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福岡県におけるアワテコヌカアリ Tapinoma melanocephalumの記録 Record of Tapinoma melanocephalum in Fukuoka Prefecture, Kyushu, Japan

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上記 2種はそれぞれ対馬市あるいは長崎県では過去の分布記録が認められなかったので,以下
に標本の採集データを示し,記録を報告する.
標本(一財)然環境研究センターで保管しているが,九州大学昆虫学教室に移管される
定である
[標本採集デー]
ホソアリガタバチ亜科 Scleroderminae
シバンムシアリガタバチ Cephalonomia gallicola (Ashmead, 1887)
4♀,長崎県対馬市上対馬町古里,2. VI. 2017辻井健太郎採集
国内における本種の記録は散発的だが汎世界的に分布が確認されており,外来種の可能性も
示唆されてい(寺山・須田,2016).長崎県本土からは報告がある(山元2017が,対馬市
では初記録である.シバンムシ類に寄生する事が知られており,1976 に日本国内での分布
確認されて以降,一般的に刺傷被害の多いアリガタバチとされ衛生害虫として広く認識される
ようになった(伊藤,1980松浦;1981山崎,1982).
ヒメアリガタバチ亜科 Epyrinae
キアシアリガタバ Laelius yamatonis Terayama, 2006
1♀,長崎県対馬市上対馬町泉16. XI. 2018,辻井健太郎採集.
日本国内では本州から九州にかけて記録があり,韓国においても確認されているLim et al.,
2010寺山・須田,2016.本種はカツオブシムシ類に寄生することが知られており屋内でも
しばしば確認される.
[引用文献]
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50 (Hym.: Formicidae) 岡県におけるアワテコヌカアTapinoma melanocephalumの記
久末 遊(九大院・生資環・昆虫)
アワテコヌカアリ Tapinoma melanocephalum (Fabricius) は英語で Ghost antと呼ばれる体長
1.5 mm 小型のアリで,褐色と淡黄色の二色性を示すことから日本産他種とは容易に識別でき
る.本種の原産地はアジアともアフリカともいわれるが,正確な原産地は不明である(Smith,
1965; Wilson and Taylor, 1967).1887 年にイギリスで確認されて以降ヨーロッパを中心に生息が
報告され,近年は世界中に分布を広げているBillups, 1887; Wetterer, 2009; Klimes and Okrouhlik,
2015; Lee et al., 2017).日本で見られるものも外来であるとされ(Yamauchi and Ogata, 1995),
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古くから南西諸島や鹿児島県で見られ(寺西,
1927山根ら,19941999),また動植物園
やマンションといった屋内環境から確認され
てい(寺西,1927東,19381994;寺山・
奥谷1992;近藤,1996喜田,2003).1990
年代以降は野外からも報告されるようになり,
東京(矢澤2016愛知県(横井・上手,
2017島県(榎木1993中村ら,1993),
山口(辻2018a媛県久末2017),
高知県(辻,2018b),宮崎県(寺山・奥谷
1992緒方,1995;那須,2008)から確認さ
れている.九州本土においては上述の通り宮
崎県と鹿児島県でのみ得られており,福岡県
ではこれまで見つかっていない(Park et al.,
2014).筆者は同県の数地点において本種を
採集しているので報告する.報告に用いた標
本は全て九州大学農学部昆虫学教室に保管し
た.
[採集標本デー]
春 日 市 春 日 公 園 牛 頸 川 ( 33.528524N,
130.473883E3w29. XII. 2015
福岡市東区箱崎ふ頭(33.637993N,
130.408254E10w3. XI. 2018
福岡市早良区室見中公園33.579349N, 130.339122E2w3. XI. 2018
福岡市西区愛宕浜33.591837N, 130.3298E),15w11. XI. 2018
春日市の個体は,綺麗に草刈りがなされた河川そばの緑地にて乾燥した枯れ草を篩ったとこ
ろ得られた(1).東区の個体は,交易が盛んなふ頭の歩道の植栽帯に行列が見られた.早良
区の個体は,マンションに囲まれた都市公園内のマテバシイ Lithocarpus edulis の幹上を歩行して
いた西区の個体は集合住宅地の歩道脇に巣が見られ,え間なく働きアリが出入りし,列を
つくっていた(図 2.いずれも採集日は冬期であり,特に春日市における採集地の当日の気温
は平均気6.5 度,最高気温でも 9.9 ,最低気温3.5 度と寒冷であった(福岡管区気象台,
2018このような低温でも本種が野外で活動できることは,北部九州において本種の越冬が可
能であることを示唆している.かしながら,集日以降の本種の確認はできておらず,後の
調査が望まれる.
本種はこれまで電話器に営巣する,自動車に侵入しゴミに群がる,団に侵入し咬みつくと
った報告があることから(寺山・奥谷1992;辻,2018b),家屋害虫や不快害虫となることが
考えられ本種の分布拡大はこのような被害の増加に繋がることが示唆される.また福岡県で
は外来アリが侵入しやすい空港や港湾を中心にこれまで数多くのモニタリング調査がなされて
いる(例えば環境省自然環境局,20102015原田ら,2017),これらの調査で本種が見つ
かったことはなく入の初期段階であることが考えられる.本種は結婚飛行せず巣内交尾を行
うことが知られるためYamauchi and Ogata, 1995爆発的な分布拡大は考えにくいが留意が
要である
上図 1,下2.図 1.枯草上を歩くアワテコヌカアリ
2行列をつくるアワテコヌカアリ
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末筆ながら,アリ類の情報や文献についてご教示いただき,原稿を校閲していただいた細石
吾博(九州大学,文献入手にあたってお世話になった吉野優希氏(北海道大学)に厚く御礼
申し上げる.
[引用文献]
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50 (Lep: Monotrysia) 彦山で近年採集された原始的な小蛾類
屋宜禎央(九大院・昆虫)・山口大輔・外村俊輔(九大・昆虫)
・広渡俊哉(九大院・昆虫)
英彦山は,北岳・中岳・南岳からなる標高約 1200m の山塊で,福岡県田川郡添田町と大分県
中津市山国町との県境近くに位置する.昭和 25 に耶馬日田英彦山国定公園に指定され,県内
では貴重なブナ林が広がるなど生物多様性にとって重要な地域である(福岡県, 2018).標高
800m 上の地域は冷温帯気候で夏緑樹が自生し,標高約 800m 以下の地域は暖温帯気候で,
照葉樹と夏緑樹との混交林からなる多様な環境が見られる.昭和 11 に九州大学附属彦山生物
学実験所現在は彦山生物学実験施設)が設置されて以来,様々な昆虫の分類群について相調査
が行われてきた.英彦山の小蛾類については,彦山昆蟲目録(黒子19571959や福岡県産蛾
類目(河村1984)で記録されており,県内随一の小蛾類が多様な地点であると言える.その
一方1991 年の大型台17 号・19 号や過密度となったシカによる食害などにより,英彦山の
環境は大きく変わりつつある(熊谷2010).しかしながら,環境が変化した近年の小蛾類の記
録は各分類群の分類学的研究で用いられた断片的なものがあるにすぎないそこで今回は小
蛾類の中でも原始的な分類群に絞って,近年著者らによって採集された標本をもとに報告する.
ラベルデータの日付の後LT とのみ記したものは彦山生物学実験施設でライトトラップに
って得られた標本である.標本は全て九州大学昆虫学教室が保管している.
Micropterigidae コバネガ科
1. Paramartyria immaculatella Issiki, 1931 モンコバ
22, 23. V. 2014, S. Yagi; 1, 5. VI. 2014, S. Yagi; 1, 27. V. 2018, S. Tomura.
2. Neomicropteryx bifurca Issiki, 1953 ンダンキョウヒロコバネ(Fig. 1
21, 7. V. 2014, S. Yagi; 5, 8. V. 2014, S. Yagi; 7, 22. V. 2014, S. Yagi; 1, 23. V. 2014, S.
Yagi; 1, 27. V. 2018, S. Tomura.
本種は,彦山生物学実験施設近辺(約 650m)で 5月上旬に採集され前坊(高住神社近辺
800m)では 5月下旬に採集され5上旬には確認できなかった.このように,標高が高い
ほど発生時期が遅れる傾向がある.なお,黒子1957)など過去の文献でマツムラヒロコバネ
N. matsumurana して英彦山から記録されたものは本種である(Hashimoto, 2006).
Eriocraniidae スイコバネガ科
3. Eriocrania komaii Mizukawa, Hirowatari & Hashimoto, 2006 ラサキマダラスイコバ
2, 30. IV. 2018, S. Yagi. [九州初記録] Fig. 2
本種は,Mizukawa et al. (2006) により大阪府南部の和泉葛城山で採集され3個体に基づいて
記載されその後,山口県から記録が追加されただけで九州からは未記録だった今回採集さ
れた 2個体は,豊前坊から北岳へ向かう尾根部の登山道沿いに自生したウラジロノキをスウィー
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