (2014年4月28日)(財務省,
財務白書,2014年3月)
5. Digitaliseringsstyrelsen, Styringsdokument, 2014. (2014
年4月28日)(電子化庁,報告書,2014年)
6. 猪狩典子,デンマークの電子政府が成功する3つの理由,
ICT利用先進国デンマーク「競争力」と「幸福」を創り出
す社会, 連載コラム, GLOCOM, 2010年6月23. http://
www.glocom.ac.jp/column/denmark/igari_2_2.html(2014
年4月29日)
7. Finansministeriet, Kommissorium – Ny fællesoffentlig
digitaliseringsstrategi for 2011-2015, 2. novmber 2010.
(財務省,指令–新電子政府戦略2011-2015)
http://www.fm.dk/Nyheder/Pressemeddelelser/2010/11
/~/media/Files/Nyheder/Pressemeddelelser/2010/11/K
ommissorium_ny_faelles_digitaliseringsstrategi.ashx
8. OECD, e-Government Studies Denmark: Efficient
e-Government for Smarter Public Service Delivery, 2010.
9. The Danish Government & Local Government Denmark,
Good Basic Data For Everyone- A Driver for Growth and
Efficiency, The eGovernment Strategy 2011-2015, 2012
Dec.
10. Heli Koski, Does Marginal Cost Pricing of Public Sector
Information Spur Firm Growth?, ETLA- The Research
Institute of The Finnish Economy, Discussion Papers,
28 September, 2011. No 1260.
11. Digitaliseringsstyrelsen, Grunddataprogrammets
styringsstruktur, May, 2013. (電子化庁,基本データプ
ログラム組織構成)
http://www.digst.dk/~/media/Files/L%C3%B8sninger%
20og%20infrastruktur/grunddata/Governance/Grunddat
aprogrammets%20styringsstruktur.pdf
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