1) 体重約660kgの成雌牛2頭を用い,2×2ラテン方格法により尿素または大豆蛋白質を主要窒素源とする飼料を給与し,蛋白質代替物としての尿素の有効性につき検討した.すなわち,いずれかを単一窒素源とする精製飼料7割と稲わら3割の重量比で一日O.06BW0.75kgずつ朝夕2回に分けて給与した.前食からの飼料の切替えはすべて3か月かけて徐々に行い,切換後4週目に第一胃内液および頸静脈血を採取した.2) 体重は全期間を通してほぼ一定に維持されたが,長期の適応期間を設けたにもかかわらず,尿素飼料の嗜好性は大豆蛋白質飼料に比べて劣った,3) 第一胃内液のNH3濃度は飼料給与直前は大豆蛋白質飼料の方が高く,給与後4時間までは尿素飼料の方が高かった.大豆蛋白質飼料の方が酸化還元電位は有意に低く,プロトゾア数は若干多い傾向があったが,この差は有意ではなかった.pH,
... [Show full abstract] VFA濃度およびVFAモル比には差がなかった.4) 第一胃内液の蛋白態窒素含量は大豆蛋白質飼料の方が有意に高かった.しかし同区分のアミノ酸組成は飼料間にほとんど差が見られなかった.5) 血漿の遊離リジン濃度は大豆蛋白質飼料給与時の方が有意に高かった.血漿遊離アミノ酸総量および可欠アミノ酸に対する必須アミノ酸の濃度比は尿素飼料給与時に低い傾向があった.同様に,尿素飼料の場合は,有意ではなかったがバリン,ロイシン,イソロイシンおよびフェニルアラニンが少なく,グリシン,セリンが多い傾向があった.側鎖アミノ酸合計に対するグリシンの濃度比は大豆蛋白質飼料給与時に有意に低かった.6) 第一胃内に澱粉•グルコース混合物を投与して投与前後の血漿中必須アミノ酸濃を比較した結果,投与後の減少は両飼料ともリジンが最大であった.7) 本実験の結果は,尿素飼料給与時の方が全般的に蛋白質栄養は劣る傾向にあったことを示していると考えられ,さらに,牛において飼料蛋白質の大部分を尿素で代替するような場合には,体蛋白質合成に際してリジンが最も制限的役割を果たしやすいことを示唆するものと考えられた.