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論文
− 票 の 平 等 に つ い て*
経済学的視 点か ら
和 田淳 一 郎 躰
問題の所在
衆 議 院 の選 挙 制 度 が 変 わ っ た.次 回 の選 挙 は,
表1に 示 され た よ うに,47都 道 府 県 に まず1議 席
ず つ 配 り,残 り を最 大 剰 余 方 式 で 比 例 配 分 した 総
計300の 小 選 挙 区 と,全 国11の 比 例 区 に合 計200議
席を最大剰余方式で比例配分 した比例代表区で,
合 わ せ て500議 席 が 争 わ れ る こ とに な る.こ の 小
選 挙 区 と比例 代 表 制 を一 諸 に使 う とい う小 選 挙 区
比 例 代 表 並 立 制 とい うルー ル 自体 につ い て は,本
誌 で もReed(1994)に コ メ ン ト(和 田(1994))
を加 え た こ とが あ る し,別 に 自分 自 身 の 論(和 田
(1995))を 構 築 した こ と も あ るの で,こ こ で は 新
制度の もとで一票の不平等を固定化す るためのテ
クニ ッ ク と して取 り入 れ られ て し まっ た,各 県 へ
の 議 員 定 数 配 分 方 式 の 問 題 に つ い て論 じた い と思
う.
選 挙 制 度 を変 え れ ば,そ れ に 応 じて 定数 配 分 ・
選 挙 区割 も し な くて は な らな い,そ の 方 法 は,人
口比 例 を規 範 と して,ア メ リカ で は各 州 に 定 数 を
割 り振 る こ とか ら始 め て い る し,日 本 で も明 治 以
来 県 ご とに まず 定 数 を割 り振 る こ とか ら始 め るの
が 範 とな って い る(府 県 単 位 ・人 口比例 の 原 則).
実 際,戦 前 は 頻 繁 に選 挙 制 度 を変 え て い た ため に,
定 数 “再 ” 配 分 を行 うこ とな く,少 な く と も県 単
位 の 一 票 の不 平 等 は 著 しい も の とは な ら な か っ
た1).
議 員 定 数 の 人 口比 例 配 分 を 自明 の “公理 ” とす
れ ば,各 県(州)へ の 整 数 値 議 席 配 分 の 問 題 に つ
い て はBalinski=Young(1982)に よ り解 明 さ れ
て お り,そ の 内容 は,イ ギ リスや 日本 の 実 例 に即
す る 形 で も そ れ ぞ れ の 国 に紹 介 され て い るz)の で,
学 問 的 に は 解 決 済 み の 問題 で あ る とい って よ い.
英 米 で は,す で に 次 の ス テ ップ で あ る州 内 の 区割
が 研 究 者 の 興 味 の 対 象 で あ る3).し か し,残 念 な
が ら,こ こ で はBalinski=Young(1982,p.1)が
自明 の こ と と して論 を始 め る “公 理 ” とし て い る
亭 本論文 は,横 浜市立大学研究奨励交付金による研究成果の
一部 であ る.草 稿は統計研 究会 において報告 され た.
貴重な コメン トを加 えて下 さった飯野靖 四(慶 應大学),井
堀利宏(東 京大学),牛 丸聡(青 山学 院大 学),吉 野 直行(慶
應大学)の 諸先 生 に 感 謝 した い.
韓 著者は横浜市立大学助教授.
※ 本稿 は1995年9月 受理.
1)Wada(1994,1995)参 照.
2)McLean-Mortimore (1992),和 田(1991),越 山(1995)
な ど.な お,表2に 今 回 の議 貝 定 数 配 分 に 利 用 さ れ た1990年
の 国 勢 調 査 デー タ に よ る300議 席 の 配 分 の 試 算 結 果 を 示 し た.
3)本 誌 で も,森 脇(1992,1993)が 紹 介 を 行 って い る.
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論文:− 票の平等について
表1新 選挙制度における議員定数配分 表2小 選挙区への議員定数配分
New:今 回 の 改革 で の小 選 挙区 議 員定 数 配分
Ham:ハ ミル トン方 式(最 大 剰余 方 式,ニ ュー マ イヤ ー 方式)
Adam:ア ダム ス方式(切 り上げ 方式)
Deam:デ ィー ン方式(調 和 平 均 方式)
Hill:ヒ ル方 式(幾 可 平均 方 式,均 等 比例 方式,ア メ リカ下 院方式)
Web:ウ ェ ブ ス ター 方式(四 捨五 入 方 式,サ ン=ラ グ方 式,奇 数 方 式)
Jef=ジ ェ フ ァー ソ ン方 式(切 り捨 て 方式,ド ン ト方 式)
(個々 の 配分 方 法 につ い ては 和 田(1991)を 参 照 され た い。)
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公共選択 の研 究 第26号1995年
議員定数配分の人口比例の原則について論ぜ ざる
をえな い.
すでに新聞 等で報 じられて いる とお り,今 回の
小選挙 区比例代 表並立制 にお け る小 選挙 区の選 挙
区割 は,最 初 か ら選挙 区間 の一票 の格 差 が1:2
を越 えて いる.そ れ ど ころか,表1に 示 され た よ
うに,小 選挙 区 と比 例代 表 の配 分議 員 定数 を合 計
す ると,人 口の よ り少 ない 東海 地 区が,人 口の よ
い多い南関東地 区 よ り,多 くの議 員 定数 を割 り振
られ るこ とにな って い る.こ の よ うな逆転配分 は,
一 票の重 み の格 差 以上 にmalapportionment(不
正 な定数配分)を 明 瞭 に して いる4).
4)実 際,人 口のみ を基準 に,す べ ての県 を同等に扱 って議 員
定数 を配分す るとす るな らば,議 員定数 は人 口に対 して厳密
な比例配分をせざるをえず,こ のようなことは起 こしえない
こ と が,Luce=Raiffa (1957, p.362)に よ り 紹 介 さ れ た
March-Levitanの 業績の応用 で示 すこ とがで きる.
[定理]
議 貝定数 配分にお いて
すべ ての県 を同 じよ うに取 り扱 う.(条 件1)
議 員定数配分数 は,人 口のみに よる.(条 件2)
とい う公理 をお くと,厳 密 な比例 配分 のみが条件 を満 たす こ
とになる.
[証明]
各 県の人口率 をx1,x2…,議 員 配分 率 をy1,y2… としよう.
なお,総 人口 をnと お いて お く.
条件2よ り,yi=fi(xi)と おけ る.
条件1よ り,y=f(xi)
任 意の0≦u,v≦1,u+v≦1を とる と
f(u)+f(v)+f(1-u-v)=1(1)
f(u+v)+f(1-u-v)=1(2)
(1)-(2)よ り
f(u+v)=f(u)+f(v)(3)
(3)にu=v=0を 代 入 す る こ とに よ り
f(o)=0
した が っ て,(2)よ り
f(1)=1
u=v=1/nと お く と(3)よ り
f(2/n)=2f(1/n)
次 にu=2/nと す れ ば,
f(3/n)=3f(1/n)
同様 に して,
f(i/n)=if(1/n)
さ らに,
1=f(1)=f(n/n)=nf(1/n)
よ り,
f(1/n)=1/n
した が っ て,
f(i/n)=i/n
す な わ ち
yi=xi
ところで,東 京 を通過 しない直接的な交通手段
に も欠 け る神 奈川,千 葉,山 梨 の3県 を一 緒 に し
た南関東 とい う比例 区は どうして作 られたの であ
ろうか.中 国 比例 区5県 を合 わせ た人 口よ りも多
くの人 口 を誇 る神奈 川 と,四 国比例 区4県 を合 わ
せ た人 口 よ りも多 くの人 口 を誇 る千葉 を,無 理 し
て合 わせ る必要が あ ったの だろ うか.
そ もそ も,小 選挙 区分の議員 定数配分 にお いて,
神 奈川1県 よ り も人 口の少 な い 中国地 方 を5県 に
割 り,ま ず議 員定数1ず つ を各 県 に配 り,千 葉1
県 よ りも人 口の少 ない四国地 方 を4県 に割 り,各
県に議員定数1ず つ を まず配 っ た わけ だか ら,残
りの議員定数 を各 県に比例配分 した とこ ろで,区
割 段階 の1:2と い う甘 い基準 す ら満 たす こ とが
困難 になったの は当然で ある.こ の各 県 に まず1
議 席ずつ 与え る とい う定数配分 法の ために,県 段
階へ の議 員 定 数 配 分 です ら,一 票 の 格 差 が1:
1.82に もな って い るの である.こ れ では 次の 段階
の区割 が まと もにで きるわけが ない.神 奈川 県 内
の2政 令指 定都 市 をは じめ とす る 多 くの都 市が つ
ぎは ぎだ らけに されたが,そ れ で も選挙 区 割の 最
低 限 の平等 原則 で ある1:2す ら守 れ なか った の
であ る.
この各 県 に まず1議 席 ず つ 配 る と い う姑 息 な
malapprtionmentは,選 挙 制 度 改 革 の ど さ くさ
に紛れ込 んで きた ように もみえ るが,意 外 に根 は
深 い.実 は,『 人 口 比例 に よ る議 員 定 数 の配 分 は
行 わ ない』 とす る “意 思” が,全 党一致 で なされ
た昭和61(1986)年5月21日 の国会 決議 の 中です
でに表 明 されて いたので ある.
「選挙権の平等の確保 は議会制民主政治の基本
であ り,選 挙 区別議 員定数 の適 正 な配分 につ いて
は,憲 法 の精神 に則 り常 に配慮 され な けれ ば な ら
な い.
今 回の衆 議院議員 の定数是正 は,違 憲 と され た
現行 規定 を早急 に改正 す るための暫定措 置で あ り,
昭和60(1985)年 国 勢 調査 の確 定 人 口 の公 表 を ま
って,速 や かに そ の抜 本改 正 の検 討 を行 う もの と
す る.
抜本改正 に際 しては,二 人 区 ・六 人 区の解 消 並
びに議員総 定数お よび選 挙 区画 の見直 しを行 い,
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論文:一 票の平等について
併せ て,過 疎 ・過 密 等地 域の 実状 に 配慮 した 定数
の配分 を期 す る もの とす る.
右 決議 す る.」(昭 和61(1986)年5月21日 「衆議
院議員の定数是正に関する議決」)
“過 疎” 地域 か らの 過大 代 表 に よ って 支 配 され
てい る立法府 にお いては,こ の よ うな議 決 が堂 々
と な さ れ た こ と に 不 思 議 は な か ろ う.「mal-
apportionmentは,立 法 的 な 医薬 に よ って は 直
らな い病気 であ る」 のだか ら.
ア メ リカの歴史 に範 を とれば,期 待 さ れ るの は
司法府 の動 きで あ るが,“ 過 疎 ”地 域 を母 胎 とす
る自民党 の超 長期 政権 下に形成 され た最高裁 をは
じめ とす る司法府 の動 きは,全 く頼 りな い.こ の
点 に つ い て,Hickman=Kim(1992,P.18)は 辛
辣 であ る.
衆議院選挙に対する初の最高裁違憲判決は,一
票 の重 み1:4.99の も とで 行 われ た 昭 和47(1972)
年12月10日 の選 挙 に対 して 出 され た もの であ る.
しか し,こ の最 高裁 の昭和51(1976)年 判 決 は,
議員 定数 の配分 に あた り,人 口数 と配分定数 との
比率 の平等 が最 も重要 で基本的 な基準 とされ るべ
きこ とを前提 としなが らも,区 割段 階 で考慮 され
るべ き非 人 口的要素 を非常に広範 にみ とめ てい る
のみ な らず,社 会変 化 に よる人 口の 移動 とい う議
貝定数 再配分 の原 因それ 自体 を政策 的 な考慮要 素
とす るこ とに よって,判 決の 意義 を無 意味 な もの
に して しまって いる.す なわ ち,(1)都 道 府 県は,
「そ れが 従 来わ が 国 の政 治及 び 行政 の 実際 に お い
て果 た して きた役割や,国 民 生活 お よ び国 民感 情
の上 にお け るその比重 にかんが み,選 挙 区割 の基
礎 をなす もの として無視 す るこ とが で きない」 と
す るこ とは当然に して も,(2)都 道府 県 をさ らに細
分 す る ときは,「 従 来 の選挙 の実 績 や,選 挙 区 と
しての ま とま り具合,市 町 村 その他 の 行政 区 画,
面績 の大小,人 口密度,住 民構成,交 通事情,地
理 的状 況等諸般 の要素 を考 慮 し,配 分 され るべ き
議員数 との関連 を勘 案 しつつ,具 体 的 な決定 が さ
れ るもの」 としてか な りの 自由度 を与 えた上 で,
(3)「社 会 の急激 な変化や,そ の 一 つの あ らわ れ と
しての人 口の都 市集 中化 の現象 な どが生 じた場合,
これ をどの ように評価 し」,「政治 におけ る安定 の
要 請 を も考 慮 しなが ら,こ れ を選挙 区割 や 議員 定
数 配分 に どの よ うに反映 させ るか も,国 会 におけ
る高度 に政 策的 な考 慮要素 の一つ であ る」 とまで
述べ て しまってい るの であ る.
(1)府 県単位 ・人 口比例 の原則 さえ きちん と守 ら
れれば,(2)行 政 区画等々 の条件 を考慮 して もそれ
ほ ど歪 んだ区割 はで きないのだが,(3)人 口移動 の
問題 を国会 に預 けて い るこ とが,昭 和53(1978)
年9月11日 の 東京 高 裁の 判決 を まね いて し まっ た.
判決 は冗長 なので,問 題 とな る過 密 ・過 疎論 の
部 分 につ いて,和 田(1979)の 要約 を借 りよ う.
「社会 の急激 な発 展 に伴 う人 口の都 市集 中化 は,
経済的 ・文 化 的 な どの諸 利益 が都 市 部 に存 す るか
らこそ生 じた ものであ る と同時に,そ の 反面,過
疎 地域が諸 利益 に恵 まれ ない とい う結果 の反映 と
もい え る.し た が っ て,過 疎 地 域 に お け る経 済
的 ・文化 的等の魅 力 を増大 させ,こ う した現 象 を
で きるだけ避け るために は,ひ と きわ大 き な政治
的影響力の可能性 をもつことが当該過疎地域の住
民に とって必要 であ る.す なわ ち,選 挙 に おけ る
投 票の価値 が大 き くな って初 めて その政 治力 に大
き く影響 す る可能性 を有す る もの であ る.
これ に反 し,人 口の 集 中 した都 市 はそ れ 自体 が
政 治的 に大 きな影響 力 を行使 しうる可能性 を有 し
てお り,そ れ以上 に大 きな政 治力 を行使 す る可能
性 を与 え るこ とは,望 ま しい もの で はな い.都 市
地 域住民 の諸利益 は,過 疎地 域 住民 の諸 利益 につ
いてのいわば不当な犠牲のもとにおいて成立って
い る ものであ り,こ の こ とは,投 票権 の 形式 的 ・
数 字的 な意 味にお け る完全 な平 等化 は,い わば 政
治の不平 等 を もた らすお それがあ る.
この よ うに考 えてみ る と,投 票権 につ いて形式
的には,都 市 部 は 「不 平等」 に取 り扱 われ,過 疎
地 域 は不平 等 な 「利益 」 を得 て い るか の よ うであ
るが,実 質 的に は,過 疎地域 は不利益 に取 り扱 わ
れ,都 市部 は相 当 な利益 を得 て い る とい って も過
言では ない.
したが って,議 員定 数 の配 分 を人 口数 の み に比
率 して決 す るこ とは,一 面的 で あ り,賛 成 で きな
い.」
この過密 ・過 疎 論 によ るmalapportionment是
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公共選択 の研究 第26号1995年
認論 は,自 分 自身 の地 位 を守 る ため に使 用 して い
る立法 府や司法府 のみ な らず,学 界や マ ス コ ミ界
な どに も散見 され る.芦 部 ・京極(1964)対 談での
京極発 言や,福 石(1985)な ど の 引用 は,最 近 の
文献 で も見 るこ とが ある.実 際,今 回行 われ た,
まず各 県に1議 席 ず つ配 る とい うmalapportion-
mentの 手 法 は,京 極 氏 が 上記 高 裁 判決 の よ うな
過密 ・過 疎 論 を展 開 した あ と,そ れ に呼 応す る形
で芦部 氏が紹介 してお り,過 密 ・過疎 論は 日本 の
学界 ・マ スコ ミ界にす ら,深 く根付 いて しまって
いる論理 といわざるをえない.
過疎 地域 と過密 地域 を対抗 関係 に とらえ,そ れ
ぞれの国会議員 を国民全体の代表 としてではな く,
地域の利益代表,さ らには中央か らの便益 の運搬
人 として理解す るこの見方 は,伝 統的な政治学 よ
りむ しろ公共選択 論的 な政 治認識 に近 い といえ よ
う.し か し,公 共選 択論 的視 点,あ るい は経 済 学
的視 点か らみ た場合,こ の タ イプ の過 密 ・過 疎論
に依 拠 す るmalapportionmentは,人 々 の厚 生 を
高め るもの として認め られ るの であろ うか?そ
れ は著 し く困難 で ある といわ ざる をえな い.
そ もそ も,一 票の不平 等は人 口の都 市部へ の移
動 に よって引 き起 こされた.人 々 は よ り高 い所 得
を求 め て都 市部 に移 ったので あ り5),よ り高 い所
得 は農 業 と商工業 との労働 生産性格差 に よって生
じた もの であ る.人 々 の移動 は,そ の格 差縮 小,
す なわ ち劾率性 の増大 に欠かす こ とので きない こ
となので ある.む し ろ,産 業 構 造 の変化 に と もな
った議員定数再 配分 を して こなか った こ とが,農
村部 の過剰 な政 治力6)を温 存 し,農 業保 護 を は じ
め とす る利益誘 導7)によって過剰 な人 口を農 村部
に縛 り続け てい るの ではなか ろ うか.日 本 の農業
は,農 民1人 あた りの農地 面積が少 ないか ら保護
が 必要 で ある とい われ るが,こ れ は農 地1単 位 あ
た りの農 民人 口が 多す ぎるこ とに過 ぎない.す な
わ ち,日 本 の農 村部 は過 疎 なのでは な く,過 密 な
のであ る.ま た逆 に,日 本の都 市部 は過密 なの だ
ろ うか.日 本 の都 市部 は,国 際的 な人 口密 度の比
較 デー タの点か らは,過 密 とは い えな い とい うこ
とが よ くいわれ る.わ れわ れ に過 密感 を もた ら し
てい るの は,ラ ッ シュ ア ワー時 の鉄 道 に象 徴 され
る都 市部社会 資本の不 足で ある.ま さ し く自分 の
地 盤に鉄道 を引 く 「我 田引鉄」 を商売 とす る政治
家 の不足が もた ら した社会 資本 の不足 なので ある.
以下,和 田(1988)の モデ ル を利 用 して,上 記
の議 論 を数学 的に整理 した い.
政 治経 済 モデル によ る考 察
い ちば ん簡 単 なケー ス として,一 国が2つ の地
域 に別 れて い る小 国経 済の ケー ス8)を考 えよ う.
こ こで は,土 地(T)が あ り,そ れ と労働(LF)を
も って 食糧(F)を 生 産 す る農 業 地 域 と,資 本
(K)が あ り,そ れ と労 働(LM)を も っ て 工 業 品
(M)を 生 産 す る工 業 地域 を考 え る.(労 働 は,両
地 域 間 を 自 由 に 移 動 で き る.LF+LM=L(一
定).)資 本,土 地 は全労働 者が その居住す る地域
にかか わ らず,そ れ ぞれ1単 位 ずつ もつ と仮 定 さ
れ る9).
各地域 の生 産関数 は
F=F(LF,T)
M=M(LM,K)
とおかれ10),通 常 の産 業の生産 関数 同様,一 次 同
次11)が仮定 され る.
5)必 ず し も経済 的な もの の みな らず,高 裁 判決 の いう社 会 ・文
化 的な理 由で も人々 は動 いて いったか もしれ ない.大 き く問
題 とな った嫁 不足 とい う現象 は,農 村部 にお いていか に女 性
が社会 ・文化 的に恵 まれない立場にあるかの証左 なのだ ろう.
6)和 田(1979)に 詳 しい.
7)藤 本 他(1983),広 瀬(1981),石 ・小 泉(1981),石 他
(1981,1983),小 椋(1984),和 田(1985)な ど政 治に 歪 め ら
れた財政構造に関する実証分析は枚挙にいとまない.
8)国 際 経済 学 にお い て しば しば 使用 さ れ るモ デル で,国 際 貿
易 によ り財 の価 格が その生産量 にかか わ らず一 定 とされ るよ
うなケー スを指す.こ こで は,モ デ ル を簡 単化 す るた め にお
かれる.
9)人 口(労 働)移 動に よる政治過程 への影響 に注 目 したいの
で,土 地,資 本 は全員 が同 じ量 を もつ と仮 定す るこ とによ っ
て,土 地,資 本か らの政 治過程 への影響 を切 り離 す.
10)導 関 数 につ いて は,以 下 の よう な標準 的 な ものが 仮定 され
る.
FL>0,FT>0,FLL<0,FTT<0,FLT>0,limFL→ ∞
ML>0,MT>0,MLL<0,MTT<0,MLT>0,limML→∞
11)一 次 同次 な生 産 関数 とは,労 働 投 入量(LF)と 土地(T)を
ともに2倍 にす れば,生 産量(F)も2倍 に な る よう な生 産関
62
論 文:一 票の平等 につ いて
F,Mが そ れ ぞれ 生産 額 で はか られ て い る と し
よう12)競 争的 な産 業構 造 の も とで は,人 々は そ
の労働 か ら得 る所得
〓(農業地域)
〓(工業 地域)
と,土 地,資 本か らの所得
〓を得 る こ とに な る13).
し たが っ て,農 業 地 域 での 総 所 得 は
〓
工業地域での総所得は
〓
とな る.
各 地域 の政 治家 は,そ れ ぞれ の選 挙 区へ の予 算
獲得 に全 力 を尽 くす.し たが っ て,そ れぞれの地
域 が獲得 で きる予算(gF,gM)は そ の地 区 の政 治 家
の数(RF,RM)の 非 減 少 関 数 と な ろ う.(gF+gM
=G(一 定) ,0≦gF≦Gを 仮定 してお く.)
gF-gCRF)
gM-gCRM)
(+)
個 々 の住 民が受 け る公共サ ー ビス(b)は,政 治
家 の獲得 して くる予算(9)の 増 加 関数 と なる だ ろ
うが,住 民 の数(L)が 増 え れば 一 人 あ た りの 公
共 サー ビスの量(b)が 増 加す る こ とはあ りえ な い.
bF=b(gF,LF)=b(gF(RF),LF)
bM=b(gM,LM)=b(gM(RM),LM)
(++)(-)(+)(-)
数 のこ とであ る.
12)小 国 経済 の仮 定 の もと,財 の 価格 は所 与 と され るの で,こ
のよ うな仮定は問題 を生 じない.
13)競 争 的 な産業 に おい ては,た とえば労働1単 位 を余計 に 雇
った ときの限界生産物価値(∂M/∂LM)が 賃金(wM)よ り大 きけ
れば(∂M/∂LM>wM),も っ と労働 を雇 った方が利潤 が大 き く
な る し,限 界生産 物 価値 が 賃金 よ り小 さけれ ば(∂M/∂LM<
wM),雇 用 を減 ら し たが るは ず なの で,均 衝 に お いて は 限界
生産物価値と賃金が等 しくなる.
小 国経 済の仮定 の もとでは,財 の価 格 は 国際 的
に所 与 とされ るの で,人 々の 効 用(uF,uM)は そ
れ ぞれ の得 る総 所 得(w+γ+i)と 受 け る公 共 サ
ー ビスの量(b)の 関 数 とな る.人 々の効用 関数 の
形状が 等 しい とすれば,
uF-u(WF+γ+i,bF)
uM =u(wM+γ+i ,bM)
人々 は,自 分 の効 用が 大 き くな る よう に地域 を
選 択 す るの で,均 衡 に お い て は効 用(u)が 等 し
くなってい るはずで ある14).
uF=uM
す なわち
u(wF+γ+i,bF)=u(wM+γ+i,bM)
人々が 自由 に動 いた あ との効 用水準 は等 しくな っ
て いるはず なの で,使 え る予 算総 額 が一 定 であ る
も とでは,人 々 の所得 を最 大 にす る こ とが,人 々
の効用最大化 の唯一 の手段 とな る.ま た,土 地 と
資本 はそれ ぞれ の地 域か ら動 かす こ とが で きない
ので,国 民所得 を動かす唯一 の手段は人々の移動
であ る.
もし,農 業 にお け る限界 生産 物 価 値(∂F/∂LF)
が,工 業 にお け る限 界生 産 物価 値(∂M/∂LM)よ り
大 きけ れば,工 業 か ら農業 に 人 を移す こ とに よ っ
て,工 業 生産 で減 る価 値以 上 の価 値 を農 業生 産 で
生む こ とが できる ように なる.ま た逆 に,工 業 に
おける限界生産物価値が,農 業における限界生産
物 価値 よ り大 きければ,農 業 か ら工業 に 人 を移す
こ とに よって,農 業 で減 る価 値 以上 の価 値 を工 業
で生む こ とが で きるよ うにな る.す なわ ち,国 民
所得が最大になるのは,両 地域での労働の限界生
産 物価値 が等 しくな る ときであ る.
上記 の よ うに,均 衡 状態 では,両 地域 の 効用 水
準(u)は 等 し く な るの で,両 地 域 の 労働 の 限 界
生産力,す な わち賃 金(w)is)が 等 し くな るた め に
は,両 地域 で の公 共 サー ビ スの 量(b)が 等 し くな
る必要 があ る.し たが っ て,人 々 の効 用最 大 化 の
条件 は
14)注10に お いて 通常 の生 産 関数 を仮 定 して いる ので,均 衝 は
必ず内点となる.
15)注13で 説 明 した ように,競 争 的 な産 業構 造の も とで は それ
ぞれの地域の労働の限界生産物価値と賃金は等しくなる.
63
公共選択 の研 究 第26号1995年
bF=bM
あ るい は,
ろ(gF(RF),LF)=b(gM(RM),LM)
が満 た される こ ととな る.す でに述 べ た よ うに,
政 治家 の獲得 して くる予算(g)は 政 治 家の 数(R)
が増 えれ ば減 るはずが ない し(gはRの 非 減 少関
数),各 人 が 得 る公 共 サ ー ビ ス の量(b)も,人 口
(L)が 同 じな らば 獲得 予 算(9)が 増 えれば 増 え る
はず であ る(bはgの 増加 関数).こ れ に 対 し て,
人 口(L)が 増 え れば,同 じ予 算額(g)の も とで は
各 人が得 る公 共サー ビスの量(b)が 増 え る こ とは
あ る まい(bはLの 非増 加 関数).し た が っ て,
『“人 口(L)が 減 っ た か ら政 治 家 の 数(R)を 増
やせ ” とい う過 密 ・過疎論 の ロジ ックは,こ こで
示 した よ うな非常 に普遍 的 な政治経 済 モデルの も
とです らあ りえ ない』 ので ある.そ の よ うな行 為
は人々の厚生水準を引き下げることなるわけであ
る.
モデル を少 し特定化 して,帰 結 を よ りはっ き り
した もの に しよう.地 方財 政学 の 方で は,各 個人
が受 け る公共 サー ビス(b)を
bF=gF・LF-a(0≦a≦1(<∞))
bM= gM・LM-a(0≦a≦1(<∞))
とい っ た具 体 的 な 関 数 で 表 現 す る こ とが しば しば
あ る.aは 公 共 サ ー ビ ス の 性 質 を 表 す パ ラ メ ー タ
ー で あ る.a=0の ケ ー ス は 純 粋 公 共 財 の ケ ー ス
で あ り,a=1が 純 粋 私 的 財,あ る い は 補 助 金 の
ケ ー ス とな る.政 治 家 が各 地 域 に も って く る獲 得
予 算 が,純 粋 公 共 財 的 に使 わ れ るい うの は考 え に
く い16)の で,こ こ で は,a=1の 補 助 金 の ケ ー ス
に して み よ う17).公 共 サ ー ビ ス(b)は 以 下 の よ う
な 関数 で表 さ れ る こ とに な る.
〓
さて,こ こ では選 挙 区の 数 が2つ でモデル を組
んだ こ ともあ り,政 治家 の獲得 予算(g)を 政 治 家
の数(R)の 非 減 少 関数 とい う非 常 に 一 般 的 な形
で表 現 した が,地 域 の 数 が 多 け れ ば,獲 得 予 算
(9)は 政 治家 の数(R)に 比 例 す る と考 え て も無理
は ない.単 位 に配慮 すれば
gF=RF
gM=RM
とおけ よ う.以 上 の追加的 な仮 定の もとで は,公
共 サー ビスの量(b)が
〓
とい う形 にな るので,両 公共 サ ー ビ スの値(b)を
等 し くす るため に は,政 治 家 の 数(R)を 完全 に
人 口(L)に 比 例 させ るこ とが要 請 され る.す な
わ ち,『 人々 の厚生 の最大 化 の ため には完 全 な る
一票の平等が不可欠』 ということになる.
以上 の仮 定の もとでは,均 衡 にお い て
〓
が成立す るこ ととな る.一 票 の平 等が保 たれ てい
るな らば,両 辺 の最 終項 は 同 じ値(Sと しよ う)
な の で,両 地 域 の賃 金(w)は 等 し くな り,労 働
の限界生産物価 値 の均衡 を もた らす こ とに なるの
で,国 民 の厚 生 の最大 化 を もた らす.そ の よ うな
均衡 状態 は
u(wF+γ+i,s)=u(wM+γ+i,s)
あ るいは生産 関数 を明示す る形 で,
〓と表現 さ れ る.
この とき,高 度成長期 の 日本 の よ うな資本 の蓄
積(資 本 が β 倍 に な っ た とす る)が 進 ん だ と し
16)純 粋 公共 財 とい うの は,現 在 政府 が供 給 して い る財サ ー ビ
スの うちご く一部 であ る.財 政 学の教科 書 などで挙 げ られ る
例 は,国 防,司 法 制度 とい った ものに過 ぎない.ま た,こ れ
らは安全保障委貝会,法 務委員会が政治家に不人気であるこ
とに象徴 され る よ うに,選 挙 区に も ち帰 れ な い財 と も い え
る.
17)実 際,政 治 家が や って い るこ とは ほ とん ど補 助 金配 りに 還
元 で きよ う.規 制,税 控 除,関 税 などが全 てロスの 多い補 助
金分配と同じことになることは,経 済学の初歩的な教科書の
教 える ところであ る.
64
論 文:一 票の平等 につ いて
よう.当 然農業地域から工業地域への労働力の移
動(m)が 起 こ る わけ だ が,議 員 定数 配 分 の是 正
が行 われ ない と以下 の よ うな均衡 式が式 り立つ こ
とに なる.
〓
一 票の不平 等か ら生 じる公共サー ビスか らの よ り
多い受益 に よ り,見 かけ上の所得,す な わ ち労働
の限界生産物価 値 は農 業地域 の方が低 くな るが,
両地 域 の効用 レベ ルは等 しい ところで均衡 に達す
る.
一 票 の不平 等の是正 をす る と,移 動す る労働 人
口は よ り多 くなる.労 働 力の移動 をnと す る と,
以 下の よ うな均 衡式 が成 り立つ こ とにな る.
〓
一 般形 の とき と同 じこ とだが,『 一票 の不 平 等が
是正 され,経 済 に歪 み を与 え ずに 済 んで い る後者
のケースが,労 働の限界生産物価値 を均等にする
ことにな り,人 々 の効 用水準 の最 大化 を果 た して
い る』 こ とは い うまで もない.
結 語
戦後長 ら く続 いた,選 挙 区 とい う種 々雑 多 な非
人 口的要素 が入 りがちな問題 を抱 え込 んだ まま行
う定数 “再 ”配 分 と違 い,各 県へ の定数 配分か ら
始 め るこ との で きた今 回 の選 挙 改 革 は,府 県 単
位 ・人 口比例 の原則 を明 らか にす る絶好 のチ ャン
ス であった.府 県 単位 ・人 口比例 の 原則 に よ る各
県へ の議 員定数 配分 さえ,き ちん と国 勢調 査 ご と
に使 われ るルー ル となれ ば,そ の先 の 区割 段 階で
の一票 の不平等 には 自ず と限界が あ るはず なので
あ る.そ れ だけ に,今 回,一 面的 な過 密 ・過 疎論
に支 え られ た,各 県 ご とに1議 席 ず つ配 っ て残 り
を最大剰余方式で比例配分するという,姑 息な
malapportionmentル ー ル の ため に,人 口比 例 の
原則が 蔑 ろにされた こ とは まこ とに残 念 であ る.
Balinski-Young(1982.p.10)が 「政 治家 とい う
もの は,立 法府 の 議席 に かか わ る問題 が 生 じ ると,
す ば ら しい数学 的才能 を発揮 す る よ うで あ る.」
と述べ てい るが,新 制 度 の定 数配 分 法は,非 ユー
ク リッ ド幾何学 の世 界 に放 り込 まれたかの よ うで
あ る.
一票の不平等は,そ れ に よっ て権 力 を得 てい る
立法府や,そ の長 期 的 な支 配下 で形 成 され た 司法
府 に,完 全 に是正 す るこ とを期 待す るの は難 しい
よ うであ る.政 治家 の利 己 的 な行動 を仮 定す る公
共選択論 的視点 に立つ な らば,そ もそ も,期 待 し
て はいけ ないのか も しれない.し か し,一 一票 の平
等の実現 は,よ り多 くの政 治 家 を得 る こ とにな る
都 市部住 民の みな らず,よ り少 ない政 治 家 を もつ
こ とにな る農村部住 民 に とって も利益 となる こと
なの であ る.見 かけ の所 得 の不 平等 に よ って 引 き
起 こ され た,malapportionment是 認論(過 密 ・
過疎論)は,経 済学的視 点か ら,成 立 しえ ない こ
とが 明 らか にされた.一 票 の不 平等 の 維持 は,所
得格差是 正 ではな く,所 得格 差 固定 の ため の手段
となっているのである.一 票の不平等は人々の移
動 によ って起 きた現象 であ る.通 常 の,機 会均 等
の ため の所 得再分 配 とは違 う世界 での話 なのであ
る.人 々は,自 分 の効用 の最 大化 のため に,そ し
て経済効率 性 の達 成の ために移動す るこ とが で き
るの であ る.一 票の 不平 等 の是 正 に よって 損 をす
るの は,一 部 の政 治家 とそ の取 り巻 きだ け で,残
りすべ ての 国民 の厚生 は高 まるの であ る.
今 回の選挙改革 で,一 票 の不 平等 は 少 しは是 正
され た といえるか も しれない.し か し,明 治 以 来
慣習 として定着 して いたかにみ えた府 県単位 ・人
口比例 の原則が,立 法 府 に よっ て完全 に 捨 て去 ら
65
公共選択の研究 第26号1995年
れ た の だ とす る と,恐 ろ しい 話 で あ る.一 票 の 平
等 は,本 来 こ の よ うな論 文 を書 く まで も な い,疑
問 の余 地 の な い規 範 な は ず で あ る.今 回の 姑 息 な
malapportionmentに よ っ て,国 民 の 中 に あ る一
票 の平 等 を求 め る声 が 消 し去 られ な い こ とを祈 り
た い.
参考 文 献
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(わ だ じゅんい ち ろ う)
論文:一 票 の平等 について
One Man One Vote, One Vote One Value
from the view point of economics
Junichiro Wada
With the recent election reform, the
Japanese Diet did not correct the unequal
apportionment enough. The Lower House
slipped in a rule that is advantageous for less
populated prefectures. They provided one seat
for each prefecture at first and after that the
rest of the seats are assigned by the rule of the
method of largest remainders. Because of this
rule, if we add the single-member district parts
to proportional representation parts, the
Minami-Kanto proportional representation
area (Chiba, Kanagawa and Yamanashi) has
fewer representatives than the Tokai area
(Gifu, Shizuoka, Aichi and Mie), although the
population is higher. This essay, indicates that
such an unequal apportionment makes even the
welfare of the people who have more represen-
tatives worse than that under an ideal appor-
tionment.
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