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月から 10 月にかけて原則として隔週でライトトラップ調査をおこない,その際多数の本種を採
集したので報告する.なお,採集した個体の一部は九州大学農学部昆虫学教室に保管されている.
[採集データ]
4 workers(以下w),九州大学伊都キャンパス(生物多様性保全ゾーン),10–24. VI. 2019,Malaise
Trap,小山・野崎採集;3 w,同,31. VII. 2019,Light Trap,後藤・辰巳・牧野・岡崎採集(図1);
13 w,同,21. VIII. 2019,LT,後藤・辰巳・牧野採集;85 w,同,4. IX. 2019,LT,後藤・牧野
採集.
本種は 15 回行ったライトトラップの内 3度採集された.日本における本種のワーカーの個体
数は 7月から増え始め,9月にピークを迎えることが知られている(Matsuura, 1984).他地域に
おいても本種の発生に合わせたライトトラップ調査をおこなうことで,多数の本種を確認できる
かもしれない.
末筆ながら,調査地での採集許可をくださった九州大学資産活用管理係の方々,調査に協力し
ていただいた紙谷聡志准教授,米田洋斗博士,本稿をまとめるにあたりご助言を賜った久末 遊
氏,河野太祐氏(九州大学)に厚く御礼申し上げる.
[引用文献]
河野太祐・山根正気(2014)南九州におけるモンスズメバチの多産地.Nature of Kagoshima, 40:
107–109.
木船悌嗣・牧野俊一(1996)スズメバチネジレバネの九州からの初記録.Pulex, (85): 459.
Makino, S., Taki, H. & Makihara, H. (2017) Social wasps collected with Malaise traps in Japanese cedar
(Cryptomeria japonica) plantations (Hymenoptera, Vespidae). Bulletin of the Forestry and Forest
Products Research Institute, 16(4): 257–263.
松永善明(2001)風師山の昆虫 (6).(1966 年~2000 年) 補充編.北九州の昆虫,48(1): 37–42.
Matsuura, M. (1984) Comparative biology of the five Japanese species of the genus Vespa (Hymenoptera,
Vespidae). The bulletin of the Faculty of Agriculture, Mie University, 69: 1–131.
松浦 誠(2004)都市における社会性ハチ類の生態と防除 IV.スズメバチ類とアシナガバチ類
の発生状況.ミツバチ科学,25(1): 11–24.
Matsuura, M. & Yamane, S. (1990) Biology of the Vespine wasps. 323pp. Springer-Verlag. Berlin.
大塚 勲(1984)熊本県の膜翅目に関する資料 (II).30(1): 6–17.
大塚 勲(1995)蘇陽町の昆虫類.熊本昆虫同好会報,40(2): 28–207.
寺山 守・須田博久(編)(2016)日本産有剣ハチ類図鑑.780pp.東海大学出版部.神奈川.
渡邊尚一・川口エリ子・佐藤嘉一・臼井陽介(2009)森林技術総合センターにおいてベイトトラ
ップで捕獲されたスズメバチ科昆虫.鹿児島県森林技術総合センター研究報告,12: 24−26.
527 (Col.: Staphylinidae) コバネヒゲブトアリヅカムシの新寄主記録
井上翔太・久末 遊 (九大院・生資環・昆虫)
コバネヒゲブトアリヅカムシ Micrelytriger mirabilis Nomura, 1997(以下,本種)は屋久島,奄
美大島から知られる(Nomura, 1997;野村,2012),ヒゲブトアリヅカムシの一種である.本種
が所属するヒゲブトアリヅカムシ上族は,その形態的特異性からその生活史の一部もしくは全て
をアリに依存する好蟻性動物であると考えられており,実際に,ヒゲブトアリヅカムシ上族に属
する多くの種がアリと密接な関係を有している(丸山ら,2013;Parker & Grimaldi, 2014).本種
と同属であり,沖縄本島固有種であるオキナワコバネヒゲブトアリヅカムシ M. nakatai Nomura,
1997 は,リュウキュウアメイロアリ Nylanderia ryukyuensis (Terayama, 1999)の巣内に生息するこ
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とが分かっている(丸山ら,2013).本種は好蟻性であることが疑われていたがこれまで寄主が
不明であった.この度,筆者らは奄美大島湯湾岳の麓においてリュウキュウアメイロアリの巣内
から本種を採集したので新寄主記録として報告する.
[標本データ]
1♂(図 1, 2),鹿児島県大島郡宇
検村(奄美大島)湯湾岳
28°16’57.5” N 129°18’56.8” E,20–
23. III. 2019,井上採集・保管.採
集した個体と寄主アリは同じピ
ンに刺して保管している.
本個体は,林道脇の石の下に
営巣していたリュウキュウアメ
イロアリ(図 3)の巣内から採集
された.前述の通り,本種は屋久
島,奄美大島に分布しているが,
リュウキュウアメイロアリの分
布はトカラ列島以南に限られて
おり,本種が分布している屋久
島には生息していない.屋久島
には同属のアメイロアリ
Nylanderia flavipes (Smith, 1874)の分
布が知られてはいるが,本種の屋久島におけ
る寄主アリが何であるか興味がもたれる.今
後の報告を期待したい.
未筆となったが,本原稿の校閲と本種の同
定に関してご教示頂き,また日頃より大変お
世話になっている野村周平博士(国立科学博
物館)とアメイロアリ属について貴重なコメ
ントを下さった山根正気博士(鹿児島県)に
心より御礼申し上げる.
[引用文献]
丸山宗利・小松貴・工藤誠也・島田 拓・木野村恭一(2013)アリの巣の生きもの図鑑.208pp.
東海大学出版部.神奈川.
Nomura, S. (1997) A new clavierine genus, Micrelytriger (Coleoptera, Staphylinidae, Pselaphinae) from
Taiwan and Japan. Bulletin of the National Science Museum, Tokyo, Ser. A, (23): 115–126.
野村周平(2012)南西諸島のアリヅカムシ概観(付・ハセガワモモブトアリヅカムシの新分布記
録).さやばねニューシリーズ,(8): 38–47.
Parker, J. & Grimaldi, D. A. (2014) Specialized myrmecophily at the ecological dawn of modern ants.
Current biology, (24): 2428–2434.
図3.共に採集されたリュウキュウアメイロアリ.
左図 1,右図 2.図 1.コバネヒゲブトアリヅカムシ♂の全形図.図 2.コバ
ネヒゲブトアリヅカムシの雄交尾器.