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共通の改新に基づく分岐学的手法を用いた日本語諸方言の系統分類:南日本語派(琉球を含む)と東日本語派(八丈を含む)の提唱

Authors:

Abstract and Figures

This study proposes a phylogenetic tree of the Japanese/Japonic language family by means of cladistic analysis, in which languages/dialects sharing common innovations are considered to share a common ancestor. The analysis focuses on the matryoshka-type geographic distribution of linguistic characteristics, where the distribution of one character is contained entirely within that of another, forming an implicational hierarchy. This type of spatial distribution of linguistic characteristics, manifesting itself as a set of nested isoglosses on a language map, must be demonstrative of a sequence of nested innovations, which helps to reconstruct phylogenetic trees. Strangely enough, however, the existence of the matryoshka-type distribution of linguistic characteristics, or the nesting of isoglosses, in the Japanese Archipelago has been overlooked in Japanese linguistics, and there has been no serious attempt to reconstruct a phylogenetic tree of the Japanese/Japonic languages/dialects on the basis of the geographic distribution of linguistic characteristics. This study exploited 101 linguistic characteristics (which are assumed to be innovations but not retentions). In the proposed phylogenetic trees of the Japanese language family, 1) at least two monophyletic groups, the Macro-Eastern Japanese branch and the Southern Japanese branch, are defined, 2) the group that has been called “Mainland Japanese” or simply “Japanese” (the group excluding Ryukyuan and Hachijo) is paraphyletic and does not constitute a clade, 3) the Ryukyuan language is a sister of the Southern Kyushu language, and 4) Hachijo constitutes the monophyletic group (the Nuclear Eastern Japanese languages) with the modern dialects spoken to the east of the Itoigawa-Hamanako isogloss.
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比較言語学的方法による日本語・琉球諸語諸方言の祖語の再建および系統樹の構築」第 1回打ち合わせ・検討会
「日本語諸方言の系統関係について」2017 12 24 日(於:国立国語研究所)
1
共通の改新に基づく分岐学的手法を用いた日本語諸方言の系統分類:
南日本語派(琉球を含む)と東日本語派(八丈を含む)の提唱
五十嵐陽介(一橋大学)
y.igarashi@r.hit-u.ac.jp
Abstract
This study proposes a phylogenetic tree of the Japanese/Japonic language family by means of cladistic
analysis, in which languages/dialects sharing common innovations are considered to share a common
ancestor. The analysis focuses on the matryoshka-type geographic distribution of linguistic
characteristics, where the distribution of one character is contained entirely within that of another,
forming an implicational hierarchy. This type of spatial distribution of linguistic characteristics,
manifesting itself as a set of nested isoglosses on a language map, must be demonstrative of a sequence
of nested innovations, which helps to reconstruct phylogenetic trees. Strangely enough, however, the
existence of the matryoshka-type distribution of linguistic characteristics, or the nesting of isoglosses,
in the Japanese Archipelago has been overlooked in Japanese linguistics, and there has been no serious
attempt to reconstruct a phylogenetic tree of the Japanese/Japonic languages/dialects on the basis of
the geographic distribution of linguistic characteristics. This study exploited 101 linguistic
characteristics (which are assumed to be innovations but not retentions). In the proposed phylogenetic
trees of the Japanese language family, 1) at least two monophyletic groups, the Macro-Eastern
Japanese branch and the Southern Japanese branch, are defined, 2) the group that has been called
“Mainland Japanese” or simply “Japanese” (the group excluding Ryukyuan and Hachijo) is
paraphyletic and does not constitute a clade, 3) the Ryukyuan language is a sister of the Southern
Kyushu language, and 4) Hachijo constitutes the monophyletic group (the Nuclear Eastern
Japanese languages) with the modern dialects spoken to the east of the Itoigawa-Hamanako
isogloss.
比較言語学的方法による日本語・琉球諸語諸方言の祖語の再建および系統樹の構築」第 1回打ち合わせ・検討会
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1.はじめに
1.1 目的
分岐学的手法を用いて、日本語族(日琉語族)に属する諸言語/方言の系統関係を
系統樹の形で表現する。
言語の系統分岐過程を反映する地理的分布として「マトリョーシカ分布」(入れ子
型分布)に着目する。
1.2 日本語族の系統樹に関する旧説
琉球語派(琉球列島の諸方言)と日本語(日本本土の諸方言)という 2大系統群を
認め、両者は姉妹関係にあるとする(e.g. Pellard 2015Figure 1
琉球語派・日本語派・八丈語派の 3姉妹となる可能性も示唆(Pellard 2015)。
本土方言の系統関係を解明しようとする本格的な研究はほとんどない
Lee & Hasegawa (2011)はその課題に取り組んだ研究
1
であるが、問題が多い。
本土諸方言(単系統群)の共通祖語が中世日本語と姉妹関係にあるとし、かつその分
岐年代を 15 世紀頃とする
2
東京・山梨・北海道が最初にその他から分岐。その次に愛知・岐阜が他から分岐。そ
の後、九州・四国中国・近畿からなる系統群と、北陸(愛知・岐阜を除いた)中部
(東京と山梨を除いた)関東・東北からなる系統群とが分岐。
そもそも本土方言(=日本語)なる系統群は存在するのか?(五十嵐 2016
日琉語族
琉球語 日本語 八丈語?
=本土方言)
南琉球語 北琉球語
Figure 1: A widely-accepted phylogenetic tree of the Japanese/Japonic language family (Adopted
form Pellard 2015).
1
この他に、Lee & Hasegawa (2011)と同一のデータを用いて分析を行った Saitou & Jinam (2017)がある。
2
日本語族に属する言語は遅くとも 3世紀には日本列島で用いられていたことが中国正史『三国志』から
うかがえる。さらに日本語族の話者は、5世紀にはすでに現在の埼玉県にまで拡散していたことを示す考
古学的証拠があり(稲荷山古墳出土「金錯銘鉄剣」8世紀には現在の福島県まで拡散していたことを示
す文献学的証拠(『万葉集』東歌)がある。またこの時代(8世紀)にはすでに方言差が存在していたこ
とも確認されている(「上代東国語」の存在)。すなわち、上代日本語が記録される 8世紀には、日本語族
はすでに複数の系統群に分岐していたはずであり、そのなかの一系統の話者はすでに東北地方南部まで到
達していたはずである。Lee & Hasegawa の系統樹が仮に正しければ、日本本土に分布していたいくつかの
系統群は、ただ一つの系統(中央語系統)を残して、すべて消滅したことになる。その時、人間集団の置
き換え(中央語話者集団による非中央語話者集団の殲滅)がなかったのであれば、非中央語から中央語へ
の言語の置き換えが起こったことになる。そしてもし仮に Lee & Hasegawa の推定分岐年代が正しけれ
ば、この大規模かつ徹底的な言語の置き換えは室町時代に生じたことになる。日本本土のすべての人々の
言語を取り換えてしまう大事件が室町時代に万が一あったとしたら、それはいったい何であろうか。
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1.3 本稿が提案する日本語族の系統樹(Figure 2
少なくとも 2つの単系統群、「拡大東日本語派」と「南日本語派」が定義される。
「拡大東日本語派」は糸魚川浜名湖線以東の諸方言からなる単系統群「中核東
日本語」を子孫に持つ。
琉球語・八丈語を除いた日本語(=本土方言)なる単系統群は成立しない。
琉球語は南九州語(≈薩隅方言)の姉妹言語である。
八丈語は糸魚川・浜名湖線以東の方言と単系統群(「中核東日本語」)をなす。
Figure 2: Proposed phylogenetic tree of the Japanese language family. Based on the result of CLIQUE
(1) shown in Figure 6 below.
1.4 分岐学的手法
琉球列島の諸言語/方言の系統研究に、近年盛んに用いられている手法(ローレン
2003; 2004; 2008; 2011; Pellard 2009
本土方言には管見の限り適用されていない。
改新(生物学における共有派生形質 synapomorphy)を共有する言語/方言は、それ
のみからなる系統群をなす。
古形(生物学における共有祖先形質 plesiomorphyを共有しているか否かは、系統
関係にいかなる情報も与えない。
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1.5 言語の分岐を反映する分布:「マトリョーシカ分布」
マトリョーシカ分布
3
異なる言語特徴にそれぞれ基づいてひかれた等語線を、1枚の言語地図に重ねたと
きに、等語線が入れ子状(nesting)に分布すること。
マトリョーシカ分布をなす言語特徴は含意階層をなす。
マトリョーシカ分布は、一続きの改新が入れ子状に生じた結果と説明しうる
Sagart 2004
c > b > a という含意階層をなす場合、ある言語共同体の言語に cが生じ、その
のち cを持つ言語共同体の一部の集団の言語 bが生じ、そののち b(および c
を持つ言語共同体の一部の集団に aが生じたと説明される。
マトリョーシカ分布をなす改新に基づいて系統樹を描くことができる。
マトリョーシカ分布は系統分岐を反映する地理的分布の類型とみなせる。
言語特徴の地理的分布は、特徴の伝播(借用)の結果であると解釈するわが国
で主流の枠組みでは説明できない。
日本本土にマトリョーシカ分布が観察される事実は管見の限りこれまで指摘され
ていないが、Figure 3-4 に示すように、筆者の分析では、東日本および南日本(九
州・琉球)に観察される。
3
Laurent Sagart 氏は、“I observed that the six numerals [...] are reflected in Formosan languages according to the
implicational hierarchy [...]; that these six etyma occupy geographical areas nested like matryoshka dolls (Sagart
2013: 1)”と述べている。したがって「マトリョーシカ分布」という命名は筆者独自のものというわけでは
ない。
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Figure 3: Nested isoglosses (“Matryoshka-type” distribution of linguistic characteristics) in Eastern
Japan. It is possible to draw at least twelve non-crossing isoglosses in Eastern Japan.
Figure 4: Nested isoglosses (“Matryoshka-type” distribution of linguistic characteristics) in
Southern Japan. It is possible to draw at least eight non-crossing isoglosses in Kyushu and Ryukyu.
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2.手法
2.1 データ
東日本諸方言(全 31 項目(Table 2))
『日本言語地図』(国立国語研究所 1966-74)から 29 項目、『方言文法全国地
図』(国立国語研究所 1989-06から 1項目、マトリョーシカ分布を示す項目を
採用。筆者が新たに 1項目追加。
南日本(九州と琉球)の諸方言(全 70 項目(Table 2))
4
野原1979-83「九州方言と琉球方言とに共通する語」として挙げる約 800
項目から 58 項目を採用。
九州以外の本土方言にも存在する項目を除外。
更に北琉球語、南琉球語の双方に存在が確認できるものに限定。
筆者が新たに 12 項目追加。
101 項目を改新とみなし、各方言ごとに、当該の改新の存在を1”、 欠如を0
としてコード化した二値行列を作成する(Table 3
2.2 系統樹の推定手法
Thomas Pellard 氏の博士論文(Pellard 2009)の手法に準拠する。
系統樹推定のためのソフトウェア Phylip (Felsenstein 2008)2つのプログラム
CLIQUE DOLLOP を利用。(祖先状態をすべて 0とするオプションを使用)
CLIQUEMaximum compatibility method に基づく
DOLLOP: Maximum parsimony method に基づく
Table 3の二値行列を入力として与える。
4
琉球列島の言語と九州の言語が「近い関係」にあるという指摘は、古くは伊波普猷(1911、服部四郎
1979)によってなされており、その後も野原三義(1979-83、上村幸雄(1997 などによってなされ
ている。最近でも狩俣繁久(2002; 2016、風間伸次郎(2012、五十嵐陽介(2016; 2017)が琉球列島の言
語と九州の言語の近さを主張している。しかしながら従来の研究は、ほとんどの場合、両者の類似性を指
摘するにとどまっており、系統的な近縁性を主張する根拠を必ずしも提示していない。言語/方言同士の
類似性と系統的な近縁性は互いに独立した尺度である。表面的には類似した 2言語の系統的距離が、表面
的には大きく異なる 2言語間の系統的距離より、大きいことも有り得る。系統的な近縁性は共有改新
shared innovation)によってのみ主張できるので、琉球列島の言語と九州の言語の近縁性を主張するため
には、仮定される両者の共通祖語以前には存在せず、共通祖語において新たに生じた特徴を見つけ出さな
ければならない。この目的のために最初に行うべき作業は、九州の言語と琉球列島の言語のみが共有して
いる語を見つけ出すこととなるだろう。そのような語を大量に収集したのが野原三義の研究(1979-83
である。しかしながら、野原のリストに掲載された語の約 8割は、日本方言大辞典』(小学館国語辞典編
集部(編)1989)等を利用してその地理的分布を検討すると、琉球列島と九州以外の地域にも分布するこ
とが明らかになる(五十嵐 2017。例えば、イラ「海月」、オラブ「呼ぶ」、ソーケ「竹製の笊」、ツズ
「唾」、ナバ「茸」、フツ「蓬」、ホメク「蒸し暑くなる」、ヨキ「斧」などは、その分布が琉球・九州に限
定されているわけではない。このような語の大部分は、琉球列島の言語と九州の言語の共通祖語より昔に
遡る古形であろう。五十嵐(2017)は、この点を考慮し、琉球列島と九州列島のみに分布し、かつ北琉球
語と南琉球語の双方に存在が確認できる語のリスト「九州・琉球同源語調査票」を提案した。本稿の別表
に「九州・琉球同源語調査票」を再掲している。
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Table 1: Innovations in Macro-Eastern Japanese and its descendants.
Innovation
Example
1
Form hiko for ‘great grandchild’
ヒコ「曾孫」
2
Irregular change a > u in kataɡ- for ‘to carry on one’s shoulder’
カツグ「担ぐ」
3
Initial kur- in ‘malleolus
クルブシ「踝」
4
Initial mam- in ‘eyebrow’
マミ「眉毛」
5
Form jaʃaɡo for ‘great great grandchild’
ヤシャゴ「玄孫」
6
Form ʃiɡa- for ‘ice’
シガ「氷」
7
Irregular change ɡ > k in kaɡaʃi for ‘scarecrow’
カカシ「案山子」
8
Form ʃow- for ‘carry on one’s back’ (<se-ow-)
ショウ「背負う」
9
Form njuːbai for rain during the rainy season’ (Sino-Japanese
loan 入梅?)
ニューバイ「梅雨」
10
Form urutʃi for ‘non-glutinous rice’
ウルチ「粳米」
11
Initial aku(i)- in ‘heel’ ((<*a-kupi-? cf. OJ kupi-pisu ‘heel’)
アクト「踵」
12
Form mama for cliff
ママ「崖」
13
Form koke- for ‘scale’
コケ「鱗」
14
Form okkana- for ‘fearful’
オッカナイ「恐ろしい」
15
Form ʃoppa- for ‘salty’
ショッパイ「塩辛い」
16
Initial m{u/o}- in ‘ticklish’
ムツグッタイ「くすぐったい」
17
Form janoasatte for ‘two days after tomorrow’
ヤノアサッテ「しあさって」
18
Initial kana(ki)- in lizard’ (further > kamaɡi- probably by
analogy to ‘praying mantis’, and then > kaɡami by metathesis)
カナギッチョ「蜥蜴」
カマギッチョ「蜥蜴」
カガミッチョ「蜥蜴」
19
Negative verbal suffix -nae (cf. OEJ negative suffix in the
attributive form nap-e)
~ナイ(否定の動詞接辞)
20
Irregular change o > u in manako ‘eye’
マナク「瞳・目」
21
Form makime for ‘whirl of hair on the head’
マキメ「旋毛」
22
Form tanokuro for ‘ridge’ between rice-fields’
タノクロ「畦」
23
Form ʃida- for ‘mane of the horse’ (the loss of /re/ in ʃidare- ‘to
droop down’)
シダゲ「鬣」
24
Form namerakuʒi for ‘slug’ (developed by metathesis from
namekuʒira)
ナメラクジ「蛞蝓」
25
Regular sound change t > d / V _ V (intervocalic /t/ voicing)
アダマ「頭」
26
Form ʃitaki (further > kVtaki) for ‘saliva’
シタキ「唾」
27
Form koːnoɡe for ‘eyebrow’
コノゲ「眉」
28
Analogical change buʃi ‘knot’ > kobuʃi ‘fist’ in kurubuʃi
malleolus
クロコブシ「踝」
29
Form kaze- for ‘to count’
カゼル「数える」
30
Form matsukaʃira for ‘pine cone’
マツカシラ「松毬」
31
Form (m)oho- for ‘owl’
オホドリ「梟」
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Table 2-a: Southern Japanese (Kyushu-Ryukyu) innovations.
Innovation
example
Verbal suffix *-ɡai ‘goal’
ミギャイク「見に行く」
Form *bakaw- for ‘to rob’.
バカウ「奪う」
Semantic change ‘to fear’ > ‘to wake up’ in ozom-
オゾム「目覚める」
Form *jokow- for ‘to rest’
ヨコウ「休憩する」
Form *poɡe for ‘hole’
ホゲ「穴」
Semantic change ‘to step’ > ‘to put on (the shoes) in pum-
フム「履く」
Form *ɡauri- for ‘bitter ground fruit’
ゴリ「苦瓜」
Form *kusabi for wrasse
クサビ「ベラ(魚)
Form *tuburame for ‘snail’
ツブラメ「蝸牛」
Irregular change u > i in iruko ‘scale’
イリコ「鱗」
Form *jokoi for ‘rest’
ヨコイ「休憩」
Form *obokure- for ‘to drown’ (further irregularly changed >
*obukure (?) with the second vowel changed from /o/ to /u/. PR
form is arguably *obukure, and some dialects in Kagoshima
have the forms going back to *obukure- but not to *obokure.)
オボクルル「溺れる」
オブクルル「溺れる」
Form *ado for ‘heel’
アド「踵」
Form *nakajokoi for ‘short break to relax
ナカヨコイ「中休み」
Form *paru for ‘arable land, field’
ハル「耕地・平地」
Form *kobu for ‘spider’
コブ「蜘蛛」
Form *peɡuro ‘kettle soot’
ヘグロ「鍋墨」
Form *ta-mina for ‘pond snail’
タミナ「田螺」
Postposition =kara ‘means of transportation’
フネカラキタ「船で来た」
Form *mina for conch
ミナ「巻貝」
Form *ija for ‘placenta’
イヤ「胞衣」
Form *jori-tuki for ‘intercalary month’
ヨリズキ「閏月」
Semantic change ‘landform of a mountain’ > ‘landform under
the ocean (fishing point)’ in *sone
ソネ「海中の魚の取れる瀬」
Form *ɡori/*ɡore for ‘sediment’
ゴリ「滓」
Irregular change u > o in *abusi ‘footpath between rice fields’
(A more archaic form abuʃi is found in Yamaguchi; cf. OJ a
‘footpath between rice field’, OJ pusi ‘knot’)
アボシ「田畑の畔」
Form *karapai for ‘ash from firewood
カラハイ「薪を燃やした灰」
Irregular change ɡ > m in *kamuge- to put (something) on the
top of one’s head’ (*kamume- seems further innovated into PR
*kame-.)
カンメル「頭に載せる」
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Table 2-b: Southern Japanese (Kyushu-Ryukyu) innovations (cont’d).
Innovation
Example
Form *kuke(r)-/ *puke(r)- for ‘to thin out (plants)’. (The initial
consonant is either /k/ or /h/ in Kyushu. The forms huke(r)- with
the initial /h/, which must go back to *puke(r)-, are found in
Ashikita and Yatsushiro in Kumamoto Pref., in Morokata in
Miyazaki Pref., and in Akune and Izumi in Kagoshima Pref. PR
form must be *puker- (cf. Nakijin pʰukˀiruŋ).
クケル「(野菜を)間引く」
フケル「(野菜を)間引く」
Form *tanasi for ‘unlined garment’
タナシ「単衣」
Form *kakiaw- for ‘to be in time’
カキオ「間に合う」
Form *janimoti for ‘bird lime
ヤンモチ「鳥もち」
Semantic change ‘to monopolize’ > ‘to stow’ in *kazime-
カジメル「片づける」
Irregular change t > s in *tuba ‘lips’ (*tuba ‘lips’ is assumed to
be more archaic than *suba, and thus the irregular change
(lenition) from /t/ to /s/ is reconstructed. Since reflexes of
innovative *suba are only observed in southern Kyushu and
Ryukyu, *suba serves as the strong support for the hypothesis
that sees the Sothern Kyushu language and Ryukyuan as sister
languages. It is commonly assumed, however, that *suba (with
initial /s/) is archaic, for which support is OJ sipa-buk- ‘to
cough’. This widely-accepted hypothesis faces difficulty in
explaining the irregular vowel change *i > u, the irregular
voicing *p > b, and sematic change *sipa ‘throat’ (?) > ‘lips’.)
スバ「唇」
Form *kjautuka for ‘charm to ward off earthquakes’ (< Sino-
Japanese *kjau ‘sutra’ + *tuka mound)
キョーツカ「地震時の呪言」
Form *paberi- for ‘butterfly, moth’ (cf. OJ pipir- ‘to fly high’,
OJ pipiru ‘moth’)
ハベリョオ「蛾」
ハビー「蛾」
Form *owara for ‘upper part’
オワラ「上の方」
Semantic change ‘degree’ > ‘height (of a person)’ in *podo.
ホド「身長」
Irregular change ɡ > m in *kataɡe- ‘to carry on one’s shoulder’
カタムル「担ぐ」
Semantic change ‘spatial interval’ > ‘temporal interval’ in *pada
ハダ「時間の程」
Verbalizing construction: adjective root plus nominalizing suffix
-sa (plus allative =i) plus verb s- ‘do’
ネムシャスッ「眠たがる」
Form *iɡiri for ‘gimlet’ (probably derived from a verb *iɡir- ‘to
pierce with a gimlet’ attested in Saga, Nagasaki, and Kumamoto.
Form *iri ‘gimlet’ attested in Kagoshima and Ryukyu is seen as
its cognate, developed as a result of the irregular ɡ dropping
between vowels. See Innovation 79.)
イギリ「錐」
Form *kazja- ‘mosquito, gnat’
ガジャブ「蚋」
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Table 2-c: Southern Japanese (Kyushu-Ryukyu) innovations (cont’d).
Innovation
Example
Semantic change ‘body’ > ‘oneself’ in *dou (The fact that this
word is attested in Kyushu is backed only by the Japanese-
Portuguese dictionary Vocabvlario da Lingoa de Iapam (1603-
04). *dou ‘oneself’ has been claimed as one of the innovations
that define the Ryukyuan branch (Pellard 2015:15), but it was in
fact used in Kyushu until at least the seventeenth century.)
Dôuo vru. 「自分自身を売る」
Form *ɡatunV for ‘horse mackerel
ガッツン「真鯵」
Form *parejaku for ‘the passing of bad years’
ハレヤク「厄の晴れること」
Form *tamasi for ‘lot, share’
タマシ「分け前」
Form *abo for ‘cave’
アボ「断崖」アボ「洞窟」
Irregular change ɡ > φ in *igiri ‘drill’ (See Innovation 72.)
イリ・イー「錐」
Form *kutime/ kutibe for ‘wart’ (cf. OJ pusube2 ‘wart’; the forms
with /k/ and /t/ in the first and second syllables, respectively, are
not found except in Kagoshima and Ryukyu.)
クチメ「蚤や虫などに刺された
跡」
Irregular voicing t > d in a Sino-Japanese loan *teNtau 天道
‘sun’. (Proto-Ryukyuan *teda. Note that the diphthong *au in
some (bi-syllabic) Sino-Japanese words corresponds with Proto-
Ryukyuan *a, such as in *sata ‘sugar’ (<*satau 砂糖), *kacja
‘mosquito net’ (<*kacjau 蚊帳), suggesting that the
correspondence *au :: *a is regular.
テンドー「太陽」
ティダ「太陽」
Semantic change ‘girdle’ > ‘hoop’ in *obi.
オビ「箍」
Form *sikiri for ‘sea cucumber’
シキー「海鼠」
Form *matabasi for ‘crotch’
マタバイ「股座」
Form *kobusime for ‘cuttle fish’
コブシメ「コウイカ」
Form *suɡarV for ocellated octopus’ (cf. OJ sugari ‘a type of
bees’)
スガル「飯蛸」
Form *tikura for ‘mullet’
チクラ「鯔の子」
Form *utiame for ‘rain blowing into the house’
ウチアメ「屋内に降り込む雨」
Form *utiti for ‘bruise’
ウチチ「打ち身」
Form *kewaki/ *kiwaki for ‘sawyer
キワキ「木挽き」
Form *padamoti for ‘climate’
ハダモチ「気候」
Form *bake for ‘bambusa’ (further > ‘basket made form
bamboo’)
バケ「蓬莱竹」バーキ「笊」
Form *butamasi for ‘imprudence’
ブタマシ「思慮の足りない事」
Form *takamina for ‘Pfeiffer's Top Shell
タカミナ「高瀬貝」
Form *karakara for ‘sake bottle’
カラカラ「酒器」
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Table 2-d: Southern Japanese (Kyushu-Ryukyu) innovations (cont’d).
Innovation
Example
Form *okka for ‘debt’
オッカ「借金」
Form *siake for ‘land reclamation’
シアケ「開墾」
Semantic change ‘reed’ > ‘sugar cane’ in *woɡi.
オーギ「砂糖黍」
Form *sudas- for ‘hatch’ (attested only in Tokara Is. and
Ryukyu)
スダス「孵化する」
Form *amamu for ‘hermit crab’ (attested only in Tokara Is. and
Ryukyu)
アマム「ヤドカリ」
Form *nenopaubosi for ‘Polaris (attested only in Tokara Is. and
Ryukyu. *ne ‘rat in the Chinese zodiac, north’ + *no ‘GEN’ +
*pau ‘direction’ + *posi ‘star’. PR *nenopabusi, with Sino-
Japanese *pau corresponds with Ryukyuan *pa. For the *au ::
*a correspondence ), see Innovation 81 above.
ネノホーボシ「北極星」
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立国語研究所)
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Table 3-a: Matrix of innovations.
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24
25
26
27
28
29
30
31
32-101
その他
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1
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1
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1
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1
1
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1
1
1
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1
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0
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山形県
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岩手県南部
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1
1
1
1
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0
0
秋田県
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1
1
0
1
1
1
1
1
0
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1
1
1
1
1
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1
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1
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1
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1
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0
0
岩手県北部
1
1
1
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1
1
1
1
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0
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
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1
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1
1
1
1
1
0
青森県
1
1
1
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1
1
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1
1
1
1
1
1
1
1
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1
1
0
1
1
1
1
1
0
比較言語学的方法による日本語・琉球諸語諸方言の祖語の再建および系統樹の構築」第 1回打ち合わせ・検討会「日本語諸方言の系統関係について」2017 12 24 日(於:国
立国語研究所)
13
Table 3-b: Matrix of innovations (cont’d).
1-31
32
33
34
35
36
37
38
39
40
41
42
43
44
45
46
47
48
49
50
51
52
53
54
55
56
57
58
その他
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0
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大分県
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宮崎県
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佐賀県
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長崎県
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1
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熊本県
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鹿児島県宮崎県諸県地方
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1
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0
1
琉球祖語
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1
1
1
1
1
1
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1
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1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
Table 3-c: Matrix of innovations (cont’d).
59
60
61
62
63
64
65
66
67
68
69
70
71
72
73
74
75
76
77
その他
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0
0
0
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壱岐対馬
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佐賀県
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長崎県
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熊本県
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0
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1
1
1
1
1
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0
1
1
1
鹿児島県宮崎県諸県地方
1
1
1
1
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0
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1
1
0
1
1
0
1
1
1
琉球祖語
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
比較言語学的方法による日本語・琉球諸語諸方言の祖語の再建および系統樹の構築」第 1回打ち合わせ・検討会「日本語諸方言の系統関係について」2017 12 24 日(於:国
立国語研究所)
14
Table 3-d: Matrix of innovations (cont’d).
78
79
80
81
82
83
84
85
86
87
88
89
90
91
92
93
94
95
96
97
98
99
100
101
102
その他
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0
0
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0
0
0
0
0
0
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0
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長崎県
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鹿児島県宮崎県諸県地方
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琉球祖語
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1
1
比較言語学的方法による日本語・琉球諸語諸方言の祖語の再建および系統樹の構築」第 1回打ち合わせ・検討会
「日本語諸方言の系統関係について」2017 12 24 日(於:国立国語研究所)
15
3.結果
3.1 結果
CLIQUE 2つの系統樹(Figure 6-7)を、dollop 89 の系統樹(そのうちのひとつ
Figure 8 に示す)を出力した。
CLIQUE 2つの系統樹では、それぞれの系統群を互いに矛盾しない形で定義する
改新は、全 101 51 であると判断された。
CLIQUE(1)
1, 2, 3, 7, 8, 9, 14, 15, 17, 18, 19, 21, 22, 25, 27, 28, 29, 30, 31, 32, 34, 35, 41, 59,
68, 69, 70, 72, 75, 76, 77, 78, 79, 80, 81, 82, 83, 84, 85, 86, 87, 88, 89, 90, 91, 92,
93, 94, 95, 96, 97, 98, 99, 100, 101
CLIQUE(2)
1, 2, 3, 7, 8, 9, 14, 15, 17, 18, 19, 21, 22, 25, 27, 28, 29, 30, 31, 32, 34, 47, 48, 59,
68, 69, 70, 72, 75, 76, 77, 78, 79, 80, 81, 82, 83, 84, 85, 86, 87, 88, 89, 90, 91, 92,
93, 94, 95, 96, 97, 98, 99, 100, 101
DOLLOP 89 もの系統樹を出力したが、その差は端点(すなわち各方言)に近
い節点にあり、より古い分岐には差がない。すくなくとも第 4節に要約する特
徴は共有している。
CLIQUE による 2つの系統樹と DOLLOP による系統樹との間の主要な差異は、九州の
諸方言の系統関係にある。特に壱岐-対馬方言の系統的位置に顕著な差がみられる
Figure 5。( DOLLOP による 89 の系統樹は、九州方言に関しては安定して 1つの
解(Figure 5(c))を出力した。)
a. CLIQUE(1) b. CLIQUE(2) c. DOLLOP
Figure 5: Different results for Southern Japanese branch: CLIQUE (a, b) and DOLLOP (c).
比較言語学的方法による日本語・琉球諸語諸方言の祖語の再建および系統樹の構築」第 1回打ち合わせ・検討会
「日本語諸方言の系統関係について」2017 12 24 日(於:国立国語研究所)
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Figure 6: Result of the program CLIQUE (1). Red letters indicate the monophyletic Nuclear Eastern
Japanese languages. In addition to the Macro-Eastern Japanese and the Southern Japanese branches,
the Nuclear Eastern Japanese languages are consistently defined by both DOLLOP and CLIQUE, with its
membership remaining exactly the same. Also, both programs demonstrate that Ryukyuan and the
Kagoshima dialect are sister languages constituting a monophyletic group, and that Hachijo is a
member of the Nuclear Eastern Japanese.
比較言語学的方法による日本語・琉球諸語諸方言の祖語の再建および系統樹の構築」第 1回打ち合わせ・検討会
「日本語諸方言の系統関係について」2017 12 24 日(於:国立国語研究所)
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Figure 7: Result of the program CLIQUE (2). Red letters indicate the monophyletic Nuclear Eastern
Japanese languages. The difference between CLIQUE(1) (Figure 6) and CLIQUE (2) (Figure 7) lies in
the positions of each dialect within the Southern Japanese, especially the position of the Iki-Tsushima
dialect.
比較言語学的方法による日本語・琉球諸語諸方言の祖語の再建および系統樹の構築」第 1回打ち合わせ・検討会
「日本語諸方言の系統関係について」2017 12 24 日(於:国立国語研究所)
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Figure 8: Result of the program DOLLOP. Red letters indicate the monophyletic Nuclear Eastern
Japanese languages.
比較言語学的方法による日本語・琉球諸語諸方言の祖語の再建および系統樹の構築」第 1回打ち合わせ・検討会
「日本語諸方言の系統関係について」2017 12 24 日(於:国立国語研究所)
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4.議論と結論
4.1 琉球語の系統的位置
南日本語派のひとつであり、日本祖語=日琉祖語)からの最初の分岐「琉球語派」
ではない。
南九州語(≈薩隅方言)と姉妹関係にある。
4.2 八丈語の系統的位置
中核東日本語のひとつにすぎず、日本祖語(=日琉祖語)からの最初の分岐「八丈
語派」ではない。
八丈語は、奈良時代の東日本の方言「上代東国語」の特徴を最もよく保持している
ので、「上代東国語」の系統に属する唯一の現代方言とする見解(服部 1968; Kupchik
2011
5
)が広く受け入れられているが、今回の結果はこれを支持しない。
八丈語が上代東国語の特徴を最もよく保持している事実は、八丈語が中核東日本
語の一員とみなした上でも説明可能である。
上代東国語も八丈語も現代の糸魚川浜名湖線以東の諸方言も単系統群(中核
東日本語)を形成する。
八丈島以外で用いられる中核東日本語諸方言(長野方言や東京方言など)は、
地理的位置から中央語の影響をより強く受け、したがって、中核東日本語に固
有の特徴を、八丈語より多く失った。
八丈語をめぐる見解の相違は究極的には、本州側の東日本諸方言が中央語と類似
している事実を、言語の置き換えの結果と見るか(通説)、言語の置き換えは起き
ず、強い影響を受けた結果とみるか(本稿の説)にある。
4.3 いわゆる本土方言(=日本語)の系統的位置
本土方言(琉球語と八丈語を除いた語群)は側系統群に過ぎず、系統的分類群とし
ては成立しない。
日本列島の諸言語を対象とした従来の比較言語学的研究は、本土方言(=日本語)
という単系統群を大前提としていたが、再考が必要である。
5
“Despite EOJ [Eastern Old Japanese –Y.I] historically covering an area that includes modern day Tokyo, the only
attested descendant of this language variety in modern Japan is the poorly documented language spoken on the
Hachijō islands. The EOJ dialects on Honshū, the main island of Japan, were swallowed up by the Kyoto dialect that
became the standard language during the Heian period (794-1185 CE) and spread across all of Japan. Some aspects of
EOJ still linger in modern Japanese as substratum elements, however [...].” (Kupchik 2011: 9).
比較言語学的方法による日本語・琉球諸語諸方言の祖語の再建および系統樹の構築」第 1回打ち合わせ・検討会
「日本語諸方言の系統関係について」2017 12 24 日(於:国立国語研究所)
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4.4 「その他」に属する諸方言の系統的位置
いわゆる「近畿方言」(の大部分)「中国方言」「四国方言」「雲伯方言」の系統関
係は不明。
入れ子状の改新(言語特徴のマトリョーシカ分布)が特定できない
6
日本祖語の故地homelandがこの地域にある可能性が高いことが関係しているだ
ろう(4.5 参照)
4.5 日本語族の故地と移住経路
日本語族の故地(homeland)は Figure 9 で青で塗られた地域のどこかであろう。
少なくとも、東日本、西南部九州、琉球列島ではありえない。
ひとつの系統は東へそして北へ移動し本州北端まで達し(拡大東日本語派)、もう
ひとつの系統は南へ移動し与那国島まで達した(南日本語派)と考えられる。
Figure 9: The homeland and migration routes of the Japanese/Japonic people
6
ただし*naba「茸」が九州・琉球とともに、広島県、愛媛県、高知県、島根県岩見地方、山口県に分布
しており(LAJ 245、さらに*tutu/*tudu「唾」も九州・琉球とともに、島根県岩見地方、山口県に分布し
ている(LAJ 118。定義上、これはマトリョーシカ分布であり、もしこれらの語の分布が、借用の結果で
もなく、並行変化の結果でもなく、そしてこれらの語が古形でないのであれば、問題の諸方言が単系統群
を形成することになる。すなわち、「拡大南日本語」として、九州・琉球の諸言語に、(出雲地方を除い
た)中国地方西部、四国西部(瀬戸内海の島々を含む)を加えた単系統群が認められる。*tutu/*tudu *tu
「唾」の reduplication であろうから並行変化の可能性もある。*naba「茸」は並行変化ではないだろう
が、古形の可能性もある(この語の語源論は坂口 1996 に要約されている)*naba *tudu 以外にも当該
地域にはこの地域に特有の語が相当数分布している(*ta-io「目高・鮒」*pijosu「鵯」*atada「急」
*pogas-「穴を開ける」。今後の課題はこれらが、借用語か否か、借用語でないのなら古形か改新かを決定
することである。
比較言語学的方法による日本語・琉球諸語諸方言の祖語の再建および系統樹の構築」第 1回打ち合わせ・検討会
「日本語諸方言の系統関係について」2017 12 24 日(於:国立国語研究所)
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引用文献
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https://researchmap.jp/?action=cv_download_main&upload_id=116897
五十嵐陽介(2017「九州・琉球同源語調査票」一橋大学大学院五十嵐陽介ゼミ・終日ゼミ
発表原稿(2017 912 日:一橋大学)
https://researchmap.jp/mu90vd43k-1856949/#_1856949
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「日本語諸方言の系統関係について」2017 12 24 日(於:国立国語研究所)
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比較言語学的方法による日本語・琉球諸語諸方言の祖語の再建および系統樹の構築」第 1回打ち合わせ・検討会「日本語諸方言の系統関係について」2017 12 24 日(於:国立国語研究所)
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別表 1-a: 九州・琉球同源語調査票(2017 12 月改訂版)Num1 は本稿表 Xの順序。Num2 は「九州・琉球同源語調査票」第1版(五十嵐 2017)の順序。鹿児島県串木野のデータは黒木
邦彦氏提供(2017 年調査)
Num1
Num2
琉球祖語形
Tone
意味
多良間
伊良部
池間
石垣
竹富
鹿児島串木野
32
68
*gai
動詞接辞(移動の目的)
(asɨbi)-ga (ikɨ)
ga
(mi)-ke
33
57
*bakaw-
BC
奪い合う。奪う。
baku
bahoː
//bakaw-//
ba[goːŋ
bako-(te)
34
60
*ozom-
BC
目覚める
udum
uzum
//udʒum-//
ʔu[dzuŋgi]ruŋ/
ʔu[dzuŋgiŋ
uzumuŋ/uzumiŋ/u
zumiruŋ/
uzu-(da)/
ozu-(da)
35
58
*jokow-
BC
休憩する
jukuː
jukωː
[jukoːŋ
juːŋ
jokuw-(aŋka)
36
5
*poge
A
pugi
hoge
37
61
*pum-
A
(履物を)履く
fum
[ɸumu]ŋ_1A
ɸumuŋ/ɸunuŋ
ɸum(-aŋka)
38
2
*gauri(-a)
C
瓜。ツルレイシ。
goːra
goːra
gaura
[goːja
goːja
goi
39
4
*kusabi
C
ベラ(魚)
fusabɨ
40
6
*tuburame ?
C
蝸牛
nnami/ mnami
tsɨnami
[tsɨdami
ʃidəmi
41
11
*irike
B
鱗。ふけ。
ilki
iɨki
iːki
([ʔiragɨ)
(iru)
42
3
*jokoi
BC
休み
jukuu
jukωɨ
jukui
ju[kui
jukui
juku
43
59
*obukure-
A
溺れる
uːffiɨ
//uːffi-//
[ʔoɸ]ɸiŋ/
[ʔoɸ]ɸiruŋ
uppiŋ/
uppiruŋ
okkure(-ta)
44
1
*ado
B
adu
adu
adu
[ʔadu
ədu
ado/ adogeŋ
45
7
*naka-jokoi
C
中休み
nakajukuː
nahajukωɨ
[nakajukui
nəkəjukui
nakajuku
46
8
*paru
B
平地。耕地。
paru
paru
hai
hai
47
14
*kobu
C
蜘蛛
kubu
kωv
[kubu
koʔ
48
17
*peguro
A
鍋の煤
pingu
piŋgω
[pi]ŋgu
heguro
比較言語学的方法による日本語・琉球諸語諸方言の祖語の再建および系統樹の構築」第 1回打ち合わせ・検討会「日本語諸方言の系統関係について」2017 12 24 日(於:国立国語研究所)
24
別表 1-b: 九州・琉球同源語調査票(2017 12 月改訂版)続き.
Num1
Num2
琉球祖語形
Tone
意味
多良間
伊良部
池間
石垣
竹富
鹿児島串木野
49
21
*ta-mina
B?
田螺
taːmna
taːmna
taːnna
[taːnna
tamina
50
69
*kara
名詞接語(移動の手段)
(funi)=kara (ikɨ)
(hikoːki)=kaː
(ifu.)
([ɸuni])=kara
([hari]joː.)
([çikoːki])=hara(=
du kiːra.)
(ɸune)=kara;
(kuima)=kara
51
15
*mina
B
巻貝
mna
mna
nna
[ʔnna
minaː
mina
52
10
*ija
?
胞衣(えな)。胎盤。
ɨza
ɨza
[ʔiːjaː
ija/ ira
53
12
*jori-tuki
A
うるう月
juldzɨkɨ
[jurɨ]tsɨkɨ
jurikkiː
joitsɨʔ
54
20
*sone
C
海中の魚の集まる瀬
ʃuni
suni
suni
su[ni
sone
55
9
*gore
A
滓。沈殿物。
guri
gωri
guri
gu[ri
guri
56
23
*abosi
C
田畑の畔
abusɨ
[ʔabusɨ
əbuʃi
57
25
*kara-pai
A
薪の灰
karabaɨ
karapaɨ
karapai/karahai
[kara]bai
58
62
*kame-
BC
頭にのせる
kamil
kamiɨ
//kami-//
ka[miŋ ka[miruŋ
kəmiruŋ
59
64
*puke-
BC
間引く
ɸu[kiruŋ
ɸuker(-aŋka)
60
22
*tanasi
A
単衣もの
[tana]sɨ
61
66
*kakiaw-
BC
間に合う
kakjoː
([kakjaːsɨŋ
kəkjoŋ
62
34
*jani-moti
C
鳥もち
jəmmutʃi
jammoʔ
63
65
*kazime-
BC
片づける
kazɨmiɨ
kadʒimiruŋ
64
48
*suba
B
sɨba
sɨba
sɨba
ɸu[tsɨ]suba
subə
suba
65
37
*kjau-tuka
B
地震の時の呪言
[kjoːtsɨka
66
26
*paberV
C?
pabiru
pabiɨ
[pabiru
kəbiraː
67
27
*uwara
A
上の方
waːra
[ʔo]ːra
oːrə
比較言語学的方法による日本語・琉球諸語諸方言の祖語の再建および系統樹の構築」第 1回打ち合わせ・検討会「日本語諸方言の系統関係について」2017 12 24 日(於:国立国語研究所)
25
別表 1-c: 九州・琉球同源語調査票(2017 12 月改訂版)続き.
Num1
Num2
琉球祖語形
Tone
意味
多良間
伊良部
池間
石垣
竹富
鹿児島串木野
68
18
*podo
A
身長
pudu
pudu
hudu
[ɸu]du
ɸudu
hodo
69
63
*katame-
BC
担ぐ
katamil
katamiɨ
ka[tamiŋ
ka[tamiruŋ
kətəmiŋ/
kətəmiruŋ
70
16
*pada
?
時間の程。~頃。
pada
pada
hada
[pada
hada
71
70
*-sa su-
形容詞を動詞化
(pazɨkas)-sa asɨ
(kamaras)-sa asɨ
72
cf. 79 *iri < *igiri
73
13
*kazja-
C
蚊・蚋
gadʒam
kazam/gazam
kadʒan
[gadzaŋ
kadʒ
74
24
*dou
C
自分自身
duː
duː
duː
[duː
duː
75
32
*gatunV
?
鯵。マアジ。
gatsɨnu
[gattsuŋ
gəʧ
76
45
*pare-jaku
B
厄の晴れること。後厄。
harijaku
hərijəku
harejaʔ
77
51
*tamasi
A
分け前
[ta]masɨ
təmaʃi
78
28
*abo
A
洞穴。縦穴。崖。
abu
abu
abu
[ʔa]bu
əbu
79
33
*iri
B
il
iɨ
[ʔiːrɨ
80
39
*kutime
C
疣。虫刺されの跡。
futʃibi
futsɨbi
futsɨbi
ɸu[tsɨbeː
çisubeː
81
52
*teda <*tendau
C
太陽
tida
tida
tida
[tida
tidə
otendosaa
82
42
*obi
C
桶や樽の箍
ubɨɨ
ubɨː
[ʔubɨ
83
47
*sikiri
C
海鼠
tsɨtsɨː
sɨtsɨː
sɨtsɨː
sɨ[kɨ]rɨ
84
40
*mata-basi
B
またぐら
matabaʃi
matabaʃi/matabai
matabasɨ
ma[tabaʃi
mətəbəʃi
matabai
比較言語学的方法による日本語・琉球諸語諸方言の祖語の再建および系統樹の構築」第 1回打ち合わせ・検討会「日本語諸方言の系統関係について」2017 12 24 日(於:国立国語研究所)
26
別表 1-d: 九州・琉球同源語調査票(2017 12 月改訂版)続き.
Num1
Num2
琉球祖語形
Tone
意味
多良間
伊良部
池間
石垣
竹富
鹿児島串木野
85
38
*kobusime
C
コウイカ
kubusɨmi
[kubusɨmeː/
[kumusɨmeː
kuːʃube
86
49
*sugari
B
イイダコ
sɨgaɨdakωgai
sɨgai
sunəi
87
53
*tikura
?
鯔の子
tsɨffa
dzɨkura
88
54
*uti-ame
B
屋内に降り込む雨。
vtsɨami/vtʃami
[ʔutsɨʔa]ːmi
utʃiəmi
uttʃame
89
55
*uti-ti
B
内出血。打ち身。
[ʔutsɨtsɨ
utʃiʃ
uttʃi
90
36
*ke-waki
?
木挽き。木を挽く職業。
kiːbatsɨ
kiːbəi
91
44
*pada-moti
B
肌触り。気候。
[hadamutsɨ
hədəmutʃi
hadamoʔ
92
30
*bake?
C
竹製の籠・笊 < 蓬莱竹)
baːki
baːki
baːki
[baːki
baːki
93
31
*butamasi
?
用心が足りないこと。愚か者。
bu[tamasɨ
94
50
*taka-mina
?
タカセガイ。ギンダカハマガイ。
taʔamna
takamina
95
35
*karakara
C
酒器の一種。お銚子。徳利。
kərəkərə
96
43
*okka
C
借金。負債。
ukka
ukka
?u[ka
ukə
97
46
*siake
A
開墾
[ʔara]sɨʔaki
ʃiake
98
56
*wogi
B?
サトウキビ
buːgɨ
buːzɨ
buːzɨ
99
67
*sudas-
BC
孵化する
sɨdasɨ
[sɨdasɨŋ
ʃidəsuŋ
100
29
*amamu
C
ヤドカリ
amam
amam
aman
ʔaːmantsaː
amantsə
101
41
*ne-no-pa-bosi
A
北極星
ninupabusɨ
ninupabusɨ
[niːnuɸa]busɨ
ni(ː)nuɸəbuʃi
比較言語学的方法による日本語・琉球諸語諸方言の祖語の再建および系統樹の構築」第 1回打ち合わせ・検討会
「日本語諸方言の系統関係について」2017 12 24 日(於:国立国語研究所)
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別表 2 琉球語諸方言の比較のために用いたデータ.
語群
言語名
方言
文献
北琉球
奄美語
奄美大島大和浜方言
長田・須山(1977-1980
喜界島赤連方言
松森(2012
沖永良部島諸方言
上野(1998,松森(2000, 2012
与論島東区方言
菊・高橋(2005
沖縄語
伊江方言
生塩(2009
今帰仁方言
仲宗根(2011
金武方言
松森(2008,松森(2012
首里方言
国立国語研究所(2001
南琉球
宮古語
伊良部方言
富浜(2013
池間方言
筆者のフィールドノート
多良間方言
筆者のフィールドノート,松森(2010
八重山語
石垣島四箇村方言
宮城(2003
竹富方言
前新他(2011
与那国語
与那国方言
上野(2009
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This paper is a response to criticism by Winter in an earlier issue of this journal of Sagart’s discussion of the higher phylogeny of Austronesian. I give examples outside of Austronesian of compound numerals being affected by several apparently irregular changes; argue that the number of changes proposed in my Austronesian model is realistic; explain the order of establishment of disyllabic numerals as depending on two factors, cardinal order and number of competitors; give Austronesian examples showing that the drive to disyllabism does apply to morphologically complex forms; and ascribe the limited similarities between the phylogenies of Blust and Ross to chance. Finally, I claim that the only realistic explanation of the nesting of six related isoglosses is a sequence of innovations.
Article
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This paper presents a new higher phylogeny for the Austronesian family, based on three independent lines of evidence: the observation of a hierarchy of implications among the numerals from 5 to 10 in the languages of Formosa and in PMP; the finding that the numerals *pitu '7', *walu '8', and *Siwa '9' can be derived from longer additive expressions meaning 5+2, 5+3, and 5+4, preserved in Pazeh, using only six sound changes; and the observation that the phylogeny that can be extracted from these and other innovations—mostly changes in the basic vocabulary—evinces a coherent spatial pattern, whereby an initial Austronesian settlement in NW Taiwan expanded unidirectionally counterclockwise along the coastal plain, circling the island in a millennium or so. In the proposed phylogeny, Malayo-Polynesian is a branch of Muic, a taxon that also includes NE Formosan (Kavalan plus Ketagalan). The ancestor language, Muish, is deemed to have been spoken in or near NE Formosa. Further evidence that the Tai-Kadai languages, contrary to common sense, are a subgroup of Austronesian (specifically: a branch of Muic, coordinate with PMP and NE Formosan) is presented.
Article
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Languages, like genes, evolve by a process of descent with modification. This striking similarity between biological and linguistic evolution allows us to apply phylogenetic methods to explore how languages, as well as the people who speak them, are related to one another through evolutionary history. Language phylogenies constructed with lexical data have so far revealed population expansions of Austronesian, Indo-European and Bantu speakers. However, how robustly a phylogenetic approach can chart the history of language evolution and what language phylogenies reveal about human prehistory must be investigated more thoroughly on a global scale. Here we report a phylogeny of 59 Japonic languages and dialects. We used this phylogeny to estimate time depth of its root and compared it with the time suggested by an agricultural expansion scenario for Japanese origin. In agreement with the scenario, our results indicate that Japonic languages descended from a common ancestor approximately 2182 years ago. Together with archaeological and biological evidence, our results suggest that the first farmers of Japan had a profound impact on the origins of both people and languages. On a broader level, our results are consistent with a theory that agricultural expansion is the principal factor for shaping global linguistic diversity.
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Languages, like genes, provide vital clues about human history. The origin of the Indo-European language family is "the most intensively studied, yet still most recalcitrant, problem of historical linguistics". Numerous genetic studies of Indo-European origins have also produced inconclusive results. Here we analyse linguistic data using computational methods derived from evolutionary biology. We test two theories of Indo-European origin: the 'Kurgan expansion' and the 'Anatolian farming' hypotheses. The Kurgan theory centres on possible archaeological evidence for an expansion into Europe and the Near East by Kurgan horsemen beginning in the sixth millennium BP. In contrast, the Anatolian theory claims that Indo-European languages expanded with the spread of agriculture from Anatolia around 8,000-9,500 years bp. In striking agreement with the Anatolian hypothesis, our analysis of a matrix of 87 languages with 2,449 lexical items produced an estimated age range for the initial Indo-European divergence of between 7,800 and 9,800 years bp. These results were robust to changes in coding procedures, calibration points, rooting of the trees and priors in the bayesian analysis.
Article
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In The Descent of Man (1871), Darwin observed “curious parallels” between the processes of biological and linguistic evolution. These parallels mean that evolutionary biologists and historical linguists seek answers to similar questions and face similar problems. As a result, the theory and methodology of the two disciplines have evolved in remarkably similar ways. In addition to Darwin's curious parallels of process, there are a number of equally curious parallels and connections between the development of methods in biology and historical linguistics. Here we briefly review the parallels between biological and linguistic evolution and contrast the historical development of phylogenetic methods in the two disciplines. We then look at a number of recent studies that have applied phylogenetic methods to language data and outline some current problems shared by the two fields.
Article
Ce travail est une description linguistique du dialecte d'Ōgami, une variété de miyako, une langue japonique en voie de disparition parlée dans le sud des Ryūkyū. Les données ont été recueillies sur le terrain par l'auteur. Après avoir situé le dialecte d'Ōgami dans son contexte linguistique, géographique et historique, l'auteur donne une description synchronique de ce parler. Sur le plan phonologique, ce dialecte se distingue par son inventaire segmental réduit et par la caractéristique rarissime dans les langues du monde de posséder des syllabes et des mots entiers sans aucune voyelle ni son voisé. L'analyse des travaux précédents considérant que ces syllabes ont pour noyau des voyelles dévoisées est réfutée sur la base d'arguments acoustiques et morphophonologiques. Plusieurs chapitres sont consacrés aux différentes parties du discours, aux marqueurs de cas et de rôles pragmatiques, ainsi qu'à leur morphologie. Les principaux faits de syntaxe du syntagme nominal et de la phrase sont ensuite décrits. Une attention particulière est accordée aux constructions séquentielles et à la désubordination des converbes : certains converbes ont en effet acquis la possibilité d'apparaître à la tête de phrases indépendantes, notamment avec une valeur de passé. Dans une partie sur la diachronie, l'auteur entreprend une classification phylogénétique des langues ryukyu puis des dialectes de Miyako. L'auteur procède ensuite à la reconstruction du proto-miyako sur la base de cinq dialectes. Les systèmes phonologique, casuel et verbal sont reconstruits. Le proto-miyako est ensuite comparé au japonais et plusieurs contributions à la reconstruction du proto-japonique sont proposées.